市長公約の不実は多様で複層的であることが明らかに

 知人たちとの話から市民病院についての栢木市長の公約の嘘に話題が及んだことを書きました。嘘という言葉は語感が悪いので、以降は不実と言い換えますが、その不実は、ここにきて多様で複層的であることが明らかになってきた。

 なかでも、病院を建替える本心がないのに、病院は必要であり、早期に整備すると言っていることは重大な不実。

 繰り返しになりますが、その不実のなかから主なものをまとめると次のとおり。

①公約で現病院を運営しながら現地で半額で建替えると掲げながら、市長就任直後に、公約でなく私案だと公言したこと。

②公約で病院は必要と公言していたが、現地建替えが私案であって不確実なものと認識していたなら、私案が不可の場合の次案を用意すべきであったが、その用意がなかった。その結果、病院は必要との公約は不実。

③現在駅前(Bブロック)での病院整備事業を進めている。これによって、駅前に病院は整備しないとの公約は不実。

④現在駅前(Bブロック)で進めている病院はAブロック病院より工事費では15億円前後しか安くならない。しかも病院の規模は駐車場含め縮小されている。したがって、市民がイメージした半額の公約は不実。なお、「総額約120億円から大幅に見直すことを公約にして当選しました。」との就任後の公言も不実。

⑤このほか、病院現地半額建替え公約の断念理由を「技術的に不可能ではないが」、「コロナ禍により市立野洲病院がワクチン接種会場になることなど、当初想定していなかった医療情勢等」と言い訳していること。また、病院ではありませんが、駅前でのAブロック病院を止めての商業開発による税収増公約など。

なぜ市長は不実を重ねて市長選に立候補し、就任後も不実を重ね続けているのか?

 くどくなりましたが、改めて市長の不実を整理した理由は、次の疑問に移るための準備。その疑問とは、なぜ、市長はこれほどまでの不実を重ねて市長選に立候補したのか?そして、就任後も不実を重ね続けているのかということです。

 余談になりますが、10日の市民と議員との懇談会で女性参加者が言っていました。市長は身の丈に合った病院というが、意味が分からない。市長の身の丈は大きいが、心は小さいと。これがあたっているかどうかは別にして、普通ならこの状況は心的に相当厳しいはず。ところが、市長にはこたえていないように見える。それは市長にとっては幸いですが、市民や議員にはストレスがたまる。いや、問題はそれにとどまらない。

稲垣議員の鬼気迫る質問にヒント 

 心的ストレスのことは重要ですが、今はそのことは置いて、不実の理由に戻ります。

 もちろん、その理由は、外部からは分からないし、憶測も困難。ただし、先日の市議会本会議の質問での議員と市長のやり取りでわずかなヒントが。それは、市長の盟友である稲垣議員の鬼気迫る質問です。その要旨は、Bブロックに病院を建てることには反対。A、Cブロックだけでなく、Bブロックも含めて全部売却してはどうかという質問。

 市長はすでに、A、Cブロックの売却は否定していないので、稲垣議員からすれば、あと一歩踏み出さないかという背中押し。これに対して、市長は明言を避けた。しかし、その代わりにどころか、提案中の1,500万円の補正予算案で実施する商業開発事業者との基本協定のための事業提案では、A、B、C以外の駅前市有地も含めた提案を拒まないと答えて、風呂敷を一層広げた。稲垣議員はさらに突っ込んで、1,500万円の補正予算案がBブロックも対象にしているなら、賛成する。そうでないなら、反対すると明言した。もちろん、市長は明言を避けた。

不実とストレスに耐えた成果は出つつある あと一歩 補正予算案採決で溝を越す?

 議場の議員や傍聴の市民は、このやり取りをどのような思い聴いていたのか?通常、市議会の議場で行われるやり取りではない、異様で恐ろしいものです。後で聞いたところでは、キツネとタヌキの化かし合いと表現した人もいたし、あらかじめ示し合ったうえでの同じ穴のムジナのやり取りと表現した人もいました。

 いずれにしても、市長選で稲垣議員の提案を公約にするなんてことはあり得なかった。しかし、1年余りたって、市長は盟友議員とこのようなやり取りを議場で交わすことができ、議事録にも残せる。まさにあと一歩。その意味では、市長が不実とそのストレスに耐えた成果は出つつある。しかし、そこにはまだ溝が控えています。議員は気楽で無責任に質問ができるが、市長はそうはいかない。

 この溝を市長はどう飛び越えるか?これまでのように議会での応答を見てくると、その手立てのひとつが、1,500万円の補正予算案の採決ではないかということになる。

補正予算案は病院条例改正案の前哨戦以上の起爆力 審議と議員の賛否に注目

 昨日も書いたように、この予算が議会でどのように審議され、採決されるかに市民は注目し、心配している。その理由は、駅前商業だけでなく、病院の存亡にも大きくかかわるからです。もし、市長の盟友である稲垣議員が賛成して可決されるなら、Bブロックの売却までもが暗黙のうちに認められたことになる。そのために、どの議員が行動を共にするかです。

 ところで、10日の市民と議員との懇談会で、2月議会で提案予定の病院事業設置条例の改正案への賛否を市民から質問されて明確に答えた議員は2名。小菅議員と益川議員がAブロックを定めた現条例を尊重すると答えた。残る6人の議員は、答えを保留した。しかし、時間はそこまで待ってくれない。1,500万円補正予算案は、その前哨戦どころか、もっと起爆力が大きい。Bブロックに病院どころかその売却にまで滑っていく可能性まで秘めています。

 あらためて、議会の慎重というより、透明で健全な審議を期待します。