22兆円超の国債発行の補正予算案 年度総額では65兆円超まで膨らむ

 どのような良薬にも副作用があるように政策の場合も利点と欠点があります。政府が昨日26日の臨時閣議で決めた2021年度補正予算案でも同様。
 過去最大の35兆9895億円で、そのうち経済対策が31兆5627億円を占める。そのなかには、新型コロナウイルス感染拡大防止の一環として、18歳以下への10万円給付や事業者に最大250万円の支援、ガソリン価格上昇抑制対策などが含まれています。これらによって、岸田文雄首相がねらっているGDP(国内総生産)5.6%程度の押し上げ効果はじめ、生活、子育て、事業支援などの利点が見込まれる。ただし、それぞれの事業がねらいどおりの効果を発揮するのかという問題とともに、財源となる歳入の不足分が22兆580億円の国債を発行して賄われ、財政状況を一段と厳しくするという副作用があります。
 なお、この国債発行額22兆円超は、景気回復を想定した6兆4320億円の税収増による21年度歳入増を前提にしており、かなり無理がある。この税収増を前提にしなければ、もっと多額の国債発行が必要になる。今年度、21年度の当初予算ですでに43兆5970億円の新規国債が発行されており、全体では65兆円超まで膨らむこととなります。

今回の借金の増額は何らかの副作用を伴うが説明されていない

 ところで、上に書いたことは、政府の財政状況の客観的な情報。この政府のいわゆる借金体質については、両論あります。財政破綻論を心配する意見と政府の財政は家計とは全く違うので問題ない。その理由は政府は日本銀行を使っていくらでも貨幣をつくり出すことができるので問題ないという意見。

 この議論に深入りしませんが、もし、後の方の意見が正しいなら、先日書いた国債の利払いの問題も生じないし、極論すれば、増税どころか、そもそも課税の必要もなくなる。政府は日銀にお金をどんどんつくらせてそれを使って、道路などを整備し、また国民に福祉や教育を提供してくれればよいことになる。夢のような話。

 しかし、政府は後の夢のような話の方でなく、先の財政破綻論の考え方に立っているので、今回の借金の増額は何らかの副作用が伴ってきます。見込みどおり経済が回復して税収が増えれば良い。しかし、そうでない場合は、サービスや既存の給付制度の切り下げなどを伴う恐れがある。ただし、今のところは、補正予算案の利点だけがあげられていて、欠点や副作用は説明されていない。本来は、両方が同時に説明されて、国会議員はもとより、国民が判断できるようにされなければならない。

医師・看護師など医療従事者の所得を上げて国民負担軽減を目指す医療改革?

 なお、補正予算案とは直接関係はありませんが、岸田首相は今月25日の経済財政諮問会議で医療改革について述べています。来年から団塊の世代が75歳以上となるなど高齢化に伴う医療費の伸びを抑制する診療報酬の改定などにより国民負担の軽減を目指す考えを示したと報道されている。

 国民の負担が減っても、少なくともこれまでと同じ医療が受けられ、他方、診療所や病院の経営に悪影響がなく、それどころか医師・看護師などの医療従事者の所得が上がる。改革によってこのような夢のようなことが実現できるのか?ここでも、この段階では、医療改革による利点だけが述べられていて、欠点や副作用が示されていません。

 余談ですが、上で書いた政府の財政に関して、日銀がお金をつくれば財政問題は解決するという夢の理論で行けば、国民負担の軽減など何でもないことになります。政府の負担を増やせばよいだけのこと。しかし、現実には国民負担はこれまで上がり続けています。

 なお、話がややこしくなりますが、首相が言っているのは、医療費の「伸び」を抑制することであって、医療費を伸ばさないとは言っていない。したがって、医療費は伸びる前提の議論。それなのに、本当に国民の負担を軽減できるのか?

不都合な事実に目をづぶっていては政策は実現しない 目を開く作業が30日からの市議会

 前置きが長くなりました。本論は野洲市の補正予算と病院問題。ここでも、利点だけが示されていて、欠点や副作用が示されていません。

 ただし、ブログでは市の病院や駅前事業の進め方についての心配を書き連ねてきたので、それらが欠点や副作用にあたるので、詳しくは繰り返しません。

 簡単にまとめれば、Bブロック病院は秋の評価委員会の案では実現性は困難。また、事業費も安くならないか、場合によっては高くなる。さらに、事業工程や手続きにも甘さがある。

 もうひとつの駅前商業開発の1,500万円の補正予算案については、何に使うのかが不明であるとともに、先のサウンディング結果からは、商業もそれによる税収確保も見通せない。

 先日の病院評価委員会の資料では、市はデザインビルドの説明で利点だけ示して欠点や問題点を示さなかった。これは一例であって、病院や駅前事業で市は同じ進め方をしています。欠点や問題点に気づいていないのか、それとも意図的にそうしているのかはわかりません。

 政府の施策の場合は少なくともお金が国民に回りますが、野洲市の場合はその見込みもない。市民には実現性のない事業の付けだけが回される。

 しかし、いずれにしても、欠点や問題点など不都合な事実に目をづぶっていては、政策は実現しません。その目を開く作業が30日からの市議会に期待されています。