Aブロック商業開発の市長答弁で気になったこと5つ

 前回の続きで、なぜBブロックに病院を建てるという不合理で、非常識な判断がなされようとしているのか、それについて検証します。

 その理由は、端的に言えば、いうまでもなく、駅前に商業開発を誘致して、税収を増大させるという市長の公約実現のため。先週2日間の議会質問でも岩井議員、田中議員、野並議員の3議員がその実現性に強く疑問を呈していました。

 それに対する市長の答えは、ほとんどこれまでの繰り返しで、まともに答えていなかった。しかし、Aブロックに関する答えで気になったことが5つありました。

①行政財産から普通財産に変更すると言ったこと。

②売るか、貸すかはまだ決まっていないないと言ったこと。

③JR琵琶湖線沿線の駅前で、これほどポテンシャル(開発潜在力)が高い土地がまとまって残っているのは野洲駅前だけと言ったこと。

④「野洲駅南口周辺整備構想」で「市民広場」としてBブロックの一部を使って構想されている都市公園をAブロックのサウンディング調査時に必要機能として入れると答えたこと。

⑤サウンディングの実施時期が未定で来年2月か3月となると言ったこと。

 それでは、順番に手短に篩にかけてみます。

普通財産にするなら、売るか貸すかの選択肢なく、売ることになる 関門厳しい

 ①と②を一括りで進めます。

 市長の答えは全く矛盾しています。市は行政機関であり、その限りで、財産を持つことができます。市民の税や国の交付金(これも元は市民の税金)で普通財産を取得することはできず、原則として全て行政財産です。しかし、過去には学校や公民館などのために取得や建設し、使用した土地建物が不要となることがある。その場合は、行政機能がなくなったため、普通財産に変換して、当面管理します。その普通財産の利用見込みがないのであれば、経費をかけて管理するのでなく、売却処分が必要。そしてそれで得られた財源を市民の福祉などに活用すべき。当然のことです。

 そこで、駅前市有地A・Bブロックの位置づけ。この土地は、「野洲駅南口周辺整備構想」を前提にして新市民病院用地として確保した行政財産。それを普通財産に変更するなら原則として売却しかない。独断専行で何でもありの栢木市長でも、それは厳しい。だから、①のとおり普通財産に変更するなら、②の売るか貸すかの選択肢はなく、売ることになります。

 ついでに触れておくと、まず、いつ普通財産に変更するのか、またその根拠を何に求めるかの問題が生じます。根拠とは、不動産の所有権移転登記を例にとれば、登記原因、売買なのか相続なのかに相当するものです。Bブロック病院の基本計画だけでは原因にならない。「野洲市病院事業の設置等に関する条例」と「野洲駅南口周辺整備構想」を改正、市行政上まったく不要な土地にしてしまう必要ある。

 他方、新たにAブロックに商業振興の構想や計画など行政計画を策定して進めるやり方も考えられるが、その場合は、普通財産に変更できなくなる。いずれにしても厳しい関門がありそう。「その都度最善の判断」で通り抜けられるか?

駅前商業は飽和状態 「ポテンシャルが高い土地がまとまって」は従来からマンション業界の言

 次に③です。

 駅前の土地がポテンシャルが高い土地であることは確か。ところが、議員も指摘していたように、一部例外を除き、JR琵琶湖線沿線の駅前商業開発はうまく行っていない。むしろ、大津、近江八幡など撤退が相次いでいる。ということは、沿線駅前の商業機能はその一部例外のところで充足していることになる。冷静に見れば、飽和状態で、野洲駅前土地の大規模商業立地のポテンシャルは現実的には高くない。

 それよりなにより、「JR琵琶湖線沿線の駅前でこれほどポテンシャルが高い土地がまとまって残っている」という言い回しは、マンション業界ではこれまでもよく耳にされた。まさに、そのことが現実味を帯びてきたことを心配する市民の声も最近よく聞きます。

2千㎡の都市公園をとったAブロック残地にどのような商業開発を描いているのか? 公園は普通財産に変更不可

 ④も答弁の聞き間違いかと思った。岩井議員の駅前都市公園の質問に対して、自ら約2千㎡の市民広場のことであることを面積まで含めて確認した。そのうえで、それをAブロックのサウンディングに入れる、すなわちでAブロックに確保すると答えた。Aブロック5,500㎡から2千㎡を都市公園にあてれば、残るのは3,500㎡。そもそもどのような規模の商業開発の誘致を思い描いているのか?

 また、都市公園は典型的な行政財産。行政財産から普通財産に変更するという先の方針と矛盾する。

ポテンシャル高ければ、市でサウンディングできる 市長説明は矛盾 注文受けてから板前修業?

 次に⑤サウンディングの実施時期が未定で来年2月か3月となるとのこと。

 田中議員も指摘していたとおり、もっと早くやればよい。なぜ、国土交通省と内閣府の年1回の場を使おうとするのか意味が分からない。参考に国土交通省の資料を添付しておきます。

 ここに示されているように市独自でやれるし、ポテンシャルが高い土地であればなおさら民間開発の関心が高く、うまく行くはず。市長の説明はまったく矛盾している。さらに、市長の公約である駅前での商業開発方針の信頼度が高く、土地の商業上のポテンシャルが高いのでれば、すでに事業者から問合せがあるはずです。

 そして、それ以前の話として、公約である限りは、市長はあらかじめそれなりに精度の高い腹案なり目論見を持っていたのでなければおかしい。就任後に知ったサウンディングに頼らざるを得ないのであれば、これまた、公約が「いち市民」の私案ならぬ、願望だったことになります。これでは、病院の現地半額建替え公約の場合とそっくり。例えれば、寿司の注文を受けてから材料を仕込むどころか、それから板前修業に出るような話。

 以上のように見てくると、市長のまだかろうじて命脈を保っているように見える看板公約である駅前商業開発。これも病院の現地半額建替え公約と同じように基礎的積み上げのない出任せではないか?そんなものを当てにして、とりあえずのサウンディングに望みを託して年度末まで待つなどという悠長なことは、事態を一層深刻にするだけと思えてならない。