新病院の基本構想見直し委託業者を公募の記事 

 6月30日の市議会定例会の最終日。市長の推し進める駅前Bブロック病院とAブロック商業開発、いずれも市長と議会はすれ違ったままで、先どうなることかと心配のまま終わりました。そして、市長が期待を持たせた、翌7月1日発行の市広報の情報も新味はなく、当日紹介したとおり、逆に情報が薄くなっていて心配を募らせた。

 すると、そこに『新病院の基本構想見直し、委託業者を公募へ 野洲市』という見出しの記事がネットで目に入りました。(中日新聞7月2日)

 主要なところを引用します。数字の表記は変えます。「野洲市は1日、新病院整備の基本構想・計画を見直す委託事業者を、公募型プロポーザル方式で選定すると発表した。5日に公告し、8月中旬に決定する。」、「駐車場はBブロック内にも設ける方向。」、「構想を反映させる基本計画の策定は、来年2月上旬を目指す。事業費は1,200万円。2025年度の開院を目指し、基本設計と実施設計は来年度に実施する。」と以上のとおりです。

議会決議を考慮するポーズもなく、翌日から早速無視

 6月30日の市議会での決議では、「万が一、市長の権限をもって Bブロックを病院整備地として構想、計画の検討を進める場合においても」、「B ブロックでの整備課題である、具体的な整備構想案、Aブロック活用構想及び、AB 全体の実現可能な駐車場整備計画三点をセットで提示すること。」となっている。

 報道では、市が1日に、委託事業者を公募型プロポーザル方式で選定すると発表したと記されているが、閉会日の翌日に何を発表したのか?市のホームページを見たがそれに関する情報はない。いずれにしても、圧倒的多数で可決された決議でしたが、考慮するポーズもなく、翌日から早速無視です。

報道内容が全員協議会で配布された資料と違う 二転三転どころか日替わり

 それはそうとして、6月30日の市議会全員協議会で配布された資料の内容と報道内容が肝心なところで違っています。

 まず、B ブロックの欠陥のひとつである駐車場。議会資料では業務の中に入っていない。それなのに、記事にある発表では、「駐車場はBブロック内にも設ける方向。」となっている。ということは委託業務の中で検討するということになる。発注内容が何時変わったのか?

 さらには、「Bブロック内にも設ける」と「にも」が入っている。ということは、別にどこかに本来のものを想定していることになる。そうであるなら、今の段階で明らかにしなくてはいけない。

計画策定完了時期が報道では前日資料より1カ月以上前倒し! 地に足がついていないのではないか?

 もうひとつの大きな違いは、基本計画の策定完了時期。報道では「来年2月上旬を目指す。」となっているが、前日配布の資料では業務委託期間は、契約締結日から令和4年3月25日までと明記。1カ月以上の前倒し。市長公約の現地半額建替えの検討に時間を無駄にしたため、仕上がりが早いに越したことはないが、余りにも乱暴な発注の設計・積算。本当に1,200万円もの大きな事業費が要るのか疑問です。これらのことは、一見些細なことのように見えますが、二転三転どころか、日替わり。恐らく、市長に定見がなく、市役所内部での検討や作業が地に足がついていないのではないか?

決議無視など以上に大きな問題が3つ 市長得意の選挙での民意がない 逆に民意無視 

 今回市長が踏み出そうとしているBブロック計画策定には、上記の議会決議の無視や公表資料に一貫性がないこと以上に大きな問題が2つあります。

 ひとつは、大義名分がまったくないこと。

 現地半額建替えや駅前に病院を建てないことについては、市長は昨年の選挙で民意を得たと主張できる理由をかろうじて持っていた。しかし、駅前、それも狭くて駐車場用地の目途もたっていないBブロックに病院を建てることについては、市長得意の民意は通用しない。それどころか、市長が得たと主張する、駅前に病院を建てないという民意をも無視することになる。

2月の予算議会提案時には現地建替え見込みあり 地方公営企業法の実施計画はどうなっていた? 

 もうひとつの大きな問題は、予算が執行できるかということ。6月29日に書いたように、公表された予算資料では、大括りになっている。そして、予算が議会提案された時点では公約の現地半額建替えが可能な段階であった。とするなら、この予算使用目的はどうなっていたか?

 ここで、先の住民監査請求の判断において、監査委員が鬼の首を取ったように第一番にあげた、契約に議決が要らないことが逆に効いてきます。病院事業会計は「地方公営企業法」に基づいていますが、その予算は議決が要りますが、執行は事業管理者(野洲市では市長)に委ねられている。だから契約に議決が要らない。ただし、地方公営企業では経営の観点から一般会計よりも「弾力性に富む概括的な形成を採る」ため、財政の規律を確保の観点から、議会の議決に当たっては、「地方公営企業法」第25条等において「予算とともに予算に関する説明書、すなわち、予算の実施計画、予定キャッシュ・フロー計算書」などを議会に提出することになってます。

 この予算の実施計画では1,200万円がBブロックでの計画等の策定に使えるようになっているのか?

病院事業会計の財源は病院職員の働きによる収入 とりあえずの繰り返しは許されない

 最後の大きな問題は、上記とも関係しますが、Bブロックでの計画等の策定が現在は暫定的に旧民間病院施設を使って行っている市民病院事業のなかの事業であることにあります。もちろん、一般会計での事業でも市民の貴重な税が財源であるため、慎重な対応は必要。ただし、病院事業会計の場合は、税からの繰り入れはあるとはいえ、基本は病院職員の働きによる収入が財源の柱。事業の成否が企業会計における経営状況を左右する。極端に言えば、職員のボーナスにも影響する。いっそうの慎重さが求められます。

 したがって、とりあえずの現地半額建替え検討、とりあえずの3候補地選定と来て、今回とりあえずのBブロックでの計画等の策定に1,200万円も使うことにはよほど慎重でなけれなばらない。これ以上、とりあえずの繰り返しは許されません。