野洲市の病院事業が、市民や議会の参画を軽視あるいは無視をして、密室で進められていることを書きつつ、昨日は、現在進んでいる基本計画等策定業務のプロポーザルの手続きに話が及びました。

 公告が公表された時にも、権限のない病院長の名前で公告が行われていることや仕様書の問題に触れました。今回は、実施要領に目を通して、一段の驚きを昨日簡単に記しました。

 市民からすれば、細かな事務的な話ですが、Bブロック病院の最初の事業。そのとっかかりの正当性(コンプライアンス)が大事であるので、首を傾げざるを得ないやり方の問題点を整理します。

業者決定後、相談して仕事を作るという本末転倒の注文方式 公共発注では禁じ手 官製談合の疑い 

 まずは、実施要領の受注者選定手続きが異例なことです。

 通常、プロポーザルでは、まず、基本的な参加資格要件を満たした応募者から提案や見積価格など発注者が求める情報を期限までに提出してもらう。その後、あらかじめ公表している審査基準や配点表などをもとにして、審査し、受注者を選定します。

 しかし、今回の市の実施要領から読み取れるところでは、提案説明(プレゼンテーション)だけで、受注候補者を絞り込み、その者と市とで発注仕様書を作成し、その後に受注候補者から見積価格を提出してもらい、契約を締結する手続きになっている。

 このやり方では、透明性と客観性が確保されず、価格競争性が働かない。堅苦しいことを言えば、地方自治法2条14項と方財政法4条1項で定める、地方公共団体の財政は最小の経費で最大の効果を挙げなければならないという原則に違反することになる。そのうえ、端的に言えば、物騒な言い方になりますが、官製談合の疑いなしともいえない。

 もう少し具体的に問題点をあげます。

 受注候補者を絞り込んだ後、その者と市とで発注仕様書を作成するということは、市が発注に当たって、その業務でどのような成果を目的にしているのか、その明確な目的を持っていない。言いかえれば、何をしてもらうかを決めてないで、業者を選ぶ。そして受け手を決めてから、相談し仕事を作るということになる。本末転倒の注文の仕方であることになります。

 「民間」では行っているのかどうか知りませんが、公共の委託業務発注では禁じ手です。繰り返しになりますが、発注者が発注要件である仕様書を明確に定めてから競争で受注者決定するのでなく、提案説明(プレゼンテーション)という曖昧な手続きだけで、受注候補者を絞り込み、改めて本仕様書を決め、見積もってもらう。これでは、市が受注者と事前に通じていることになり、前術のとおり、官製談合の疑いがぬぐえなくなります。

次年度の随意契約「匂わし」は契約の対等性を失わせる 意味と効果もわからない

 もうひとつの問題は、実施要領に今回の業務とは別の次年度の業務を随意契約で発注することが「匂わされて」いること。「発注する予定であり」、「随意契約を締結することがある」と極めてあいまいな記載です。

 この情報が何を意味するかといえば、今回の委託業務を取れば、次の仕事も得られる可能性が濃厚であるとの情報を出すことになる。このことにより、業者の頑張りを促す、言い方を変えれば、値引き圧力をかけることになる。

 平たく言えば、今回の仕事を取ったなら、来年度は競争なしで随契で仕事出すので、今回は無理してでも安くしておいてと言うようなもの。これでは、契約の対等性を失わせます。これは、以前も書いた、栢木市長得意のディール(取り引き)のやり方。

 このようなところでディール(取り引き)をやることも論外ですが、それ以上に問題なのは、次年度の業務がどのような内容・規模のものかが明確にされていない。したがって、業者にしても、今回の受注での頑張りがいが読めない結果になります。今回の「発注する予定であり」、「随意契約を締結することがある」という匂わせ情報。これが実のところどれだけの意味と効果があるのかもわかりません。

 このように、今回の発注手続きは、異例というより、ガタガタ。次のように、まだまだ崩れていきます。

プロポーザルとも呼べない握り発注 一般的な価格競争入札の方が良い 行財改革にも反する

 最後の問題は、これも以前別の観点から書いたことですが、そもそも今回の業務がこのような形で外注発注する必要があるのかということと関係します。市立病院の2年間運営の実績と内部職員に力量からすれば、かなりの部分が内製化できる。 

 百歩譲って、外注を認めるとしても、プロポーザル方式はなじまない。発注する業務内容は明確にできるはずであり、そのようにしたうえで、資格と実績のある業者による価格競争入札で十分選定できるし、そのほうが手間も省けて安くなる。

 栢木市長は、以前紹介した市民からの手紙に対して「病院自体をシンボリック的な施設とは考えていません。」と回答している。これまでも意匠(デザイン)性を廃した、狭い土地いっぱいに実利的な病院を建てると明言している。これが真意であるなら、この点からも、そもそもプロポーザル方式はまったく馴染まないし、市長の方針に反することになる。

 一般的な価格競争入札の方が、透明、公平で競争が働く選定ができる。財政が厳しいというなら、なおさら、このような発注は避けるべき。そのうえ、これではプロポーザル方式とも呼べない、いわゆる握り発注になってしまう。

 内部の部長級職員で構成されているとはいえ、よくこれが契約審査会を通ったものです。このような危なっかしいやり方をするのであれば、慎重を期すために、外部の専門家で構成されている第三者機関である、市入札監視委員会の事前審査も受けた方が良い。そして、透明、公平で競争が働き、財政効率の良い、もっと明るく素直な発注方式に転換されることを期待します。