1,500万円予算案の修正案が提案される?

 新病院の命運、それは、大げさに聞こえるかもしれませんが、23日、市議会閉会日の駅前商業開発の1,500万円を含む補正予算案の採決にかかっています。ただし、その前に、明日21日の予算常任委員会での採決があります。

 この補正予算案に関しては、12月10日の市民と市議会議員との話し合いの場で、橋俊明議員が1,500万円に関しては、予算案の修正案を提案する予定であると語っていました。1,500万円を除いた予算案を議員が提案し、審議・採決しようという趣旨。その予定どおりに事が運ぶなら、明日の予算常任委員会で提案され、審議のうえ採決されることになる。

 市民の関心事は、まずは、本当に修正案が提案されるかどうか?そして、次は、それがどう審議され、採決の結果がどうなるかということ。9月の議会でもよく似たことが起こりました。駅前商業開発のサウンディングのための495万円を含む補正予算案に対して議員から修正案が提案され、その時は可決された。

 ただし、今回の補正予算案は9月のものに比べ重要さと深刻度は格段に高い。9月の予算は商業開発を進める意思を持っての調査段階までのもの。今回のは、事業者を選定したうえで、協定を結ぶためのもの。基本的には、もし動き出したら引き返せない。負のスパイラル(連鎖的な動き)がはじまります

どの議員が賛成? 1,500万円の予算案採決結果で実質的に病院の場所が決まる

 補正予算案については、以上の関心とともに、もし修正案が出された場合、その賛否。どの議員が賛成し、反対するかということ。

 10日の市民と市議会議員との懇談会や17日の特別委員会でもほとんどの議員が病院について態度を保留していました。2月の議会に条例の改正案が提案される時に判断するという悠長さ。

 改めて、状況を整理すると次のとおりです。市の構想や条例では新病院はAブロックに定まっています。片や市長は、「今のところ」というこれまた保留をつけて、Bブロックに病院と駐車場を整備するための基本計画を策定中。

 ところが、1,500万円を含む補正予算案に議員が賛成すれば、その議員は、その時点でAブロックでの商業開発の着手を認めたことになる。ということは、2月の議会を待つまでもなく、病院の場所をBブロックに、あるいはAブロック以外の他の場所にという判断をしたことになる。しかし、現状では、A、B以外の場所があるわけはないので、実質的にBブロックに賛成したことになります。

Bブロック賛成困難でも反対の根拠を持ち合わせず、やむなく賛成に追い込まれる

 ところが、問題はここで終わりません。なぜなら、Bブロック病院が建つことはまだ確定していないからです。土地の形状や駐車場不足を含め面積など重大な問題があります。さらには、17日の特別委員会では診療科や病床数が確定していないため、運営試算も出されていない。また、市長自身が病院は、「今のところBブロック」と発言して言質(げんち)を与えず、あいまい。なお。この発言には、Bブロック病院を推進している病院長までが驚いていた。一種のはしご外しです。

 今このような状態であるなかでは、2月の議会、いやそれ以前年明け1月14日の特別委員会と1月22日、27日の市民説明会で、議員や市民がもろ手を挙げてBブロック病院に賛成することは困難であることは明らか。しかし、野洲市民の身の丈に合った病院はこれしかないと市長から押し付けられれば、議員も市民も反対する根拠を持ち合わせていないため、やむなく賛成せざるを得ない。ということで、市民も議員も賛成したということで押し切られ、とりあえず、2月の議会で条例が改正される。

Bブロック含めた民間事業者の提案に乗る誘導が働く 病院棚ざらしで駅前開発は次世代にツケ

 ところが、問題はここで終わりません。2月の議会、とはいっても採決は3月下旬になりますが、そこで決まるのは条例だけ。他方、病院の具体化に関しては、その時点では、まだ基本計画ができたか、できていないかの入口の状態。その先には、基本設計と実施設計という実質的な作業が控えている。その業務の着手は、今示されているスケジュールでは、再来年以降になりそう。

 設計業務の実務に入り出せば、土地の制約や駐車場問題など病院の具体化にあたっての問題が、改めて見えてくることになります。しかし、それを待つまでもなく、もし今回の1,500万円を含む補正予算案が可決された場合は別の流れが出てくる。

 それは、先の特別委員会で稲垣議員が、確実に出てくると言っていた、Bブロックを含めた駅前の開発提案。市長も制限を設けないで自由に事業者に提案してもらうと言って、そのことを否定していない。このことが、病院は「今のところBブロック」という市長発言につながります。また、奥山議員は駅前の一等地は民間に売却して有効に活用してもらったら良いと、卑屈な意見まで吐いていました。例えてみれば、篤農家(とくのうか)に対して優良農地の売却を勧めるようなもの。

 このような状況に立ち至ると、問題山積でもろ手を挙げては賛成されない病院をつくって将来の財政負担を心配するよりは、Bブロックを含めた民間事業者の開発提案に乗った方が得策だという誘導が働いてきます。

 今回の補正予算案の採決結果から読めるのはこの辺りまでで、その先は、どのような「スイッチ(動き)」が働くか分からないので予測できません。ただし、現時点でかなりの精度で言えることは、病院は実質的に棚ざらしにされて一層厳しい状況に陥ること。それと、仮に、駅前開発が強引に進められることになった場合、有力な提案がなかったサウンディング結果が示しているように、官民連携の官の負担が増大し、開発事業が身の丈に合わないものになる。その結果、病院は建たず、皮肉なことに、次世代にツケを残すのは、当初の病院計画でなく駅前複合商業施設の方になりそうだということ。

 このように補正予算案の採決結果によっては、負のスパイラルが起動します。そうならないように、市議会の閉会に向けて、晴天下のように先を見通した議論と拘束のない判断が期待されます。