見かけの人件費削減のための外部化は就労の健全化損ないSDGsに反する

 昨日は市の行財政改革を市長の記者会見を引用して話題にしました。職員数と人件費削減だけに着目し、市役所業務や文化・スポーツ施設の運営などを民間委託にすること。そうすれば、見かけは職員が減り、その分の人件費はゼロになる。しかし、実のところは、市の支出の費目が人件費から委託料に変わるだけ。おまけに、同額で移行したとしても、10%の消費税分は民間で働く人の取り分は少なくなる。現実には非正規雇用の増加など働く側には厳しくなります。市にとっても、予算・決算書と財務諸表の見かけは良くなりますが、トータルコスト(全体経費)やコストパフォーマンス(費用対効果)は変わらないか、悪くなる場合もある。業務やサービスの質が落ちる場合もあるからです。そして、何よりも雇用・就労の健全化を損なう。

 もちろん、高度の専門性や特殊なノウハウが求められる分野の業務の外部委託は効果的であり、反対しませんが、単に見かけの人件費削減のための外部化には慎重になるべきです。このようなことでは、SDGs(持続可能な開発目標)を掲げた市総合計画とは折が合いません。

病院も駐車場もBブロック内に整備? 病院規模に見合う駐車台数の提案は神業 審査クリアできる?

 ところで、同じ7月1日の記者会見で「市民病院整備基本計画等策定支援業務委託について」が案件になっていました。内容は、例の公募型プロポーザルの実施。資料は2ページのごく簡単なもの。市長からの説明は記録されていないので、いきなり質疑応答に移ったのか。いずれにしろ、ここのやり取りでいくつか新しい情報があります。

 その前に、新しくない情報をまとめておきます。

①新病院の「建築の事業費のみ」は、議会答弁どおり10億~20億円縮小する予定。

②病床数や診療科などは市議会特別委員会や評価委員会で示したとおり。

③建設場所は駅前Bブロック。駅前Aブロックに病院の整備は考えられない。

 次に新しい情報に移ります。正確を期すため引用します。

記者… 駐車場の問題が課題と思いますが、駅前Bブロックには、病院本体と駐車場を整備することになるのですか。それとも整備が難しい場合は、周辺に駐車場を整備することも提案しても良いということですか。

政策監… 駐車場については、駅前Bブロックの敷地内で提案していただくことになります。

記者… 来院者用の駐車場も駅前Bブロックということですね。

政策監… そうです。

記者… 市の方針として、駅前Bブロックに駐車場を整備するということですか。

政策監… 敷地内で駐車場を確保する提案をいただこうと思っています。

 従来はBブロックには一時的な駐車スペースを除き、駐車場はないとされていた。しかし、ここでの説明では、来院者用も含め駐車場もBブロックで確保すると明言している。元の計画では駐車場用地であったところに、ほぼ同規模の病院と駐車場を収容する計画づくりのプロポーザル(提案)を求める?何台の駐車場が想定されているのか不明ですが、病院の規模に見合った駐車台数が提案されなければ、欠陥計画になります。これがプロポーザルの条件であれば、駐車場を別途提案しますというわけにはいかない。神業を求めるようなものであり、審査をクリアできる提案が出てくるのか?

条例改正は基本計画策定の上で3月市議会提案? Bブロック病院実現は秋の市議選と神業頼み 

 もうひとつの新しい情報が、注目の「野洲市病院事業の設置等に関する条例」の改正時期。ここでも、正確を期すために、引用します。

記者… 市議会では、駅前Aブロックを推進されておられる方がいる中で、駅前Bブロックを表明されました。今後、市議会で採決を行う場は、どのような機会があるのですか。

市長… 野洲市病院事業の設置等に関する条例を改正する場面になります。条例改正を提案する場合には、この基本構想、基本計画が必要になります。

政策監… 条例改正には、根拠が必要であり、収支計画や配置計画、駐車場の課題等を整理した後、条例改正を議会に提案する予定です。

記者… 11月下旬に基本構想の策定、令和4年2月上旬に基本計画を策定した上で、3月市議会定例会に条例の改正を提案されるのですね。

政策監… そのとおりです。

 ここは重要なところです。これまでより、一歩踏み込んでいる、あるいは踏み込まざるをえなくなっている。

 市長の条例改正提案にこの基本構想、基本計画が必要という論理がよく分からない。むしろ、通常の論理であれば、Bブロックに病院と駐車場を整備する基本計画等を大きなお金を使って策定するのであれば、Bブロックに病院を建てる決定をしたうえで行うべきものであり、先に条例の改正が必要。まったく逆ではないかと思います。

 市長の説明では、市長は病院と駐車場をBブロック内に整備する確証をまだ持っていない。したがって、基本計画等が策定されて確証が得られてから条例を改正する。万一、確証が得られなければ、やらないと言っているのと同じ。そのようなことにならないように、以前書いたように、専門家と市民代表等を入れたBブロックでの病院整備可能性の調査と検討を行う。そして、並行して特別委員会での議会審議を経るのが通常の手続きです。

 これでは、以前市長出席の市民懇談会に触れて、「市長のつもりでは、計画等を策定業務の委託を行うが、結果として実現可能性がないことが判明し、計画が策定できないことも想定しているように受取れる。」、「先の現地半額建替え検討の轍を踏み、その二の舞になりそう。」と書いたことと符合します。基本計画等策定業務を病院整備可能性の調査と検討にしてしまっている。ましてや、政策監の「収支計画や配置計画、駐車場の課題等を整理した後」となれば、先はまだまだ遠い。

 ただし、10月の市議選で、市長提案には何であろうと頭から賛成する議員が過半数を占めるようになれば、市長提案は何でもとおり、条例改正や予算案も可決され、状況は変わってきます。

 しかし、その場合でも、病院も駐車場もBブロック内に整備し、収支計画が成立するという神業が行われなければ、病院は実現しません。