栢木市長が自ら市長に訴訟  

 先日ネットを検索していて、栢木市長が市に対する訴訟の原告団の一員であるらしい情報に偶然行きあたりました。

 きっかけは病院整備に関して住民監査請求が出されたとの報道が先般あり、その関連情報を検索をしたこと。報道では、栢木市長が駅前新病院の設計業務委託などを中途解約し、成果物を受けていないのに清算金4256万円を払い、市に損害を与えたとして、その賠償を求める請求が出された。

 この件に関してもう少し情報を求めてネット検索しました。市のホームページでは、市監査委員事務局からのお知らせとして、住民監査請求の受理を5月14日に決定したこと。請求の要旨、また請求人等の陳述聴取を6月15日 午前11時から公開で行うことなどが掲載されていました。検索を続けていると、栢木市長が就任前に行った驚くべきことの情報が引っかかりました。

栢木市長が市に対する訴訟の原告団の一員 原告住民側の会合写真の中央に現栢木市長の姿  

 その訴訟とは、201812 月起こされた駅前の野洲市民病院整備事業に関する住民訴訟です。ネット情報は2019年9月13日付けで、「住民訴訟原告側の定期会合」と題して、「野洲市民病院公金支出差止等請求事件訴訟の第5回口頭弁論が昨日12日大津地方裁判所であり、終了後原告住民側の定期会合が開催されました。」との記述。そして10人ほどがテーブルを囲む宴席前の情景の鮮明な写真が付いています。その中央で手ぶり盛んに話しているのは、現栢木市長。記事の終わりの方には、「来年10月の市長選挙について改めて栢木進氏の立候補が席上確認されました。」とまで。ブログの記者は、「原告住民側とは一定の距離間をとっていますが、先日取材の受入招待をいただき情報収集の為、傍聴者としてお伺いしました。」と自分だけが部外者であると断っているところからすると、訴状に名前を連ねているかどうかは別にして、栢木市長は原告側であるとみられます。また、原告住民側の会合で立候補が確認されたということは、選挙に訴訟を利用しようとしたことにもなります。さらに、この会合で、2件目の訴訟の予告もされています。

病院事業は経済的観点から合理性に欠け、必要性ないと主張 経済的、合理性という言葉は市長の口癖

 2018年9月 に出された野洲駅前の病院に関する住民監査請求が認められなかったため、同年12 月7日 に訴えが提起されました。その後、病院事業に関しては同じ原告からもう1件の訴訟が提起され、関連するのでその後一体での審理となっています。

 訴訟の概要については、昨年12月に「突然消えた明日の証人尋問」と題して書きましたので詳しくは触れません。まとめて簡潔に言うと、1件目が駅前病院の設計業務を基本設計業者に随契したことなど。2件目は、駅前病院の事業差し止め。また市立病院開院に当たって旧民間病院の施設等を無償譲渡受けたこと。旧民間病院に対する市の債権を放棄したこと。さらに市の弁護士費用が高額であることなどです。

 訴えの根拠は、駅前の野洲市民病院整備事業が、経済的観点から、合理性に欠け、必要性がないこと。だから、違法または不当であるというもの。経済的、合理性という言葉は、まさに栢木市長の口癖です。その根底には「野洲病院を活用するべきであること」という基本的な考え方があります。

 この裁判は、原告の事情ということで遅れに遅れ、遅々として進んでいませんでした。ようやく設定されていた昨年12月の証人尋問も突然消えました。原告が延ばしているのか、被告が伸ばしているのか、その後半年弱、まったく動きがない。証人尋問の段階まで行きながらこの状態は極めて異例です。

栢木市長は原告側か被告側かどちらの利益を優先するのか? 典型的な利益相反 

 この野洲市が受けている裁判、弁護士費用など訴訟費用は市の税金です。また職員が職務として携わっている。早く決着をつけないと市の負担が増します。

 そのことに加え、裁判の構図としては、人格としては違いますが、栢木市長が原告側と被告側の両方に関わっていることになる。栢木市長は原告側か被告側かどちらの利益を優先して訴訟に当たるのかが、深刻な問題です。典型的な利益相反です。これでは裁判は進まない。

「野洲病院を活用するべきである」を根拠に訴えている限り現地建替え「不可能ではない」と言い張らざるを得ない 

 さらに、問題が出てきます。

 栢木市長は個人として、「野洲病院を活用するべきであること」を根拠に、駅前の野洲市民病院整備事業が、経済的観点から、合理性に欠け、必要性がないから違法または不当であると野洲市を訴えている。これは公約と同じです。

 ところが、訴えの根拠であり、公約でもある「野洲病院を活用するべきである」が、評価委員会で崩れてしまった。しかし、そのまま認めると訴訟が維持できないので、今でも「不可能ではない」と思っていると言い続け、コロナ対策のために断念したとすり変えざるを得ない。

市長は原告側として訴訟の負け材料作りできない 結果として市長は原告側に立っている

 もう一方の駅前市民病院建設も同じです。駅前病院事業の差し止め訴訟を起こしながら、事業を進めることは矛盾する。現地建て替えが不可能になったことだけでも訴訟に不利。駅前を認めることは、原告側の栢木氏としては、訴訟に負ける材料を作りに行くことになります。だから、市長としては議会や市民活動団体が駅前病院を求めたとしてもそれに応じるわけにはいかない。出口は郊外しか残されていない。この構図で見るかぎり、結果として市長は、市の側でなく、原告側に立っていることになります。市の側から見れば背任的な行為となる恐れも。