リヴィング・レエジェンドのプレスラー30歳代の録音

 今日は、午後から、久しぶりに中古のLPレコード探しに出かけました。

最近は新しい演奏・録音ではCDとLPレコードの両方で出されたり、古い録音がLPで復刻して発売されていますが、種類には限界がある。また、新しい録音の場合は、多分デジタル録音したものをアナログとしてLPにプレス。古いLPの復刻の場合でも、専門でないので不確かですが、マスターテープがあっても、デジタルでリマスタリングしたうえで、アナログとしてLPにプレスしている場合もある。ということで、アナログ録音がLPにプレスされたものを聞くとなると、手持ちのものか、中古のLPレコードということになります。

 久しぶりなので、商品がずいぶん入れ替わっていて、ホロヴィッツ、ポリーニ、リヒテル、クライバー、ブーレーズ、クルト・マズアなどあって、心が弾みました。そのなかでもメナヘム・プレスラーのベートーヴェンの「ピアノ協奏曲第1番」がありました。「ロンド変ロ長調」とカップリングされていて、モーシェ・アツモンの指揮でウィーン歌劇場管弦楽団の演奏。ボザール・トリオでの演奏のLPは持っていますが、協奏曲のLPは初めて。

 レーベルは「コンサートホール・ソサエティ(Concert Hall Society)」で戦後アメリカで設立された、レコードの通信販売会社。録音時期はジャケットに記載されていませんが、藁科雅美氏のジャケット解説では、「40歳前のイスラエル系アメリカのピアニスト」、「世界でも指おりのボザール三重奏団(1969年春来日予定)の創立者としても大変高名です。」と書いてあるので、当然1969年より前。2020年3月5日に別のレーベルからCDで復刻で出されていて、その説明では、録音は1967年頃となっています。しかし、プレスラーは1923年の生まれなので、解説の40歳前という記述からすると、1967年よりもう少し前になるのではないか。ジャケットの裏にある彼の若いころの写真を添付しておきます。

高齢で現役という話題性でなく、熟成され、それでいて新鮮な演奏の楽しさ

 ところで、肝心の演奏は、清々しく、端正で、かつ音楽性豊かで楽しいもの。90歳を超えて現役のピアニストである、プレスラーを知っている私たちからすれば、つい、若々しい演奏と言ってしまいそうですが、1923年ドイツ・マクデブルクの生まれ。1939年にナチスから逃れてイスラエルに移住し、その後アメリカへ。ジャケット解説では17歳のときにアメリカ、サンフランシスコ国際音楽コンクールでクロード・ドビュッシー賞を受賞。その後、演奏活動を開始。1955年にボザール・トリオ(三重奏団)を創設、またジャケットの解説では、10年程前からインディアナポリス大学のピアノ教授と紹介されているので、演奏時には十二分のキャリア。

 プレスラーは、このように長いキャリアを持っていますが、主には、1955年より53年間活動し、2008年9月6日のルツェルン音楽祭でのコンサートを最後に解散したボザール・トリオのピアニストとしてです。ソロピアニストとしては、72歳の1996年にカーネギー・ホールでリサイタル・デビュー。90歳でベルリン・フィルにソリストとしてデビュー。そして94歳の2017年に有名なレーベルであるドイツ・グラモフォンから、彼の原点であるドビュッシーなどのフランス音楽作品集のソロ・デビュー・アルバムを出して話題になりました。今朝、これを偶然、自宅で聴いたばかりでした。そして、2017年東京のサントリーホールでソロ・リサイタルを開いている。曲目は、ドビュッシー、モーツアルト、ショパンなどで、テレビ放映され、聴衆を感動させました。それは、もちろん、高齢で現役という話題性でなく、築きあげられ、熟成され、それでいて新鮮な演奏の楽しさのゆえです。