元計画では病院立体駐車場と公園用地のBブロックに病院建設方針に転換

 すでに報道があったとおり、新市民病院の整備場所は、市長の方針としては、駅前に戻りました。今日5月28日の市議会の病院整備事業特別委員会で、駅前市有地のうち通称Bグロックに決めたいと市長が説明。元の計画では病院立体駐車場と公園用地となっているところです。

 委員会ではあるが、今回はネット中継があると聞いていたので、ネットで傍聴しました。また傍聴者から話も聞き、資料も貰いました。新聞報道では、市長が駅前の通称Bブロックに病院建設の方針を固めたと書いてあったので、議員に事前配布された資料にBブロックとあるのかと思っていました。しかし、そうでなく、まさに今日市長の口頭での歯切れの悪い表明でした。当然、今日傍聴者に配られた資料にもBブロックとは書かれていない。

些細なことだが一事が万事 秘匿するから貴重な時間を無駄に 漏らしたのは市長?

 この些細なことに関しては、議員からなぜ情報が漏れたなど、情報管理の問題が質され、市長は職員に質したが、確認されなかったと答弁。そのうえで、市長が議員は守秘義務がないからと議員からの漏洩をほのめかしたところ、山崎敦議員が資料にはBブロックの記載がないと突っ込まれ言葉に詰まった。後のやり取りで、坂口重良議員の質問で、市長本人が方針変更説明のために駅前自治会を事前に訪問していることが判明。これでは漏らしたのは市長本人かもしれない。いずれにしても、はじめからすべてオープンでやればよい。必要もないのに秘匿するから貴重な時間をこのような質疑に費やさざるを得ないし、職員にもストレスがたまる。多分栢木市長の場合は秘匿せざるを得ない事情があるのかもしれない。一事が万事です。

看板公約である病院を駅前に整備しないという方針を撤回 すれ違い残したまま議会は賛同

 2時間に及ぶやり取りを詳細に紹介する余裕はないので、俯瞰的に印象を述べたうえで、気になったところを順不同に取上げてみます。

 まず、今日の委員会の核心となる情報としては、先ず、市長が看板公約のひとつであった、駅前には病院を整備しないという方針を撤回した。そして、駅前Bブロックに病院を整備する方針で、今後その具体化の検討を進めることを正式表明したことです。これに対して、議会は賛同したことになっている。ただし、橋俊明委員長は、議会としては駅前A、B、Cブロックを対象に検討していくと締めくくったので、ここは市長とすれ違っています。

議員は的確に質問したが、不正確な情報と論理に基づく答弁 財政破綻すると嘆きばかり 

 後は気になったところをいくつか取上げます。その前に、全体として市長と職員の答えが不正確な情報と論理に基づいていることが気になりました。

 先ずは、野並享子議員や田中陽介議員が、駅前Aブロックでは整備しないとした理由を市長に質問したこと。市長の答えは、野洲市で一番地価の高い駅前でやることは持続可能性がないというもの。野並議員がさらに、駅前病院計画のシミュレーション(試算)では経営が成り立ち、土地代返済可能であり、持続可能ではないかと質問。市長の答えは、住宅ローンの例を持ち出したり民間を例に、初期投資を限りなく押えるため、病院は安い土地単価のところへ持っていく事業である、まだ土地代の借金が残っている、さらにはバランスシートや簿記など、理由にならない理由をまくしたて、煙に巻く答弁。バランスシートを言うのであれば、老朽化資産で駅前計画頓挫によって、過大な改修費が見込まれることとなった現市立病院の心配を先ずすべきです。

 いちいち、論評するまでもないことですが、例えば、借金が残っているからこそ、有利な病院事業債で国の交付税の裏打ちを受けながら計画的に返済をしようとしていた。市長はそれを止めて、財政が厳しいと嘆くだけ。そのくせ、10億5千万円の国の社会資本整備の交付金があることを今回駅前に戻る理由のひとつにあげる。交付金は計画当初から折込済みのこと。これは市長の答弁の常套手法で、例の前大統領のディール(商取引)手法。

 また、地価が高いということは、市民にとって便利であることの裏返し。その便利なところに病院をつくることに、評価委員の大半も賛成だったはず。高い土地に公共施設はつくらないというなら、国会も国の省庁ももっと地価の安いところに移し、その土地を売ったお金を国民の福祉に回せという暴論と同じ。むしろことは逆であって、公共施設とサービスがあるからそこの地価が上がる。駅という公共施設があるから駅前の地価が高くなっているわけです。

 切りがありませんが、この項目であと1、2。これも田中議員の質問。初期投資に関して、身の丈にあった病院と言うが、病院がいくらまでなら妥当なのかとの質問。これに対する市長の答えは、低ければ低い方が良い。また、運営の繰入金に関しても、毎年市税からいわゆる真水で5~6億円という間違った過大な数字を繰り返しながら、繰入金も限りなくゼロを目指すとの答え。これでは、裏打ちの形で入ってくる国の交付税もゼロになるし、市民病院でなくなる。むしろこれが市長の本音なのかもしれない。

 いずれにしても、田中議員の質問の趣旨は、病院事業に関して、市の体力・財政力はどうかと聞いているのに、まったく答えになっていない。基金が底をつくとか、財政破綻するとかの繰り言ばかり。都市計画税を止めておいて、その財源を前提の事業の方だけ進めれば、破綻するに決まっている。活用期限が決まっている合併特例債の残額が少ないという、当然のことまで嘆く始末。

 次は、工藤義明議員が前の計画の華美な設備削減についての質問。現福山委員長も含め市立病院病院関係者が入って十分議論した設計にまだ華美な設備とは何かというもの。担当職員の答えは、即座に、ガラス張りとヘルスケアパーク、これを省くというもの。しかし、これらは、栢木市長が中途解約した設計ですでに省かれているはず。特別職公務員でない公務員がまでがディール答弁に追い込まれている。 

ランドマークを誘致する? 野洲のランドマークは三上山 

 駅前Aブロックに関しての市長の考えも問題。これも田中議員の質問などに絡んで、ランドマークを誘致するとか言い出した。議会にも今日初めてのことなのか、議員の中には戸惑った人もいたようで、ランドマークと言っている人もいた始末。市長も、賑わいとか商業と絡めて言っているようでした。

 しかし、改めて説明するまでもなく、ランドマークは、都市計画や景観政策分野で、都市などの景観を構成する要素のひとつ。賑わいなどと無関係ではないが、政策のアプローチ(扱い)は異なります。都市計画上では一般的には人工物ですが、自然物や景観も含まれる。野洲のランドマークは三上山です。

 あと、サウンディングとか民間資金とか、夢のような話。民間資金活用の典型であるPFIにしても、市の財政負担の担保が必要。田中議員の言うとおり、まさに、白紙手形にハンコをつく行為です。今日の委員会は、最後は波紋も波乱もなく終わりましたが、白紙手形にハンコを押したのか?

立入議員と荒川議員の駅前賛成への鮮やかな変身には驚き 稲垣議員の一貫は爽やか

 あと、まとめていくつか。

 議員の姿勢の転換です。これまで一貫して駅前反対を唱えてきた立入三千男議員と荒川泰宏議員が、駅前賛成に回った、鮮やかな変身には驚きです。荒川議員は5月10日の委員会でも郊外を声高に主張していましたからなおさらです。

 それに比べれば、稲垣誠亮議員は一貫していて爽やかです。ただし、市長がかつての住民監査請求や今進行中の住民訴訟に関与しているがと問いかけて、関与していないと答える機会を与えるなど、きめ細かな芸をしているあたりは、市長側との関係性が見えてきます。

 また、稲垣議員でいえば、評価委員会の報告のなかに郊外を主張した委員の発言が記載されていないことを指摘した。これは当然の指摘。

 今日の資料は、評価委員会で駅前が適地とする意見が多かったので、市長の転換に正当性をもたす前提(バイアス)で資料がつくられている。そのため、角野委員と藤村委員の郊外推奨の意見は消されている。ただし、評価委員会での意見は駅前A、Bブロックを想定していたはずなのにその点はすり替えられている。

 また、評価委員会では、上本委員長は場所決定に関与しない。市長と議会に委ねると言っていたはずなのに、評価委員会を隠れ蓑にして、いいところどりをしているところなどは、誠実性に欠けています。

 議員の対応では、公明党議員が一切無言であったことが逆に目立ち、その意見が聞けなかったことが残念でした。

駐車場問題からだけでも方針転換表明の信頼度が問われる

 長谷川崇朗議員がBブロックでの駐車場問題を指摘。当然出てくる質問。これに対して、担当職員は課題であることを認め、今後、地下駐車場、近くの市有地、JA土地を含め検討と回答。駐車場問題は後での検討では済まない。議員も指摘したように地下駐車場は設置コストが極端に高い。自走式地下駐車場の施工費は少なくとも1台あたり約300万円。場合によってはさらに高額。さらに、ドレイン(排水)などの維持管理コストもかさむ。ましてや、病院は免震建物のはず。免震層が地下1階にくることになり、その上下どちらに地下駐車場を設置するのか。気の遠くなるような話。また、駅前の高価なJAの土地の買収も可能性に含め検討するなど、市長の方針とまったく整合性がない。福山病院長が駅前の優位性を強調するとともに、大きな病院は要らないなどと、病院の規模を限りなく縮小できるような発言をしていたことが気になりますが、それによって駐車場問題解決の見込みがたつとは思えません。この駐車場問題だけから見ても、今日の方針転換表明の信頼度が問われる。

10月は争点なしの選挙戦 選挙後Bブロック断念 現地半額建替え断念と同じ筋書か?

 この辺りで、今日は締めくくります。

 橋委員長は今日の委員会を、後は議員の皆さん、6月の定例会の一般質問などで質問してくださいと締めくくりました。他方、市長への宿題は明確になかった。駅前であっても、Bブロックでは病院設置条例の改正が必要。また、市長が年度内に完了すると言っている構想と計画の見直しがどうなるかも不明。

 ということは、6月定例会で議員の皆さんが単に市長に対しては全く制約効力のない一般質問をして、市長はこれまで通り、巧妙な答えで切り抜ける。そして、来る10月には大半の現職市議と新しく立候補する候補者が駅前総論賛成の争点なしの状態で選挙戦に。その結果は誰にも予想できません。

 ただし、かろうじて現時点で予想できることは、10月の選挙後、Bブロックで検討したけれど病院整備は無理だという評価委員会の意見が出ましたということで、Bブロックも断念となるのでは?かつての看板公約であった現地半額建替え断念と同じ筋書です。これで現地半額建て替えを断念し、駅前中止と言いながら駅前で整備に転換と、2度約束が覆りました。恐らく半年後に3度目が予想されます。しかし、その先がどう見込まれているのかまではわかりません。それまで、現病院が持ちこたえられるか、野洲市が持ちこたえられるか?そして、市民は?