パリ協定への米国の復帰 日本も2013年度比46%削減する新たに高い目標 

 バイデン米大統領の主催で「気候変動サミット」がオンラインで開催されました。「地球の日(アースデイ)」に合わせて4月22、23日の2日間の日程で、世界40カ国・地域の首脳が参加。

 バイデン米大統領は初日に米国が2030年までに温室効果ガスの排出量を2005年比で50─52%削減するというこれまでと比べると大胆な新目標を発表し、主要排出国の取組みの強化を促しました。また、気候変動対策が世界中で雇用を生み経済効果も高まる。温室効果ガスの排出量の実質ゼロを目指して革新的な技術への投資が必要であるなどと強調しました。

 世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をすることを骨子とするパリ協定への米国の復帰を宣言し、印象づけるとともに、気候変動への行動を今後の米国外交の中心に据えることの表明でもありました。日本は菅首相が2030年度までに日本の温室効果ガス排出量を2013年度比46%削減する新たに高い目標を示しました。カナダも2005年比4045%減へ引き上げる目標など、各国が積極的な姿勢を示し、気候変動外交の次元が一段上がったかのような印象を与える場となりました。

新型コロナウイルス対策と同じく、生活、経済、産業などあらゆる面に厳しい影響 

 中国に次いで温室効果ガスの排出量が多い米国がパリ協定に復帰することだけでも大きな成果。加えて、中国、ロシアなどとも強調しながら米国が気候変動対策のリーダーシップを発揮していこうとする動きは、待ったなしの課題解決にとっては大きな前進です。

 しかし、手放しでは喜べない。米国ホワイトハウスのメッセ―では、「気候変動対策が雇用を創出し、全ての社会と労働者が新しいクリーンエネルギー経済の恩恵を受ける。」となっていますが、そのためにつぎ込まれる努力やあえて言えば犠牲が伴います。だから米国の前大統領はパリ協定から離脱した。

 日本もこの10年間に2013年度比46%削減という野心的な新目標を表明し、「米国との極めて重要な連帯」(ニューヨーク・タイムズ)と評価されているが、相当な努力と犠牲が必要。その道筋は明らかにされていないし、国民の間に当然共有化されていません。以前書いたように、これからも温室栽培の美味しい果物や野菜を食べ続けられるのか。また、水道水で車を流し洗いできるのかといったことまでが問われてきます。

 今喫緊の課題である新型コロナウイルス対策と同じく、温室効果ガス削減対策は生活、経済、産業などあらゆる面に、そして場合によっては厳しい影響が及びます。

気候変動対策は必要であり、時間的余裕ない 軍縮条約の轍を踏まない取組み必要

 気候変動対策は絶対必要であり、時間的な余裕がないことはいうまでもありません。また悲観的になっても仕方がありません。しかし、今回のイベントを見ていると、100年前のワシントン会議(1921~1922年)でのワシントン海軍軍縮条約からはじまってその後ロンドン海軍軍縮会議(1930年)へと続く国際的な軍縮の取組みのことが頭に浮かびました。日本はその後、1933年3月国際連盟を脱退し、1936年条約は失効。世界の軍備拡張は続き、第二次世界大戦に至ります。その後も、世界的な軍備拡張の流れは続いてます。この轍を踏まない取組みと覚悟が必要です。