財政状況が厳しいというボヤキからはじまる市長あいさつ 場違い感否めない 

 昨日書いた栢木市長のメールがきっかけになって、改めて、市の財政状況がどうなっているのか。駅前のAブロック、Bブロックはどこなのかという声が上がっています。

 これまでも、病院が関係する会議、議会委員会や評価委員会などの市長あいさつは、いずれも、いきなり財政状況が厳しいというボヤキからはじまっている。場違い感が否めませんし、もしそうなら、市長として打開策を示すべきなのに、いつも繰り言で終わっています。

「思っていた以上に財政状況が危機的」 「収入を増やすことをせず基金を食い潰してきた」

 例として昨日取上げたメールを、長めになりますが、関係する部分を引用します。

「市長に就任して病院整備を進めるにあたり様々な課題が分かってきました。思っていた以上に財政状況が危機的である事に加えて、あげくにも駅前ロータリー(Aブロック)に約12億円の病院債という借金をされていました。この病院債は駅前以外に病院整備をする場合、全額一括返済しなければならず、今現在野洲市にはそれだけの財源もなく、他の方法で何とかならないか検討致しましたがどうにもならずやむ無く、駅前ロータリー(Aブロック)には税収がはかれ、にぎわいが創出できる民間の力で商業施設(野洲市のシンボル的な商業施設)を整備して、JAの横(Bブロック)に病院を整備することにしました。」

 「財政状況が厳しいのは、今までの野洲市政運営は収入を増やすことをせず基金(一般的には積立金)を食い潰してきたことによるツケが回って来たことが大きな原因だと思います。」

民間感覚は「入るを量りて出ずるを為す」の逆を行く? 法人市民税1/3を無駄に 

 昨日市長メールを送ってくれた市民からも、何か資料がないかと切実に問われた。そこでとりあえず、市のホームページからいくつか見繕って送りました。

 繰り返しになりますが、栢木市長就任以降に財政が厳しくなった原因は先日書いたとおりです。今年度から施行が定められていて、財政計画に折り込み済みであった年3.5億円の都市計画税を止めたことが引き金の一つ。

 野洲市では、これまで都市基盤整備事業に一般財源を充ててきた。都市型自治体になっているのに、近隣市と比べて無理を重ねてきていた。2004年の野洲市発足時からの課題であった都市計画税導入にめどがついて、近隣市と同じように、都市基盤整備事業に都市計画税財源を充てる。それによって生じる一般財源の余裕分によって、新たに子ども医療費無料化拡大、学校や体育館、さらには踏切の大規模改修、雨水幹線整備などを進める計画であった。それなのに、入る方を一気に止めて、出る方はそのまま。「入るを量りて出ずるを為す」の逆。これが民間感覚?毎年の法人市民税が10億円前後ですから、3.5億円はその3分の一。厳しくならない方がおかしい。

 その他、駅前病院の設計を中止して、せっかくの国交付金と交付税までも無駄にするとともに、本来なら必要がなかった4千万円以上の想定外の支払いを年度末に発生させた。

市長が嘆く基金の推移は? 

 それでは、野洲市の税収や基金はどうなっているのか。平成23年ごろからは毎年推移を公表しているので、市ホームページから紹介します。

 まず、基金を3つのグラフで見てください。なお、資料の関係で年度が重なっています。また、平成16年以前の数値は2町の分が合計されています。

 財政調整基金はもともと多い方ではない。2町合併による新市発足時ですでに10億円台に落ちている。平成21、22年はリーマンショックで法人市民税が1/2、1/4と激減した。その分基金を繰り入れたことにより、異常に落ち込んだ。

 

基金はやや上昇 並行して市民と子どもたちの安全安心のための資産形成 

 その後基金はやや上昇気味で推移しています。逆にこの背後では、学校耐震化率約50%と県内最下位であった学校の耐震化を100%にする事業や全学校への空調装備、祇王小学校や北野小学校の増築、4つのこども園新設、学童保育所16教室の新設、新クリーンセンター、新消防署、雨水幹線1期事業、旧中主町役場庁舎の大規模改修、北比江の市民交流センター新設、野洲駅南北のロータリー整備、柿ノ木原踏切大規模改修、国8バイパス用の工業団地造成、竹ヶ丘開発のための市道整備、コミュニティーセンター大規模改修等々、あげればきりがないほどの事業。さらには、先送りになっていた6億円超の工業振興助成金など隠れた数十億円の債務の解消も行われています。

 市長お得意のバランスシートでいえば、市民と子どもたちの安全安心のための資産形成がされている。この実態を表すのに「基金を食い潰してきた」という表現が妥当か?新市発足後でリーマンショック前の状況より悪くはなってはいない。

 

 

「今までの野洲市政運営は収入を増やすことをせず」は正確か?

 次に税収の推移を見てみます。グラフを見ていただければ、説明の必要はないと思います。法人市民税は、リーマンショックで落ち込み、その後景気が回復するとともに、企業立地と設備投資が進みましたが、税の制度が不利な方向に変更されたため、約10億円どまりになっています。流れとしては微増傾向です。ビジネスではないので、一気には増えない。

 「今までの野洲市政運営は収入を増やすことをせず基金を食い潰してきた」かどうかの判断は市民の皆さんに委ねられています。税は自治体の基幹となる財源です。ただし、自治体が行う市民や事業者のための事業やサービスの財源は、税だけではありません。市民の税金が原資となって国から来る、交付税、交付金、補助金などをいかにうまく組み合わせるかが重要です。

土地代12億円一括キャッシュで払う発想は危機的状況

 最後に、栢木市長は平成25年~平成28年、野洲市議会議員であった。そしてその間、野洲市監査委員を経験している。かつての職の時に「今までの野洲市政運営は収入を増やすことをせず基金を食い潰してきた」との指摘を行って来たことがあるのか?

 先のメールには相変わらず、「約120億円もかけて病院整備をする事に対して反対」と書いてある。120億円は何もかも入れた総事業費。通常は建設費かそこに用地代を含んだ金額で議論する。駅前病院の建設費は病院本体と設備、250台の立体駐車場で85億円。そこに土地代が12億円弱です。このうちの市税負担は、1/4。市民にもっと正確に伝えるべきだと思います。それとともに、責任ある市長としては、批判したり嘆いたりするより、自らどのような規模の病院を幾らで建てるのか明らかにすべき。それによって、市民はまだ残されている半額の公約が守られるのかどうか判断できます。

 今日の最後の最後に。土地代を一括キャッシュ(現金)で払うという発想。そのための基金がないから財政危機だといって嘆き、触れ回る財政感覚。それこそ危機的ではないかと思います。

 いずれにしても、批判は重要ですが、正確な情報と認識で行わないといけない。そうでないと、自ら建設的な仕事ができない。その被害は、本人だけでなく。市民に返ってきます。