今日3月16日の市議会『野洲市民病院整備事業特別委員会』、家族が傍聴に行ったので、状況を聞き、資料もみました。別室での傍聴だったので録音記録も聞きました。最初の感想は、これは病院を整備するための議論ではない。

駅前病院計画が動く転機となった2015年12月議会と自治連合会との意見交換会 今日の会議は転機の可能性を秘めていない

まず思い出したのは、2015年(平成27年)12月18日に野洲市自治連合会の主催で開催された、市議会と市自治連合会との意見交換会。市ホームページにも簡略な記録がまだ残っています。この1月余り前、11月5日の臨時議会で新病院関連予算案が賛成8、反対9、退席1で否決。市は、度重なる議案否決を受けて病院整備計画の断念を表明。その直後、反対討論もしないでは否決理由が分からない。このままでは中核病院の整備が止まり、市民が混乱することは憂慮すべき事態であるとして、市自治連合会が議会に意見交換を提案して会議が持たれました。

会議には全自治会長の約3分の2の59人、議員19人が出席。自治会長側が、特に否決に回った議員1人1人に理由を確認しました。すると、それまではそもそも市内に病院は要らないと言っていた議員までもが、病院は要る。ただし、ということで、議会で述べなかった反対理由をようやく、それぞれ述べだしました。理由は、公立病院は大半が赤字だから、病院計画の収支計画に納得できない、市の財政が心配、民間の野洲病院を耐震化したらできる、駅前は商業活性化すべきなどでした。

この会議は何かの結論を出す目的のものではありませんでしたし、その後も同じ議員構成のもとでは議案否決が続きました。しかし、大きな分岐点になりました。その2年後の市議会議員選挙で反対議員が落選したり、支援がまとまらず立候補できなかったりした結果、病院反対の議員は約3分の1を割り込みました。これ以降、2017年12月から駅前病院計画が実質的に動き出すことになりました。

しかし、今日の会議はこの時のような熱気と迫力が感じられず、何かの転機になる可能性を秘めているようには、残念ながら受取れませんでした。

市長は当時否決議員のひとりとして意見交換会に参加 当時の反対理由から進展なし その結果市民に展望ない

今日の委員会でも、荒川泰宏議員が10年経っても杭1本も立ってないと、根拠にならない駅前反対理由を述べていました。栢木市長も鸚鵡返しに同じ理由を繰り返していました。議会で否決を繰り返しながら時間がかかったことを反対の根拠にする。他人の衣の裾を足で踏みつけておきながら、立ち上がれないその人を叱るようなものです。

当然、この話し合いの場には栢木市長が否決した議員のひとりとして参加していました。

今日の委員会の情報量が期待していたより少なかった分、前置きが長くなりました。個々に議員は頑張って、工夫して質問していましたが、市長からはこれまで以上の答えは引き出せていません。上に書いた、約5年前の意見交換会での当時の栢木議員や立入三千男議員などの駅前病院反対理由から進展していません。その結果、市民には展望が開かれていません。

 

市長の考えを改めて整理する 公約を反故に

市長の考えを改めて整理すると次のとおりです。

1.   現地建替えは不可能ではないが、コロナ禍のもとでは現地は無理と考えている。

2.   駅南口は税収を得るところであり、病院整備は反対。選挙で約束した。

3.   市民は早い病院整備を願っている。

4.   今後の方向性として、フラットに一団の市有地を上げただけ。その場所で病院をつくれるかどうかも分からない。これから課題をあげ、調査検討進める。

 以上から見ると、公約違反の論理が変わってきています。従来の「いち市民」の「私案」から、可能であるがコロナ禍を理由に無理という論理に。工藤義明議員と野並享子議員が公約が実現できなかったことを追及し、市長は謝罪のようなことを口にしていましたが、上記の論理で公約違反の責任回避をしようとしている。

 駅南口での病院整備反対は論理でなく、本人も言っているように信念。駅前が嫌だという市民が多かったと言っているが、単なる印象にすぎない。

 今後の方向性については田中陽介議員が的確に指摘していたとおり、実質、土地のリストだけでは方向性にならない。土地を決めてから構想を練るのではまともな病院はできない。野並享子議員が食い下がっていた、工期短縮のため設計(Design)と施工(build)を一括発注するデザインビルド方式についても、市長は、市民の意見や要望は設計前に入れるとか基本構想段階で入れるとか相当乱暴なことを言っていた。

 総事業費120億円の駅前病院反対と何度も言っていたが、市長は自ら幾らで整備する意向とも答えなかった。半額の公約も現地建替え同様、反故にしつつある。

無駄に言葉が転がり、時間が過ぎていくだけ 市民代表としての市議会の役割に期待

 このような今日の委員会の結果からは、先にも言ったように新病院整備に向けての展望が開けてきません。そもそも、過去の経緯を正確に把握し、的確な現状認識を踏まえようとしない市長の姿勢では、幾ら信念があっても、現実は動かない。無駄に言葉が転がり、時間が過ぎていくだけです。

あとは、田中陽介議員や山崎敦志議員が言及していたように、今議会において当初予算案や総合計画議案の審議と採決にあたっては、組換えや修正を提案する決意で臨むこと。ここに至っては、市民代表としての市議会のそこまでの役割が期待されているように思います。

それと、今日の委員会、あれで議論が出尽くしたのか?そうでなければ、あれほどたくさんの傍聴があったのだから、延長してでも到達感が得られるところまでいかなかったことが惜しまれます。