緊急事態宣言解除 総合的判断なら「大丈夫だ。」と答えない方が正確 脅威と課題を直視

首都圏1都3県の緊急事態宣言 21日で解除されることが決定されました。しかし、明るい展望があるわけではない。解除の理由を新規感染者数は減っていますが、昨年末Go Toでアクセルを踏んでおきながら、緊急事態の宣言時期を失した結果最悪に近くなった状態から見たら改善しただけ。菅総理大臣も自ら指摘しているとおり、「リバウンドも懸念されている」なかでの解除です。

 今日3月19参議院予算委員会の集中審議では「今、解除してしまって、本当に大丈夫なのか」と野党の質問に対して、菅総理大臣は「大丈夫だ。感染状況や医療提供体制などを踏まえ、総合的に判断することになっている。」と答えています。宣言はもとより国政の最高責任者としてはやむを得ない答えであるとは思いますが、筋が通っていない。総合的判断ということは、感染状況とか医療体制の面だけで判断していない。生活と経済の面も考慮の要因だということでしょう。そうであるなら、「大丈夫だ。」と答えない方が正確です。この言葉で国民が安心できるとも思えないし、総理大臣も自ら負えない責任を負う羽目には至りません。いま私たちは新型コロナウイルス感染症という大きな自然の脅威と平常時でも難しい経済の再生と生活の安定という課題に立ち向かっているからです。

何が「大丈夫」なのか?

ここまでは前置きです。本題はこれから。まず、「大丈夫だ。」から入ります。国会委員会でのやり取りの「大丈夫」は感染症の拡大のことなのでしょう。しかし、菅総理大臣も専門家会議も口をそろえてリバウンドの懸念示している。とすれば感染症拡大のことではない。それなら、生活と経済の面のことかとなります。しかし、こちらも営業の時短要請などが継続されるようだし、「まん延防止等重点措置」の実施も口にされています。したがってこちらの方も改善のめどは全然立っていません。では、何が「大丈夫」なのか?

社協で特例貸付の貸し渋りなどの実態

生活福祉資金貸付制度特例貸付の貸し渋りなどの実態が報道されています。

「新型コロナウイルスで収入減となった世帯に生活費を支援する特例貸し付けをめぐり、各地の社会福祉協議会(社協)で貸し付け希望額の減額を求めたり、貸し渋ったりするケースが相次いでいることが16日、生活困窮者支援団体への取材で分かった。申請件数がコロナ流行前と比べ約170倍に激増する中、団体関係者は「現場の対応が追い付いていない」と批判している。」(時事通信)

この特例貸付は厚生労働省の既存の制度を新型コロナウイルス感染症対策として拡充して運用されています。貸付対象世帯を従来の低所得世帯から休業や失業等により生活資金で困っている世帯に拡大するとともに、据置期間と償還期限を大きく延長。窓口は市区町村社会福祉協議会。

過去の借入返済の余裕はない 波紋の谷と同じ

昨年2月27日(金)の夕刻、安倍晋三総理が突如、次週3月2日から学校の臨時休業を行うよう要請しました。新型コロナの感染が拡大し不安が増すなかで、これでは就労や生活にもすぐに影響が出ると懸念して、当時野洲市では職員の提案で、まだ制度拡充前でしたが、特例貸付の申請者に対し貸付が完了するまでの間のつなぎ資金として、1世帯3万円の現金を給付金として支給することを制度化しました。ギリギリの状態で自立している家庭では、例えばいきなり学校を休校されて家で子供の面倒を見るため、働けなくなれば、生活に支障をきたします。一刻も早く現金が必要となります。ただし、野洲市の場合は学校も園も実質は開けて、希望者全員受け入れて給食出しましたが。

その時職員に問いかけて議論したのが、貸付金の問題です。生活が厳しい人たちは、借りても返すことは困難。仮に社会経済が正常に戻って、働いて収入が得られるようになっても、過去の借入までを返す余裕は一般的に出てこない。波紋が広がっていっても、最初に出来た谷がいつまでも消えないのと同じことです。

国の特例貸付でも、特例措置で返済時に住民税非課税世帯であれば返済を免

除することができるとはされています。しかし、それは依然厳しい状況にいるということが前提です。

返済が心理的圧迫 滞納含め社協の事務負担も過大 本格的支援は支給型に 

また、借り入れは、当然ですが、返さなければならないという心理的な圧迫感が常に付きまとい、ただでさえ厳しい生活を苛みます。もちろん、貸付制度の有効な場合もある。しかし、モラルハザードは避けなければなりませんが、実質的には一方通行の支給型でしか有効な支援になりません。

それと、これも昨年春に議論したことですが、社会福祉協議会の業務負担が過大になる。最後まで、社協できちっとやれるのかという問題です。職員の能力の問題ではなく、制度と体制の面で。申請受付から貸付までの手続きはもちろん、その後の債権管理と回収。特に滞納整理です。国が作ったQ&Aには「本貸付は公費を財源とするもので、償還(返済)が必要な制度です。」と書いてあります。当然ですが、想定以上の業務です。さらには、最終的な未回収金の負担と処理の問題も出てきます。社会福祉協議会だけを責めても問題解決になりせん。

応急の既存制度の拡充で、ここまでしのいできましたが、本格的な支援制度としては、特例貸付と並行して、支給型で新設が必要です。生活は事業ではないので、返済に関して同じようには行きません。