政策や制度での判断・実行でなく、誰か、人の意向に従って判断し実行する状態

 昨日12月21日の市議会予算常任委員会での審議と採決の状況から思い浮かんだことがあります。それは、法治から人治に逆戻りしたということ。言い換えれば、政策や制度で判断し実行するのでなく、誰か、人の意向に従って判断し実行する状態になってきているということです。

 人治とは法治に対比される統治の制度。一般的には、法治国家、人治国家というように使われる。人治とは指導者個人の意志で国家や社会を治めること。「朕は国家なり」と言ったルイ14世フランス絶対主義王制はわかりやすい例。日本においても過去の天皇による親政はこの例であるし、現代では大半の国が法治制度に基づいていますが、なかには、国の名称とは裏腹に実態はこれに近い統治形態を採る国もある。日本は、言うまでもなく日本国憲法に基づく、名実とも法治国家。そして野洲市はそのなかの自治体。

政策がその実現性でなく、誰の政策かという判断基準により結果が出た

 それでは、なぜ昨日の状況から法治から人治に逆戻りなどということが思い浮かんだのか?その理由は、ひと言で言えば、採決の結果が政策論議によるものでなかったから。政策がその実現性によってではなく、誰の出した政策かという、人が判断基準になって結果が出されたと思われたからです。

 もう少しかみ砕いて考えてみます。駅前Aブロック等の商業開発事業費1,500万円予算案。市長の説明では、この事業費は先のサウンディングに基づいて駅前市有地での商業開発を行う事業者との協定締結までを進めるためのもの。ところが、昨日、橋議員、田中議員、益川議員、山崎議員などが指摘したように多くの問題がある。本会議でも東郷議員や岩井議員が同様の指摘や質問を行ったが市長等からは明確な回答は出されなかった。

「民の力」の勢がないサウンディング結果 提案は居酒屋、ドラッグストア 病院の残る選択肢はAブロック

 これら議員が指摘した問題点を改めて整理すると次のとおりです。

①1,500万円の事業費の積算明細が明らかされていない。

②駅前Aブロックは病院事業設置の条例で新病院の場所として定められている。

③駅前Aブロックは駅南口周辺整備構想で新病院の場所として定められている。

④サウンディングにあたっては、複合商業施設の方針や構想が明らかにされていない。エステやビジネスホテルなど個別の業態示されているだけ。

⑤サウンディングの結果は「3万人という乗降客数では大規模な商業施設単体は難しい」、「公共施設整備を一体に考えていく方が、市の歳出は増加するが、ポテンシャルを上げる」などといった意見で「民の力」の勢いはまったくない。。そして、提案された業種も居酒屋、ドラッグストア、ビジネスホテルどまり。これでは民間主体の開発による税収増の見通しは立たない。逆に公共施設整備を迫られ、市の負担が増える。

⑥Bブロックで病院を整備するとして計画が進められようとしているが、駐車場不足が明らかであるうえ、病院本体が建つかどうかも明らかでなく、病院の実現性が確実でない。Bブロックで病院が無理となり、本気で病院をつくるつもりであれば、残る選択肢は、現実的にはAブロックしかない。

市長案への賛否の論拠の落差大きい 市長の案だから可決? 

 他方、昨日の1,500万円予算案の審議と採決にあたって、市長提案に賛成の意見を述べたのは、実のところ服部議員だけ。あとは、稲垣議員がBブロックを含めた売却のことを確認しただけで、その他の議員は発言もなく市長提案に賛成した。ただし、服部議員の意見もあとで見るように、論拠が弱く論旨が通っていない。反面、市長提案に反対し、1,500万円を削除する修正案に賛成した議員の論拠は明快で論旨が通っている。市長案への賛否の論拠の落差はそれほど大きい。ところが、採決の結果は、修正案は否決で市長案が通った。これは、政策の良し悪しの結果でなく、市長の案だからと可決されたとみるしかないように思われます。まさに、人治。

まだ「身の丈に合った病院」の姿が明らかにならない 賛否の論拠が拮抗し法治の復活を期待

 服部議員の意見の概要をまず紹介します。

①Aブロックでは10年近くたって実際に動いていない。

②(Aブロック病院は)財政的に成り立つのか?市長の言う、身の丈に合った病院を考えるべき。

③条例は一般論として建てる時に決める。起債のための条例なので、とらわれるのがふさわしいのか?

④何百億円出す前に1,500万円で納得できるように。

 

 いちいち細かく絡むつもりはありませんが、議員の発言に対する疑問点等を簡単に上げてみます。

①「10年近く」市長の常とう句。病院事業が実質的に動き出したのは、4年前の12月議会で実施設計が可決されてから。その実施設計を最終段階で市長が止めたためこの1年余りの間動きが止まったまま。

②1年余り経っても、「身の丈に合った病院」の姿が明らかにならない。

③「建てる時に決める条例」は市長が論拠としているもので、地方自治法第244条の2に定める公共施設の設置及び管理に関する条例のこと。正確には、建てる時でなく、建って市民の利用に供する前の段階での制定。問題になっている条例は、起債のためでなく、市として病院事業を開始し、運営するために定められたもの。この条例がなければ今の市立野洲病院もあり得ない。いずれにしても、現に条例は定められており、それを可決した議会自らが、その条例に違反する議案である予算案を可決する根拠はどこにもない。
④「何百億円出す」は意味不明ですが、多分、市長の口癖「総事業費約120億円の贅沢な病院」に輪をかけた誇大表現。それよりも、議員は1,500万円の事業費に「納得」しているのか?また、1,500万円の事業の先にある事業に何十億円の税負担が伴うのか確認しているのか?

 

 明日市議会の閉会日、賛否の論拠の説得性が拮抗して、人治でなく法治が復活した審議と採決になることが期待されます。