調査と処分自治体での一般的レベルから最先端とは言い難い 

 総務省は幹部らが放送関連会社から度重なる接待を受けていた問題で、昨日2月24日、調査結果と接待を受けた職員の処分を発表したことが報道されました。調査結果は幹部職員11人が受けた接待の金額を含めた概要。処分は国家公務員倫理規程に違反していたとして、減給や戒告などの処分。

 調査の方法や処分の基準は、「任命権者」である総務大臣が定めている手続きや基準に基づき行われたはず。公務員の身分は守られており、恣意的な判断はあってならない。したがって、部外からの論評に馴染みませんが、自治体に対して技術的助言ができる省庁ということから見ると、残念ですが現在の自治体での一般的なレベルからすると最先端とは言い難い感が否めません。

国民の側に立って事実を確認するという問題意識を持った調査かどうか 

 調査は犯罪を前提とする強制調査ではないため限界はありますが、報道からは、本人聞き取りが主なもの。いわゆる裏がとられていない。また、接待が設定された目的や参加の動機も明らかになっていない。接待した側が利害関係者であったとの認識がなかったということで済まされているのかと思います。利害関係者かどうかは別として、普通はよほど近しい家族でない限り数万円の食事代をもってもらうことはない。その意味で、大臣として国民の側に立って事実を確認するという問題意識を持った調査かどうかが問われます。

人事院の『懲戒処分の指針について』のどれに該当?

 処分も調査をもとにされたものなので、国家公務員倫理規程に違反したレベルで判断されたのだと思います。公表基準は公表されていますが、処分の基準は、総務省のいわゆる内規であるため、個々の処分の軽重は外部で判断できません。

 ちなみに、人事院のホームページを覗くと『懲戒処分の指針について』(平成12年3月31日職職―68)(人事院事務総長発)最終改正: 令和2年4月1日職審―131という文書がありました。冒頭は次のようになっています。

 「人事院では、この度、懲戒処分がより一層厳正に行われるよう、任命権者が懲戒処分に付すべきと判断した事案について、処分量定を決定するに当たっての参考に供することを目的として、別紙のとおり懲戒処分の指針を作成しました。

 職員の不祥事に対しては、かねて厳正な対応を求めてきたところですが、各省庁におかれては、本指針を踏まえて、更に服務義務違反に対する厳正な対処をお願いいたします。・・・」

 これに続いて「標準例」として、「1一般服務関係」、「2公金官物取扱い関係」と順次区分された事例が上がっています。職務外は「3 公務外非行関係」として、放火、殺人、傷害、暴行・けんか、器物損壊、横領、窃盗・強盗、詐欺・恐喝、賭博などが列記されていますが接待を受けるあるいは金品を受け取るという項目はない。人事院の文書は指針であるので、総務省ではどうなっているかは分かりません。

首相と国民との接点を担う重要な特別職への対応は残念 信頼高めるチャンスを逃す 

 今回の総務省の処分で、在職中であれば国家公務員倫理規程に違反していたため対象となる山田内閣広報官は、既に退職して特別職公務員であるため対象とはなっていません。総務大臣が任命権者でないという意味で、制度上これは当然のことです。しかし、さまざまに議論されているように、山田内閣広報官は、今、一市民・国民でなく、ある意味で総務省職員よりも権限と責任の重い公務員。首相と国民、また国外との接点(インターフェイス)という極めて重要な役割を担っています。

 しかし、山田氏は給与の一部自主返納で終わっています。山田氏の処分を厳しくすると総務省幹部の処分に影響するという議論もありますが、特別職と一般職は異なります。世論を気にした恣意的な処分は絶対に避けなければなりませんが、今回の処分なき対応は組織運営上からも健全とは言えない。特別職ですから多分懲戒処分基準はないはず。客観的、総合的な判断から責任ある判断が出来たのではないか。市民感覚、井戸談義からしてもストンと落ちない。このような対応になったことには何かそれなりの理由か支障があったと推測されますが、いずれにしても結果から見ると、今回のピンチを転じて、信頼確保のせっかくのチャンスが活かされなかったことは残念です。