報道内容から見て問題点と懸念は多く、多様で事態は深刻

 総務省の幹部職員が放送関連会社勤務の菅首相の長男から接待を受けていた問題が連日国会や報道をにぎわわせています。まだことの全体像が明らかではありませんが、報道されている内容から見てもことは深刻。憤りとともに、心配、そして情けない思いがしてきます。

報道内容を繰り返すまでもないので、あまりにも多様な問題点と懸念の主なもの列記します。

1. 公務員が許認可権にかかわる相手から度重なる接待を受けていたこと

2. 総務省という同じ組織の複数の公務員、それも幹部職員が関わっていたこと

3. 接待によって総務省が行った許認可行為がゆがめられている恐れがあること

4. 国会で質問されても誠実に答えないどころか虚偽の返答をしたこと

5. 国会で一段の証拠を突き付けられて事実を認めるざるを得なくなっても、先の虚偽返答を記憶力不足を言訳にしていること

6. 今回の事件が個別事件か氷山の一角なのかということ

7. 国家公務員倫理法に基づく倫理規程を待つまでもなく、なぜこのような接待を受けたのかということ

8. 安全保障機密でもないのに首相、総務大臣など政府が情報開示と説明に消極的であること

9. 本来は政府組織のなかの規律・法令順守(コンプライアンス)が機能すべきなのに週刊誌の取材と報道に頼らざるを得ない状況であること

ことは規程違反にとどまらない

 上の整理を前提に、あらためて、今回の出来事の筋を抜き出すと、総務省の幹部職員が同省が許認可権を持つ利害関係者によって度重なる接待を受けていた。これが国家公務員倫理法に基づく倫理規程に抵触する可能性があるということ。許認可がゆがめられたかどうかまではまだ分かりません。

 倫理規程に抵触についてはすでに職員が相手は利害関係者であると認めているため、その可能性は高い。しかし、ことは規程違反にとどまらない。倫理規程は2000年(平成12年)にできています。そのもとになる国家公務員倫理法は1999年(平成11年)に。そのきっかけは、その前年1998年(平成10年)に社会を騒がせた大蔵省接待汚職事件です。

国家公務員倫理法の機縁となった大蔵省接待汚職事件との違いが核心 政治の健全化と信頼回復に だれが率先して解明に 

 20年余り前のこの汚職事件は財務省の前身にあたる大蔵省職員が金融機関から今回と同様度重なる接待を受けていたもの。大蔵省はじめ計7人もの公務員等が逮捕・起訴に発展。起訴され、執行猶予付きの有罪判決を受けています。責任を取る形で当時の大蔵大臣と日銀総裁の辞任。その他100人以上の人が処分され、自殺者も出ています。財務と金融を分ける大蔵省解体のきっかけにもなりました。大蔵省事件ほどの接待漬けとまではいかないとしても公務員が利害関係者から度重なる接待を受けていたという面では今回の事件も同様です。

 しかし、似ているようで似ていない点もあります。これだけの幹部職員がそろって初歩的な間違いを犯すことは通常考えられない。そこが恐らく今回の事件の核心であり、その解明と改善が政治の健全化と信頼回復の要となると考えます。そしてもうひとつ肝心なことは、まず、だれが率先して解明に取組むかです。