緊急事態宣言再延長の見通し 

 現在10都道府県に出されている緊急事態宣言、そのうち沖縄県を除く9都道府県については今月末が期限になっています。それを来月20日あたりまで延長する方向で検討されていると報道されています。すでに大阪府は宣言の再延長を政府に要請することを決定。感染者数の減少に効果が出てきてはいても解除できる段階にまでは至っていないし、医療現場状況はまだ厳しい状況です当初短期で目途をたてるつもりであった政府としては想定外の事態のはず。

他方、新型コロナウイルスの報道は、国が東京と大阪に設けたワクチンの大規模接種会場の話題に移っています。円滑に進んでいるとのことで何よりです。当初の計画では接種は市町村の役割となっていた。その進み具合がはかばかしくないように見えたので、国が直接乗り出した。出来るだけ早く、1人でも多くの人が接種を受けることが目標なので良いことではあります。ただし、ワクチン接種が捗らなかった原因は自治体の責任ではなく、国からのワクチン供給の問題が主でした。ここに来て、国が直接ワクチン選手に取組みだしたのは、「7月末を念頭に希望するすべての高齢者に2回の接種を終えられるよう取り組む」と自ら期限を切ったことも理由です。 

 しかし、高齢者へのワクチン接種の進み具合は、5月24日の報道(NHK)では、対象となる約3600万人のう自らち、1回目を終えた人は6%、2回目を終えた人は0.5%となっています。野洲市でも今日から高齢者のワクチン接種の予約が再開されましたが、2回目の接種は8月に入ってからになっているそうです。

 しかも変異ウイルスの感染と被害は、若年層にも及んでいる。インド型変異ウイルスの感染によるクラスターも確認され出しており、高齢者だけのワクチン接種目標だけでは心もとない。全人口の接種率では2%強の状況。前途は遠い。

コロナ対策がオリンピック・シフトで動いている

 緊急事態宣言による新型コロナウイルス感染防止対策やその一環としてのワクチン接種の目的はいうまでもなく、国民の健康と命を守ること。そして、一刻も早く国民の生活と社会経済活動を正常に戻すことです。ところで、そこで並ぶ話題が東京オリンピックの開催問題。政府もIOC(国際オリンピック委員会)も開催を堅持しています。

感染防止対策は上述のとおり、国民のためのものです。しかし、これまでの緊急事態宣言の期間設定の経緯、また高齢者のワクチン接種完了を7月末という厳しい期限に設定し、見通しが危なくなると自治体に任せておけずに、国自ら接種に乗り出す。この背景には、オリンピックの開催という目的があります。言いかえれば、オリンピック・シフトで動いている。

祭典が開けるか、これは先の判断でなく、今の想像力の問題

 IOCは緊急事態宣言下での開催もありといっている。国際的に見ればロックダウン下ではないのだからそう見えるのかも知れなません。しかし、日本の制度ではこれが最高度の規制。

しかし、国内的に見れば、その規制が発令されているなかでの開催は国民の理解が得られない。となれば、オリンピック開会前のある程度の時期には緊急事態宣言が解除された状態にもっていかなくてはならない。

私も個人的にはオリンピックを楽しみにしているし、反対ではありません。しかし、国内のワクチン接種率、インド型変異ウイルスの感染などの状況から、素人なりに客観的に見て、想定されている6月20日までの緊急事態宣言解除後の感染状況は予断を許さない。セーフティネットのない綱渡りに近い。これまた素人から見てもその半月後にまた緊急事態宣言発令のリスクが想定される。

 さらに、新型コロナウイルス感染によって亡くなった人が今日時点で1万2517人。このなかには、医療崩壊により本来であれば助かった命も多い。オリンピックが開催されると仮定して、その時点でも感染によって重症の人、また、命を落とすもゼロの想定は困難。交通事故で亡くなる人がいるではないかという議論も出てくるかもしれないが、それは話のすり替え。

 首相自らが国難として対処している状況のなかで祭典が開けるのか。これは先の判断でなく、今の想像力の問題だと思います。