契約の途中解除で「委託料を軽減」と「市の損害拡大防止」の成果があった?

 今日8月24日からはじまった市議会定例会。冒頭の市長の議案説明をネットで傍聴。これから書くことは、行政や議会の仕組みになじみのない方には少し煩瑣かも知れませんが、重要なので触れておきます。

 まず、前年度の決算認定議案。病院事業会計決算に注目しましたが、当然といえば当然ですが、ありきたりの説明でした。しかし、栢木市長にとっては、就任早々取り組んだ駅前Aブロック病院の設計等業務の途中契約解除。その目的は、無駄な経費を省く。しかし、本来なら、幾らの経費削減になったのかを含め、成果として強調すべきもの。住民訴訟の対象になっていることからしても、ここで説明責任を果たし、訴訟に有利にしておくことが必要。

 市長は今年5月7日に出された住民監査請求に対する陳述で次のように述べています。「契約解除によって、本来発生する予定であった業務委託料を軽減させたのであり、市の損害拡大を防止しているのです。」なぜ、この点を強調しなかったのか?

ここでも「判断は市長選挙の公約遂行のため」であり、「民意に基づいている」という独断

 なお、ついでに、陳述での市長の説明を、長くなりますが、引用しておきます。 

 「野洲市病院事業の設置等に関する条例等との関係においても主張されていますが、契約解除について、議会の議決が不要であることは、前述の通りであり、契約解除に何らの法令違反はありません。また、契約解除等の判断は市長選挙の公約遂行のために行われたものであり、民意に基づいているものに他なりません。」

 改めて読んで、市長の暴論に驚きます。「判断は市長選挙の公約遂行のため」であり、それは「民意に基づいている」という独断。常識でもわかることですが、本人が思うことと、それを社会において、法令や制度を踏まえて実施することは別物です。病院の位置まで定められた市条例に違反して、条例をもとに進んでいた事業を「民意に基づいている」という勝手な思い込みで止めた。止めるためには、まず条例改正が必要。この点が、先に起こされた住民訴訟の争点です。

3月19日の支払いキャッシュの調達と決算処理を議会審議で明らかに

 決算認定の審議の焦点は、契約解除に伴う支払いがどのようになされたかということ。以前簡単に触れましたが、契約解除された設計業務の方は、令和元年度からの繰り越し事業。その財源は国からの交付金と起債がほとんどで、ごくわずかが市の一般会計からの繰入金で構成されている。

 これに関して、住民監査請求に対する陳述で、市長は「3月19日に支払いました。」と説明。市長就任直後の11月2日に業務中止にしながら、ここまで時間をかけた。その理由は、出来高確定作業に要する時間よりも、4,256 万円の支払いのための現金(キャッシュ)調達のためであったと推測される。しかし、ここまで延ばしてもこの時点で、病院事業会計にそれだけのキャッシュがあったのか?

 なお、別に公表されている情報では、前日の3月18日に市の一般会計から病院事業会計に6千万円が振り込み手続きがされ、数日後に入金されている。ここに添付した、令和2年度一般会計当初予算資料の最下段の「投資及び出資金」として計上されている約6千万円の内からの支出とみられるが、なんらかの、やり繰りなり、無理なりが生じていないか?そして、これらが、最終的に決算ではどのように適正に処理されているのか、議会審議で明らかにされることが期待されます。

病院事業決算は難題 会計処理問題にとどまらず、12月決議と住民訴訟も検討要件

 話が細かく専門的になりました。通常であれば、引っかかりなく、すんなり済む決算認定。しかし、病院事業会計に関しては、市長が独断で行った設計業務等の途中解除の件があるため、議会にとっては難題。

 このことは、単に会計処理の問題にとどまらない。昨日も触れた、昨年12月の議会決議を無視した決算になっている。たしかに、議会決議には法的拘束力はありません。しかし、ここに来て、事態が変わってきた。住民訴訟が出てきている。その訴えの趣旨は、設計業務等の途中解除とそれに伴う支払いは、平成28年12月に議会で可決され、その後施行された、駅前病院の設置場所、診療科目、規模を定めた「野洲市病院事業の設置等に関する条例」に違反するというもの。市議会としては、決算認定にあたって、司法とは別に独自の判断が迫られることになります。