市長反論は大きく4点 まずは場外で 市長は条例に拘束されない、民意に基づくなど

 今日1月20日、病院についての住民訴訟の口頭弁論が大津地裁で開かれました。傍聴した市民からの話と報道や傍聴者に配られた原告側準備書面全文をもとにして概要を紹介します。なお、市長側の資料は、市民にはもちろん、議会にも公表されていません。ただし、議会も公表を要求せず、相変わらずの密室。

 原告である市民の訴えの内容は、栢木市長が駅前Aブロック病院の実施設計等を就任直後に違法に解約し、市に損害を与えたとして、市長に4,256万円の損害賠償を求めるもの。

 市長の代理人弁護士からあらかじめ準備書面として出されていた反論の趣旨は大きくは4点。原告の主張を私が理解した限りで、分かりやすくなるように言葉を補って整理します。

①原告らの訴えは、監査結果通知があった日から法定の30日を過ぎてからなされており、却下されるべき。

 なお、法的根拠は、地方自治法第242条の2第2項1号「監査委員の監査の結果又は勧告に不服がある場合当該監査の結果又は当該勧告の内容の通知があつた日から30日以内」

②市長は、設計契約の解除に当たっては市の病院事業設置条例に拘束されない。その理由は、少し専門的になりますが、この条例が地方自治法第244条の2第1項、あるいは、地方公営企業法第8条に基づくものであるから。

③市長が解約した設計は、修正設計であり、病床数が179床となっていて、病院設置条例が定める199床と異なる内容である。したがって、契約の解除は病院設置条例に違反しない。

④契約の解除等の判断は市長の裁量(権限)の範囲内のものであり、問題ない。その根拠として3つを上げている。㋐民意に基礎付けられていること㋑民主的手続きを経ていること㋒損害の拡大を防止するものであること。

条例は市長の行為を拘束する 選挙公約だけでは民意の根拠にならない 公約は達成されていない

 以上の市長側の反論に対する原告側の反論の趣旨は次のとおりでした。

①監査請求を行った市民3人のうち1人に対しては、昨年7月2日に通知されているが、今回の原告2人には通知がなかった。原告2人が請求してから通知をされており、提訴はそれから30日以内であり、有効。

 なお、市は先に通知した1人を代表者としているが、原告の2人はその1人を代表と認識していないし、その選任手続きも行っていない。

②地方自治法に関しては説明がややこしくなるので省きますが、要するに主張の論旨が通っていないというもの。被告があげている広島地方裁判所の平成14年11月26日の判決の場合は、条例を制定せずに設置された施設に関するものであり根拠にならない。

 地方公営企業法に関しては、市条例は、それに基づくものではあるが、それに加えて、憲法94条及び地方自治法第14条第1項に定める、地方公共団体が有する条例制定権に基づき市の病院事業の内容を議決により定めたものである。したがって、地方公営企業法に抵触するものではなく、逆に規範性を持っており、市長の行為を拘束する。

③病院設置条例は、まずは、市が、市民に対して同条例で定めた病院を設置する義務を負うことを宣言したものであることに意味がある条例。条例の中核となる点は、病院の設置場所、診療科目、病床数であるが、病床数は修正設計の段階で変更されているものの、設置場所、診療科目は同じであり、社会通念上同一の病院であると考えられる。

 また、病床数の変更を含む、病院建物の縮小に伴う設計計画は、令和2年1月20日の市議会の臨時会での補正予算案において議会での審議を経て議決されて承認されており、条例は被告を規制する法規範として有効。

④民意、民主的手続、損害の拡大を防止を根拠とする市長の裁量の範囲内の主張については、その根拠が薄弱なので、紹介は簡単にします。

 市長は民意の根拠を選挙公約としているが、病院は市長が掲げた多数の公約の1つ。病院の公約は、早く断念せざるを得ない状況となった。議会制民主主義では民意は議会を通じて反映されることが原則。ところが、市長の行った契約解除は令和2年12月18日の「野洲市民病院実施設計業務の継続・完了を求める決議」議会決議に反しており、逆に、民意に基礎づけられていないことが明らか。

 民主的手続についは、市長は、令和3年2月16日の全員協議会報告を行っただけ。条例とは異なる病院を建設するのなら、条例の改廃を議会で議決してはじめて民主的な手続きを経たものであると言える。

 損害の拡大を防止については、論拠に値しない。

病院とまちをどうしていくかは、市民と議会の取組にかかっている

 今日は実質的に原告と被告のはじめてのやり取り。端的に言えば、争点は自治と議会制民主主義、そして条例の重要性。市長の主張は、訴訟テクニックに偏って、基本的に自治と議会制民主主義の重要さの認識を欠いています。

 次回は、ずいぶん先の4月28日(木)13時15分から。司法の場での決着も大事ですが、それまでに、病院がどうなるのか、まちがどうなるのか?いや、どうしていくのかは、市民と議会の取組にかかっています。

 議長の週間日程で見ると、明日は午前9時から全員協議会。月例の会議ではあるが、その他の項目で、何らかの情報が出てくるのかも注目。