菅総理大臣がG7でオリンピック等の開催に向け決意表明 万全な感染対策 

 日本時間の6月11日夜、イギリスで開幕したG7サミット(主要7か国首脳会議)で菅総理大臣が、東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けた決意を表明し、強力な選手団を派遣してほしいと呼びかけたことが報道されています。情報源が同じであるためか、いずれの国内報道も同様なので、NHKのを引用します。

「菅総理大臣は、東京オリンピック・パラリンピックについて『新型コロナという大きな困難に直面する今だからこそ、世界が団結し、人類の努力と英知によって難局を乗り越えていけることを日本から世界に発信したい』と述べ、開催に向けた決意を表明しました。」

「そのうえで、菅総理大臣は「安全安心な東京大会の開催に向けて万全な感染対策を講じ準備を進めていく。世界のトップ選手が最高の競技を繰り広げることを期待している」と述べ、強力な選手団を派遣してほしいと呼びかけました。

これに対し、日本政府によりますと、首脳の1人が『全員の賛意を代表して、東京大会の成功を確信している』と述べたということです。」

 また、菅総理大臣が、イギリスのジョンソン首相、アメリカのバイデン大統領、フランスのマクロン大統領からもそれぞれ個別の会談等で支持を取りつけたことも報道されています。

党首討論での総理発言に比べ明確な意思の表明と行動 国際的にはルビコン川を渡った 

 6月9日の党首討論での総理の発言や対応からの延長線上の行動。ただし、各党首からの質問に対しては、これまでの国民の命と健康を守っていくことが開催の前提条件であるという主旨の抽象的な答えに終始していた。また、オリンピックに関する、日本維新の会・片山虎之助共同代表の「小池百合子知事が出ないといけないと思う。首相は(本来は)後方支援だ。」との呼び水質問に対して、「私が申し上げたいことを言っていただいて、大変うれしく思うと総理は答えた。筋道としてはそうだと思う。ただ私も逃げる気持ちはない。」(日本経済新聞)という、やや引いたやり取りがあった。このことからすると、えらく積極的な行動。まさに、「逃げる気持ち」がないことの表れ。

 国内ではまだ東京五輪・パラ大会の開催に関しては議論と心情の両面で賛否が落ち着いていない。しかし、国際的には、すでにルビコン川を渡った、あるいは渡らされた。それも、「万全な感染対策」を約束して。

 

内ではあいまいなままで、外では明確? 実は背水の陣を敷いた訴え 

 長々と9日の党首討論から辿ってきました。それは、これまでも何度か触れた意思決定の仕組みに関する問題意識からです。国内ではあいまいなままで、外では明確。本来、まずは、国民、少なくともその代表である国会議員と客観的な情報に基づき、真摯に議論を交わす。反対のための反対に対しては仕方がないが、合理的な懸念や反対に対しては説明し、一定の合意を得る。自らが「国民の命と安全」にかかわるという課題ならなおさらです。しかし、今回はそうなっていないことが残念。結果によっては、深刻です。

 ただし、G7サミットでの総理の発言は日本でしか報道されていません。BBC(英国放送協会)のホームページやグーグル(Google)で検索した限りでは見当たりませんでした。なお、ロイター(REUTERS)やブルームバーグ(Bloomberg)の日本語版ホームページ共同通信等の配信記事としてはあります。

 報道のなかでも、「日本政府によりますと、首脳の1人が『全員の賛意を代表して、東京大会の成功を確信している』と述べたということです。」という報道は首脳の名前も明らかでないことを含め、不自然です。

 G7での総理の発言は報道では明確な発信のようになっている。しかしよく読んでみるとそうばかりともいえない。背水の陣を敷いた訴えのようでもある。攻めより、守りの姿勢になっている。

 ロイター英語版のスポーツ欄に『日本はG7加盟国がオリンピックを支援することを期待している、と日本が言っている』(”Japan expects G7 members to support Olympics, Japan says”)という見出し記事があります(2021年6月12日3:00 JST)。内容は短く、主旨はオリンピックを計画通りに進めるという東京の決意をG7諸国の他のメンバーが共有することを期待しているとG7への日本代表団が金曜日に語ったという内容。

意思決定の仕組みを基本的なことから変えていかない限り、事は繰り返される 自治体でも同じ  

 7月23日のオリンピック開会時の国内のワクチン接種率の想定は公式には明らかにされていません。国内のワクチン接種人数は6月11日の時点で1回目約1,673万人。今後毎日100万人の接種を1回目の人に行うという最大の仮定をしても、接種率は国民の約1/3。

 オリンピックに期待している人がいる一方、心配している人も多い。そのなかで、感染拡大を起こさず、ということは国民の生命の安全を犯さないで、さらにはこれ以上の営業や行動の規制・抑制を求めず、すでに深刻になっている生活困窮に対する支援を速やかに明らかにし、そのうえで、開催が可能なのか?「万全」ということはそのことを約束していると受け止められる。もの事には、できる事とできない事がある。そこのところを国民と、それこそ「共有」して進める方が良いのではないか。

 それとともに、そもそもの合意形成と意思決定の仕組みを基本的なとことから変えていかない限り、事は繰り返される。これは身近な自治体でも同じです。