過去の取組み関する内容がかなり酷い? 議員から質問も意見もなかったよう

 先に紹介した栢木市長出席の市民懇談会での主要な話題であった、市長肝いりの行財政改革。その資料での過去の取組み関する内容がかなり酷いという話が聞こえてきました。

 たしかに、過去には野洲市では行政改革しか行われていなかったが、今度は、行財政改革を行うといった懇談会での市長の意味不明の説明。また、市長が説明した行政改革の目玉がふるさと納税であるなど見当違い気味であることも心配。

 6月30日の市議会全員協議会で行財政改革の推進について説明があったようですが、議員からは何ら質問も意見もなかったようです。市民の生活には大きく影響するものであるのに議員の関心が薄いのか?

体育館の運営、民間が運営することなどが挙げられる?

 情報を得るために、市ホームページで記者会見記録を当たってみると、7月1日の会見記録に案件として「野洲市行財政改革の推進について(概要)」がありました。

 資料も案件名と同じ標題の8ページの資料が添付されていました。資料は、概要であるため抽象的です。内容は、これまでの病院関連の議会質問で言及された基金の心配が最初の方にあり、今後の方策として、ふるさと納税、人件費圧縮の取組や市役所業務の民間ノウハウ・提案の導入検討。また、公共サービスのあり方では、「民間において同様の事業効果をもたらすものについては積極的に民間活力の活用を図ります。」などが並んでいる。

 この概要資料からは、酷さはわかりません。ところが、記者との質疑応答が次のやり取りではじまっています。

記者… 公共サービスのあり方検討として、民間活力の活用の可否について検討とありますが、具体的にどのようなことを検討されるのですか。

部長… 例えば、現在は、体育館の運営は直営で行っていますが、従前は、指定管理を行っていましたので、民間が運営することなどが挙げられます。

この話題は、後まで続き、最後は次のように終わっています。

副市長… 過去には、体育館や文化ホールの運営は、文体事業団という組織に指定管理を行っていましたが、事業団を廃止し、直営にしました。このことにより職員を公務員化したことにより、結果として職員数が増加しています。

記者… 一般的に直営より指定管理制度を活用し、費用を支出する方が歳出を抑えられると思いますが。

副市長… 一般的にはそのように思います。

物事は全体を見て判断する必要がある 部分解でなく全体解が大事 直営化の全体像

 市長の記者会見であるのに、ほとんど部長、一部副市長が答え、市長が一切対応していないことも異様です。それはさておき、過去の指定管理制度を直営にしたことを否定的に説明していますが、事実を簡単に説明すると次のとおりです。

 市から指定管理制度により運営をまかされていた財団法人野洲市文化スポーツ振興事業団は設立後約20年のいわゆる市の外郭団体。本来、指定管理制度の運営事業者は公募の競争入札で選定するべきものですが、公募しない随契となっていた。正職員15名、非正規が30名程度の体制。

 この状態、何が問題になっていたかというと、次のことです。

①団体の設立後20年を超え、職員数を増やせないため新規採用をストップし、職員の年齢構成が高齢化。そのため、機動力と活力が低下。先行き改善見通しなし。

②職員の給与は市職員に準じていたため、年々人件費が上がる一方。ということは、市の委託費が上がる一方。

消費税が導入され、委託費全体が課税対象となっため、その大半を占める人件費に課税され巨額な消費税が国に行く。税率上げも見込まれた。委託費は2億円を超えていたの思うので、現行の10%では2千万円を超え、約3人分の人件費にあたります。

④公募競争により、他の事業者に委託する場合は、事業団の解散が必要。その場合は、設置者である市は職員の就労等の保障が必要。

 概略以上のような問題認識を市と事業団で共有し、ほぼ1年間、市議会や関係機関と公開で議論し、直営化しました。希望する職員は選考採用を行って市職員として採用しました。

 その利点は、①職員の配置転換で職員の年齢構成を大きく若返らせることができ、人件費を大幅に抑えられる。②人件費にかかる消費税が不要になる。③職員の就労保障が可能となり、事業団の解散が可能となる。

 実質的に運営費が下がることを含め、以上の利点については、数値シミュレーション等も示して、確かであることを議会や関係機関の理解を得ました。また、関係条例の議決も得ています。

 当時の事業団を見捨てて、競争入札で安い民間に委託していれば、本当に全体コストが安かったのかどうか。物事は全体を見て判断する必要がある。

体育館などは直営で人件費が高くなった? 「削り代(しろ)」は結構見いだせるがそのつけは? 

 以上の丁寧な検討と手続きを経て、2013(平成25)年から市の施設である体育館や文化ホールを市が直接運営することになり、9年目に入っています。心配した、職員の職場での状況も本人と市の双方に問題はなく、むしろ良い結果が出ています。

 記者会見のなかでは、「次長… 一つの要因としては、各施設に勤務する職員数やその人件費が増えている傾向があります。体育館などは、当初は指定管理を行っていましたが、直営にしたことにより人件費が高くなったと思われます。」というコメントもありますが、何が何でも民間が安いという発想・予断は慎重かつ謙虚に検証する必要があります。

 このあたりで終わりますが、人件費削減でいえば、保育園、幼稚園、こども園、学校、学童保育所などで手厚い人員配置がしてあり、記者会見にある「同規模の自治体と比較」を前提で見れば、「削り代(しろ)」は結構見いだせる。それを削る場合は、あらかじめ市民とサービスの受け手である当事者、そして職員への説明と了解が必要です。病院問題のように密室で進めることは、混乱を大きくし、成果を生まない恐れがあると思います。