自宅の近くでも桜が一気に花開きました。そのうえ、石楠花の花までが。

クラッシックでもかつては作曲者は演奏家であり指揮者

 いずれ聴こうというつもりでずいぶん以前に買ってあった、作曲家の自演集を合間を縫って一気に聴きとおしました。『Composers in Person(コンポーザーズ・イン・パーソン)』。CD22枚のセット。2008年に、それ以前にシリーズとして出ていたものをまとめたもの。オリジナルはCDケースがそれぞれ作曲家の姿のスケッチと写真が入っていますが、セットではすべて楽譜とメガネのスケッチのものになっているところが惜しいところ。

 自作であっても作曲家が最上の演奏家とは限りませんが、やはり、作曲者自身の演奏は貴重であるとともに、楽しいものです。クラッシックでは過去の作品を演奏して楽しむのが一般的なので、作品と演奏は別と思いがち。しかし、いうまでもなく、バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、ショパン、マーラーなどいずれも演奏家であり指揮者でした。

歴史的ということにこだわらず、中身が新鮮で楽しめる

 このセットに収められている作曲家は、録音が残っていることからして当然ですが、19世紀半ばから20世紀後半に生き、活動した作曲家です。没年が最も遅いのは、長寿であったオリヴィエ・メシアン(1908-1992)。演奏と録音時期は1920年代から50年代にかけてですが、グラナドス(1867-1916)のピアノ曲「スペイン舞曲Op.31」と「ゴイェスカス」にだけは記録がありませんが、作曲年と没年からすると1910年代になります。いずれも古い音源ですが、リマスターされているので、ほとんどのものが歴史的ということにこだわらず、中身が新鮮で楽しめます。

プロのピアニスト、ショスタコーヴィチの奔放な演奏

 どの作曲家と演奏が良いとかの比較になじむものでなく、どれも十分楽しめますが、聴いたなかでは、ショスタコーヴィチ(1906-1975)の自作演奏。なかでも『ピアノ協奏曲第1番(ピアノ、トランペットと弦楽合奏のための)ハ短調Op.35(1933)』(1958年5月パリ録音)は奔放で楽しいと感じました。この曲には前年1957年のモスクワでの演奏録音もありCDになっています。それぞれ趣が違うところが楽しめます。ショスタコーヴィチは20世紀を代表する作曲家のひとりですが、第1回ショパン・コンクールに参加し、ピアニストを目指していました。1922年に父親が亡くなり、家の経済状態が厳しくなったころはしばらく映画館でピアニストとしても働いています。その意味でもプロのピアニストでした。

「時代遅れの」CDの便利さを実感

 これらのCDのいくつかは、ネットのストリーミング・サービスで聴けます。ライブ以外での音楽のメディアとしては、ラジオやテレビ放送、CDやアナログレコード、そしてストリーミング・サービスと多様になっています。いまやストリーミング・サービスがCDやアナログレコードと並ぶようになってきて、そのなかでアナログレコードがCDを上回るようになっている。しかし、1枚に70分以上収められたCD22枚、これをアナログレコードで手元において楽しもうとすれば大変なこと。また、ストリーミング・サービスも流し聞きには便利でも、曲や作曲家を目指して聴こうとする場合は結構煩雑。その意味では、「時代遅れの」CDの便利さを改めて実感しました。