Aブロックの商業開発を市長が既成事実化 一方的説明だけで合意手続きを踏んだと勘違い

 昨日は、「市長への手紙」に対する市長の回答に関して駅南口周辺整備を例に取り上げました。

 あらためて、駅南口周辺、特に市長がこれまた独断専行で進めようとしている駅前Aブロックへの商業開発誘致について整理をしてみます。

 市民と議会の関心はこの駅前市民病院のことに集中していて、商業開発誘致の実現性についての注目度は低い。それでも、市民のなかには、昨日紹介した市長に手紙を出した市民のように、何も正式に決まらないうちに市長がどんどん既成事実化している状況に強い危機感を抱いている市民も少なくない。

 市議会でも、先の6月の定例会で田中陽介議員、坂口重良議員、岩井智惠子議員などがこのことについて市長に質問していましたが、相変わらず要領を得ない回答。究極何も詰め切れていない。

 しかし、これでも、市長にしてみれば、昨日紹介した市長回答の続きにある、「野洲市議会定例会の一般質問においても、議員に対し駅前Bブロックで整備することを説明してきましたので、〇〇様がおっしゃって いる有耶無耶に議論を進めるつもりは毛頭ございません。」の例のように、一方通行の説明だけで合意の手続きを踏んだと勘違いしている。

 事態が深刻であるのは、この異常な状況が、市長にとどまらず、議員にまで及んでいることです。先の市民病院設計業務の契約解除に関する住民監査請求の監査結果にも表れています。

 監査結果に次のような記述があります。「被請求人(注:市長)は、契約解除に至るまでに、外部の専門家や市民の代表等で構成する野洲市民病院整備運営評価委員会(専門部会を含む)の6回の開催、市議会全員協議会に3回の報告と説明、さらには、令和3年3月4日の当該業務委託の契約解除日には市議会に対し、当該業務委託の契約解除に係る資料提供と報告をするなど、一定の民主的な手続きを経ていることが認められる。」

 これが民主的な手続きとは常識的にはとても言えない。もちろん専門家に確認しても同様の見解です。ところが、この判断を下した監査委員の一人は市議会の代表。したがって、市長だけでなく、全部とは言えないまでも、市議会のなかにもそれで良しとする感覚があることは確かです。

 

 

民主的な手続きのイロハであるインフォームドコンセントもない 

 インフォームドコンセント(説明と同意)という、良く知られた、医療分野での基礎的な手続きがあります。このことは医療に限ったことではありません。むしろ、ある時期までは医療の分野では、ないがしろにされ、遅れていた。かつては医師等の立場が優位にあると理解され、患者に治療をしてあげるという恩恵型の関係になっていた。このいびつな関係を対等な関係にし、患者と家族等の人権を守ることをルール化したもの。民主的な手続きのイロハです。余談ですが病院事業管理者である市長がこのような姿勢であっては、市立病院の運営も心配になります。

 そのことはさておき、今の野洲市では、民主的な意思決定においては当然である、説明と同意、そしてその間の熟議ということがないがしろにされたまま、物事が進んでいます。

 その表れの典型的なものが、昨日触れた「野洲駅南口周辺整備構想」の問題です。2つあります。ひとつは、昨日指摘した、市長が、この構想を踏まえると言いながら、構想の中核(コア)施設となる駅前Aブロックの市民病院を分譲マンションを含む複合商業施設に勝手にすり替えていること。明らかに、これでは構想を踏まえたことにはならない。別に新しく構想を建てなくてはならない。

市長の進め方は数十年昔の古いまちづくりの進め方 市長の暴走制御は市議会の役割

 もうひとつの重要な問題は、上記のことと関係しますが、市長は構想もなく、いきなりサウンディングなるものによって、事業者選定を行おうとしている。

 南口の構想は、以前紹介したとおり、市民、専門家、関係機関等の参加する委員会で約1年間、公開の議論を経て策定したもの。市議会の方でも、当時、都市基盤整備特別委員会を設置して並行して審議を進めた。

 市長が複合商業施設を進めようとするなら、過去の手続きと同じように、市民、専門家、関係機関等によって構成された組織を設けて、検討することが必要。サウンディングによる事業者選定はその後です。商業施設であるのに、そもそも当事者団体である市商工会やその他経済団体とはどのような協議が行われているのか?

 今の市長の進め方は、数十年昔の、いわゆる行政主導の古いまちづくりの進め方です。その当時でも、少なくとも、市民や専門家の意見を聞く仕組みは持っていました。ここでも、市長が暴走を続けるのであれば、市民の側に立ってそれを制御する役割は市議会になります。