市長肝いり事業の1,500万円が説明できない もし可決なら、不可解さは市議会にまで及ぶ
今日12月7日は市議会の本会議で議案質疑と一般質問がありました。議案質疑では田中陽介議員と東郷克己議員が補正予算案について質問。また、一般質問では木下伸一議員が病院について質問。
田中議員と東郷議員の質問はいずれも、駅前Aブロック等の市有地での商業開発のための1,500万円の予算について。1,500万円は、今年度だけでなく来年度にわたって使うため、債務負担行為の設定として盛り込まれています。
両議員は、的確というより、市民から見て当然疑問に思うことを質問。しかし、結論から言えば、市長の肝いりの事業であるはずなのにその説明と答えには内容がない。市長は、贅沢を廃する、財政が厳しいとか言いながら、なぜこのような予算が出てくるのか不可解。ましてや、これが議会最終日に可決されるとしたなら、その不可解さは市長に対してだけにとどまらず、市議会にまで及びます。
市長お得意の「ご飯論法」は不祥事への言い逃れに起源 実のところ駅前商業開発も同類?
目についた主なやり取りを簡単に紹介します。
まず、田中議員。
駅前開発は病院を含め未確定である。確実性の担保が必要であるのに、このような予算は問題であるのではないかという趣旨の質問。
これに対する市長の答。国の行う新型コロナワクチン開発、また市町が国等に道路整備要望を行うにあたっての事前調査費を例にあげて、確実性が担保されないからといって、未来につながる事業が全くできないとはけしからんと一蹴。
市長の答えが答えになっていないことは、一目瞭然。市長お得意の「ご飯論法」。議員は駅前Aブロック等市有地での商業開発という具体的な課題に関して市長へ質問した。国のワクチン開発や道路整備要望の事前調査はまったく関係ない。あえて言えば、それらワクチン開発や道路整備においても一定の市民・国民理解があっての上のこと。今回の件はそこのところも欠けているから質問がされている。
もともと、「ご飯論法」は不祥事に関する質問への言い逃れにはじまっている。だから、その場はしのげても前向きな生産性はない。市長の答えを聞いていて実のところ、市長の駅前商業開発はその類のものではないかとまで思えてきました。
市長の答弁からは「土地の売却」も視野に入れた基本協定締結の予算案
そのほか、田中議員の質問に対する答えで気になったこと。ひとつは、本会議での質疑に答えないで、17日の都市基盤整備特別委員会で説明する予定といって、答弁を逃れていること。これでは本末転倒で本会議の意味がない。
もうひとつは、1,500万円で何をやるのか、何をやりたいのか分からない。その使い道についての議員の質問に対する赤坂部長の答え。それは、事業者との基本協定締結が区切りというものでした。
この答えからは、予算は調査段階にとどまるものではない。そして、駅前事業の具体的な中身どころか、全体構想も明らかでない。そのうえ、Bブロック病院の見通しも危ないなかで、いきなり駅前Aブロック等について外部の事業者との協定を結ぶための予算を議決しようという乱暴な意図が明らかになった。このことによって、当然、病院設置条例は実質的に上書きされ、改正されることになり、病院が宙に浮いてしまう。いや、それどころか、市長は一連の答弁のなかで「土地の売却」にも言及したので、それを視野に入れた予算案であることになります。
いつまでも抽象的な答えに終始 市民が急いでいると言いながら中身が不明
次に、東郷議員の質問。
先の田中議員と同じ趣旨の具体的な事業内容についての質問に対しては、市総合計画や駅南口周辺の構想をあげるだけで、いつまでも抽象的な答えに終始。なお、駅南口周辺の構想に関しては、赤坂部長が後の答弁で「構想は変えていない。商業交流施設をAに持ってきただけ。」と答えた。これだけの重大な変更を「だけ」と認識し、強弁できる市政の雰囲気は異常。
東郷議員はこの答えに対して二元代表制をあげ、これまでから市長に丁寧な手続きと説明を求めてきたこと。市を2分する案件の転換には、プロセスの透明化と説明必要だとして、市長に回答を求めた。
これに対する市長の答えは、にぎわいと税収増を唱えてきた。その実現を少しでも早くと望んでいる市民の声に応えるためというもの。ここでも質問に対して答えがかみ合っていない。市民が急いでいるので手続きや説明・合意形成(プロセス)より、着手が大事という答え。
しかし、質問と答えがかみ合っていないどころでなく、市長の答え自体に矛盾がある。市民が実現を急いでいると言いながらその急いでいる中身が明らかでない。これでは、誰かに「急いであれを持ってきて。」と頼んだが、「あれ」が何なのかわからないのと同じで、急ぎようがない。そのうえ、市民が本当に急いでいるかどうかの確証も示されていない。
市長の答えでは、何かわからないので、調査し、具体が出てくるのは相当先
市長の一連の回答で意味不明あるいは誤魔化しに近いものがありました。答弁の文脈がつながっていなかったが、部長答弁も加味するとおおよそ次のようなこと。
市長選の公約で駅前での複合商業施設を訴えた。大型商業施設を駅前ということは、近隣市町の駅前の商業を見て、持続可能なものを調査したい。今回の予算は、民間のサウンディングや調査を重ねて、事務的なことを進めていくための前段階のもの。
また、にぎわいの考え方を問われての市長の答え。市民が施設を活用するとともに、いろんな人が外から来る所。ショッピングだけではない。何かわからないので、だから一定調査し、しっかりしたうえで、具体が出てくるのは相当先になる。具体化が相当先では、市民が急いでいるからという先の答えと矛盾。
公約では複合商業施設とまではなかったことはさておいて、答弁がぐらぐらしています。要するに、何の方針も見通しもなく、これから調査していくとだけのもの。
予算のねらいはAブロック封印し、塩漬けにするための根拠づくりが濃厚
あと、東郷議員はサウンディングについても質問しました。前回のサウンディング結果では一般論でおざなりな回答しか出ていない。この結果のどこを評価して今回の予算提案になるのかというもっともな質問。
これに対する赤坂部長の答えは、サウンディングは調査を重ねて事務的なことを進めていくための前段階、入口。今回の調査結果では、「否定的な答えはなかった。」と言い切った。さらに、部長は、今後もあらゆる機会にサウンディングをかける。ホテル業界に滋賀県の駅前でのホテルの可能性を聞くといったイメージで行うとまで回答。確かにこれでは、市長の言うとおり「具体が出てくるのは相当先」。
今日の議会のやり取りからは、やはり、今回の1,500万円は事業の実現性よりは、Aブロックを封印し、当分の間塩漬けにするための根拠づくりがねらいであることが濃厚になってきます。
「身の丈に合った」の説明で終わり 財政の厳しさの見極めや病院実現性も不問
木下議員の病院についての質問。
質問が、栢木市長の病院現地半額建替え公約違反の指摘からはじまったので、聞き耳を立てました。また、身の丈に合ったという言葉の使用にも苦言が出されたので、一層興味を掻き立てられました。
ところが、質問内容は、市長が財政的な課題を解決して病院を整備することを、身の丈に合うと表現してる意図は何かという1問だけ。
これに対する市長の答え。財政が厳しいこと、また人口5万人及び市の財政規模から総事業費120億円の病院は身の丈に合っていない。5万人の市民をひとつの家族ととしてとらえた場合、その身の丈に合っていないという意味で言っているというもの。
これに対して、木下議員は病院問題はあまりにも時間がかかり、多くの市民が心を痛めている。市民が納得できる取組みを願うと言って、質問を終わりました。
これでは今後どのような病院をどう実現していくのかは不明。また、財政の厳しさの実態の見極めの質問もされていない。さらに、病院は市民のためのものであるとともに、市外からの利用もある。したがって、現市立病院の利用対象人口は10万人を超えるはず。だから国の交付金や交付税の制度がある。このため、病院は立地や医療の質の面から事業の成立可能性の面からの評価が必要であるが、その問題意識も出されていない。
基準のはっきりしない、市長の身の丈論に乗ってしまうと、最後は病院が消えてしまう。病院がない方が市は財政的には身軽になる。もちろんその結果、市民の安心と便利さもなくなる。安心と魅力のないまちになります。現に市立病院が健全に運営できている現実、そして課題はその建て替えであるという事実を直視した議論が必要です。
財政構造見極めないで厳しいだけでは病院含め縮小再生産
病院の質問で財政問題が触れられたので、最後に、奥山文市郎議員の質問に触れておきます。
市行財政改革の取り組みに関して、これまで計画的な基金積み立てが行われてこなかった理由を質問。
市長の答弁は、サービスの直営化など前任者のやり方に原因があるものとの安易な説明であったようです。きちっと検証したうえでの説明か疑問。
これについては基金を含め市の財政構造については以前に何度か書いたので詳しくは繰り返しませんが、実態は、2004年の2町合併、その後のリーマンショック、極端に遅れていた学校や幼保施設の耐震化を子どもの安全のため優先したもので、批判は当たっていない。
他方、栢木市長が自ら止めた都市計画税のことや精度の低い財政見通しで政策判断することの問題などもあわせて考慮しないと最終判断を誤る恐れがあります。
以上に紹介した議員以外の質問も部分的にネットで傍聴しましたが、今日のところの全体的な印象では、議会の雰囲気が穏やかになった。その分、病院の実現は厳しさが増したように感じました。