五月雨式に「重点措置」が適用され、さらに適用要請が目白押し

 以前に「まだ『重点措置』? 」の標題で書きました。

 感染力が格段に強い変異ウイルス感染が拡大しているからには緊急事態宣言であるべきだという意図から。この措置制度は、今年2月の改正特別措置法で既定の「緊急事態宣言」に加えて新しく設けられた制度。にわか作りの制度設計による、宣言との明確な違いが分かりにくい中途半端な制度。しかし、なんらかの隠れた狙いがあって、設けられたものだと思っていました。

 4月5日に大阪府などに「重点措置」が出されて以降も全国的に感染が拡大。それに従って、五月雨式に「重点措置」が適用され、さらに適用要請が目白押し状態になりつつあります。大阪府に限ってみても14日は1130人の新規感染者が確認され、最多を更新しています。医療崩壊も起こりつつある。普通に見て「緊急事態宣言」の段階を超えています。大阪府の吉村知事も「緊急事態宣言」の要請に言及しだしている。

「全国的な大きなうねり」となってからでは遅い 火事場にはまず最大限の消防車が駆け付ける 

 現在の状況を見ていると、これが狙いだったのかと思われてきます。要するに、事態を小さく見せかけるため。現に夕方のテレビニュースでも「新型コロナウイルスの感染状況について、菅総理大臣は参議院本会議で『全国的な大きなうねりとまではなっていない』と述べたうえで、地域を絞った措置を機動的に講じることで感染拡大の防止に全力を挙げる考えを強調しました。」(NHK)報道されています。

「全国的な大きなうねり」となってからでは遅い。火事場にはまず最大限の消防車が駆け付けます。小出しの対策では、火元はもちろん、類焼、延焼を防げません。

政策判断の初動誤りを認めがたい習性 習性を制御し、冷静な日常的判断を

 このような状況になっている理由は、いくつかあると思います。ひとつには、既に議論されているように、東京オリンピック・パラリンピックへの配慮。あと100日。聖火リレーも大阪府は一般の観客を入れない形ではあるが万博記念公園で行っている。「宣言」であれば困難になります。

 もうひとつの理由は一般的なことですが、政策判断の初動誤りを認めがたい習性によるものだと思います。当初から少なくとも大阪府には「宣言」だったとしても、一旦「重点措置」を出したからには、早々に切り替えるわけにはいかない。当初の判断の適正さを問われることになるから。そして、大阪府が「重点措置」であるあいだは、五月雨の後続自治体にはそれを超えて「宣言」は出せないとなります。後続の知事たちも「宣言」でなく、「重点措置」を要請していることが不思議です。しかし、感染の拡大という自然現象は人為の習性には配慮してくれない。

 以上書いてきたことは、冷静な日常的判断からはすぐにわかることです。政策判断の影響が判断者本人だけに限定されるのならまだしも、広く国民に及ぶことであるからには、習性を制御して、冷静な日常的判断が求められます。