新情報なく隠す必要はなかった! 口頭情報が文書で示されたことに意味? 

 市議会での議員質問でも市広報に掲載することを理由にして答えなかった、Bブロック病院経過と根拠。これが今日の朝刊折込の市広報7月1日号に「市民病院整備事業のお知らせ」として掲載されています。市長があれほど答弁を拒んでいたにしては、期待に反して、新しい内容はありません。これであれば、何も隠す必要はなかった。結果からみれば、隠す内容がなかったのに何かを隠しているかのように見せかけて威厳を保ったとしか言いようがない。

 このことは、「5月28日開催の特別委員会において駅前、Bブロック(敷地面積約3,600㎡)で病院整備することを表明しましたので、市民の皆さんにお知らせします。野洲市長栢木進」という文章が最初に置かれていることからもわかります。これまでに出した情報を広報に載せただけ。

 ただし、それだけであっても、これまで議会や評価委員会の傍聴で聞いた口頭情報がはじめて文書で広く市民に示された意味はあります。参考に、市ホームページから該当ページを添付しておきます。

 注目点にはチェックマークを入れています。

 

Bブロックの理由は2点 1点目は評価委員会の意見と早期実現 市長論理ならAブロックになる

 新しい情報はありませんが、客観的な文書(テキスト)として読み込んでみます。

 肝心の「駅前Bブロックを病院整備場所に判断した理由」としては2点が上がっています。①市を二分している病院問題の早期解決を望む多くの市民の声、②財政面から身の丈にあった病院整備の実現。

 まず、①の内容としては、「市民病院整備運営評価委員会」の意見と早期解決を望む市民の声を根拠にあげて「駅前Bブロックで整備するよう方針を定めました。」としている。

 これまで病院問題に関心を持ってきた市民から見れば、論理がまったく通っていないことは一目瞭然。なぜなら、評価委員会では大半の委員がAブロックを推奨していた。昨日の議会でも、Aブロックでの病院整備を求める決議に反対する議員が、討論において、市長が評価委員会の委員を変えなかったからそのようになったのだと、失礼な意見を述べたほど、大勢はAブロックでした。また、駅前で早期解決・実現を優先するなら、まとまった土地があり、実施設計がほぼできている、Aブロックになってしまう。さらに、建設費も、市長がこの広報で、規模縮小して駐車場がない状態でも10~20億円しか安くならないと言っている。これでは、駐車場費、新たな計画や設計費を入れれば逆に高くなる恐れもある。

 以上のように、市長のあげる理由からは、Bブロックに行きつかないでAブロックになってしまう。ピンに不正な仕掛けがなければ、重力の赴くところ、ゲームの球はAの穴に入るはずです。

立地選定理由の国交付金の本命はAブロック 現地建て替えでは交付金はどう考えていた?

 次に、②の内容は、財政面。具体的には国の社会資本整備総合交付金を受けられることとAブロックを市から病院会計で購入するための借金(起債)の一括償還(返済)が必要となることを避けるため。あわせて、今後基金が厳しくなることをあげています。

 これについても検証します。

 国の交付金はそもそもAブロックを主体にし駐車場用地のBブロックも含めて、立地適正化計画を策定するなど準備をし、手続きをして受けられるようになったもの。Bブロック選定の理由にならない。むしろAブロックが本命です。

 この広報では、比較表を使って国の交付金を立地選定の理由にしていますが、そもそもの栢木市長の本命であった公約の現地建て替えではこの国交付金はどのように考えていたかが説明されていない。

 

借金問題は市長がAブロック病院を中止したことから起こった Aブロックで問題解決 借金は土地資産に変わっている

 財政面の理由としてあげられている、起債(借金)の一括償還。これもAブロックで病院を建てることが議決されていたから、市財政に有利となるように、市有地を市から購入するかたちで行ったもの。12億円弱の購入額の1/4、約3億円が国からの交付税で支援される有利な手法です。当然、病院を取りやめれば、起債(借金)も成り立たなくなり、30年の分割返済も認められなくなり、一括返済となる。さらに、1/4、約3億円の交付税も受けられなくなる。

 市長は、前任者が大きな借金をして財政が厳しいと言い触らしているそうですが、借金は土地資産に変わっている。市長得意のバランスシートのはずです。いずれにしろ、病院をAブロックに建てれば起債(借金)問題も起こらない。問題は、市長が民意としてAブロック病院を中止したことから起こったものです。

 この点でも、市長があげるBブロック選定の理由はAブロックに病院を建てれば解決します。

基金残高だけで財政見通しを見ると危険 初期投資額だけを押える単純な発想も危険 

 財政面の理由で最後にあげられている基金問題。広報の説明と資料は、市民に過大な心配を煽るために出している面がある。財政見通しを正確に見極めようと思えば、基金残高だけでなく、将来の事業見込み、起債残高と償還見込み、保有資産などの情報と照らして評価しないといけない。今回広報に掲載の、単純な社会保障費の伸びなどを前提にした「成り行き」グラフだけでは判断を誤ります。

 これでは、以前に書いた、お小遣い帳、あるいはお財布型会計になってしまいます。ちなみに、昨日の全員協議会で示された行財政改革もこの古い発想に基づいているようです。

 端的に示すために、毎年出ている野洲市の中期財政見通しから平成27年度の基金のところを添付しておきます。この見通しと市広報の平成29年以降のところを比較してください。平成29年度末で約6億円、平成32(令和2)年では財政調整基金は底をつく見込みとなっています。しかし、現実はそうなっていない。

 このように、見通しを立てたうえで、その改善に向けて事業運営と財政運営を行うことで、結果は大きく違ってきます。今回の広報のメッセージでは、栢木市長は、今後基金は増えませんと言っていることになる。さらに、昨日の行財政改革の資料にあったように、事業を縮小したり、サービスを切ったり、料金を値上げしたりという後ろ向きの取組みを今後行いますと言っていることになる。そして、それが図書館において既に密かに行われ、これからは病院でも同じことが始まろうとしている。昨日の全員協議会でも福山病院長は病院の「ダウンサイジング(規模縮小)」を了解していることを市長が強調していたようです。規模縮小を一概に否定する必要はないとしても、病院の機能・役割、収支見通しなどを市民と議会に明らかにしつつ進めないと危険。小さくしても手術室や検査室、情報システムは同じように必要で割高になる。市長のように「初期投資額」だけを押える単純な発想では、まさに持続可能性が得られない。

 あと、参考に、近隣市の基金見通しも添付しておきます。額に違いはあっても、いずれも基金は減少見込みとなっています。滋賀県のデータがホームページで上手く見つかりませんでしたが、恐らく県の状況も変わりはないと思います。