「病床数これから詰める」という市長答弁 先が遠いというより、病院事業が後退

 今日8月31日からはじまった市議会定例会の本会議をネット中継で傍聴しました。病院と駅前に絡む議案に関しては野並享子議員と田中陽介議員が質問。野並議員が令和2年度病院事業会計の決算と令和3年度一般会計補正予算について、また田中議員は今年度一般会計補正予算について質問。

 両議員の頑張りにもかかわらず、答弁は市長のいつもの巧妙な逃げとすり替えの対応に終始。そのため、順を追って辿るほどの情報はなかったので、かいつまんでいえば、次のとおり。

 病院事業会計決算に関しては、実施設計の契約解除について質疑がされた。しかし、住民訴訟の対象となっている契約解除の問題や支払い財源のことには触れられなかったので、市民が知りたかった情報は明らかにならなかった。ただし、決算とは関係ないBブロック病院についての質問の答弁では、市長はこれまでどおり「今後使い勝手の良い病院をつくる」と中身のない答えを繰り返すだけ。おまけに、「病床数これから病院と詰める」という答弁まで出てきた。これでは、先が遠いというより、病院事業が後退、いやさ迷っている状況が明らかに。これでは、Bブロック病院の見込みも危ない。

駅南口周辺構想は見直しは未了の模様 それで予算要求? これでは何も動かない!

 一般会計補正予算については両議員とも、駅前複合商業施設に絡む495万円の予算案について。こちらについては、質問と答弁いずれからも、何のための予算なのかがさっぱりわからない。気になっていた、「野洲駅南口周辺整備構想」の見直しが完了した前提での予算提案かどうかに関しても、2議員とも問わなかったため、当然、答弁はなかった。ただし、後で紹介する、鈴木市朗議員が一般質問として病院事業設置条例の認識について質問した回答に絡んで、「構想を見直す予定」と市長か政策監のどちらかが答弁。ということは、市の公式の構想ではAブロックは病院にしたままで、複合商業施設に絡む事業を委託するための予算を提案していることになる。

 この点に関しては、市長はいつもの巧みな論法で議員に応酬していた。6月30日の議会決議で求められたことに答えたのだと。決議で求められた「A ブロック活用構想及び、AB 全体の実現可能な駐車場整備計画三点をセットで提示すること。」を果たすための予算だという理屈だと思います。さすがの逆襲。残念ながら、議員からの反応はなかった。この場だけの勝負で見れば、市長の一本です。

 しかし、全体を通して分かったことは、市長と職員いずれも総じて何の思いも使命感もないし、何も決まっていない。まったくの空っぽ。要するに、「民間」頼み。それも、具体的な業務が明確になっていないため、とりあえず、業者(パートナー)を決めてから、市長と職員になり替わって業者に提案してもらい、さらには決めてもらおうという姿勢。Bブロック病院の委託発注と同じやり方です。これでは何も動かない。そして、極端に言えば、このやり方では施主が存在せず、市長と職員のいずれもが要らないととになる。今後、このような状況のまま委員会で審議し、採決できるのか?

 

市長お得意の逆襲だが詭弁 「官民連携事業」は実質税収ゼロもマイナスもある

 一般質問では、鈴木市朗議員、岩井智惠子議員、北村五十鈴議員が病院と駅前について質問。鈴木議員は、的確な質問を粘り強く畳みかけていましたが、議員本人が冒頭で述べたとおり、真っ当な答えは市長から返ってこなかった。病院に関しての市長の答えは、120億円の病院を止めるという選挙公約からはじまり、過去の済んだことばかり。将来のことといえば、身の丈に合った病院ということ。これも録音の再生のように、何度も耳にしたこと。まったく、内容のない答弁。

 また、駅前Aブロックに関しても、税収をあげると言いながら、試算や想定額は一切示せない。ここでも、お得意の逆襲があった。民間が立地する限り、税収ゼロはないし、マイナスはないという詭弁。市長の「思い」は「官民連携事業」となっているようなので、官の持ち分として、市有地と税をつぎ込まなければならない。したがって、税収ゼロもマイナスのリスクも十分想定される。

財政負担と財政リスクに加え、事業が最終見通しなく、その場しのぎで進められているリスク

 せっかくの鈴木議員の質問でしたが、答弁側に意欲と誠意がなかったため、実のある情報はなかった。むしろ、虚しさと心配が増しただけ。それでもいくつか、引っかかる点はありました。

 ひとつは、先に述べた、駅南口周辺構想の見直しが完了していないという重要な情報を引き出したこと。これでは、市長の当面の基礎が築けないことになる。もちろん、制度も論理もお構いなしの暴挙のおそれは残りますが。

 もうひとつは、駅前の実施設計を独断で契約解除し、止めたことの財政負担と市財政へのリスクの一端が明らかになったこと。設計の解除では、国交付金で、全体予定額10億5千万円の内、これまで交付を受けてきた1億5千371万3千円の大半を返還しなければならない。

 具体的には、令和2年度病院事業会計決算では、この交付金が2,250万円収入になっているが、最終的には返還が必要。その意味で、今回は、実質的に暫定の決算になる。また、元の設計に受けた交付金7,920万円も遡って返還。さらには、土地取得で受けた5,201万3千円も。これに加えて、約8億円の病院事業債の一括返還も。なお、議員は触れていませんでしたが、約8億円の1/4で想定されていた交付税も貰えないことになる。

 これらの財政負担と市財政リスクもさることながら、駅前も病院も事業の最終見通しを明らかにしないで、その場しのぎで進められていること。また、いずれも、市の主体性を欠き、民間任せで進められようとしているリスクも明らかになった。

市長がBブロック病院7年度開院明言 10月市議選で議員構成逆転が必須 勝者なきゲームの結末は?

 岩井議員と北村議員の質問では、全体的に担当部長の答弁が気になりました。北村議員の場合は、本来市長に質問すべきことを部長に質問していたためなのか、公約やポリシーなど市長しか答えられないことまで、部長が忖度して多弁に代弁している様は、痛ましくて見ていられなかった。

 他方、岩井議員の場合は、部長のいわゆる居直り答弁。なかでも、Bブロック病院の業者選定における事業者の実績情報に具体性がなく、不十分であるとの質問。これに対して、担当部長はすべて企画提案書で審査したという一言の強気のに答え。しかし、市の評価基準では事業者や技術者の実績が評価項目となっているが、選定された1社の公表されている実績には、公共事業の場合でも自治体名や事業名が一切記載されていない、異例で不透明なもの。また、最低基準点なるものについても、あらかじめ内密に決めていたと、不透明な回答。そのことを審査員は知っていたのかどうか?また、複数社が参加して競争が働いた場合でも、最低基準点を使うつもりだったのかなど、多くの疑問が残りましたが、議員はそれ以上質問しなかった。

 もうひとつは、Bブロック病院のスケジュールについての質問。市長は、来年度から設計にかかり、令和7年度開院を明言した。議員はなぜか、それ以上質問しなかった。しかし、構想と計画の策定が年度末。それには発注方式も含まれることになっている。その内容も見ないで、来年2月からはじまる第一回議会定例会で、設計予算案、もしDB方式なら建設予算案も含む当初予算案を審議して採決することになる。そんなことが、できるのか?それができるようになるためには、10月の市議選で議員構成が大逆転し、市長の意向が何であろうと、いつでもいつでも思いどおり通る体制になることが必須。

 ただし、そのような状況になったとしても、Bブロック病院と駅前商業による税収増が実現する保障はない。それは、別物です。今日1日、傍聴しての感想は、勝者なきゲームの結末への心配の深まりと徒労感。事態は、すでに危険水位に達している。