追い波去っても進路定まらない 問題は組織自体の駆動力と制御力

 東京五輪・パラ組織委問題は会長辞任で落着し、船長が表れて進路が定まるかと期待していました。しかし、残念ですが、まだ進路が定まらない模様。追い波は去った。今の問題は組織自体の駆動力と制御力の問題が露呈しているのではないかと心配です。

 ところで、この間の野洲市の病院問題とも共通点があります。端的に言えば、人権・密室性・意見が言えない、少なくともこれら3つの点。

人権・密室性・意見が言えない組織体質 意見言えれば軽微に収まったかも JOCの問題でも

 組織委の方のことは改めて述べるまでもなく、人権に関しては、会長による女性差別発言。そしてその背景にある、組織委はもとよりスポーツ「界」にある両性の対等な参画が欠けていること。

 密室性に関しても報道されているとおり。11日の夜、会長が後任者を選定し後任者も受諾したとの報道に接して、まさか「家業」でもあるまいしと思った。その後、当然のごとく密室批判が起こりました。密室であるとともに、それ以上の問題として、ルール違反。コンプライアンスの欠如です。この後継人事のことは武藤事務総長もあらかじめ知っていたとの報道もあり、根深いものかも。

 そして、意見が言えないという状況。そもそもの森会長の発言は、日本オリンピック委員会(JOC)の臨時評議員会に名誉委員として出席して行ったもの。JOCの山下会長も含め同席者のだれもが、その場で森氏の発言を制止したり訂正を求めなかった。もし、その場で訂正等が行われ議論が一回りしていれば、森氏にとってはもちろん、組織にとっても事態はここまで深刻にならなかった。

 差別発言時に訂正等の議論がなかったのは、出席者の誰もが発言に問題を感じなかったからではなく、恐らく意見がいえる雰囲気ではなかったからではないか。逆に言えば、意見が言えれば、森氏も救われ、組織も学習し健全化のチャンスがあった。結果からすれば、東京五輪・パラ組織委だけの問題でなく、会議の場であったJOCの問題でもあります。

 最後に述べるように、間違っていれば、その場で正すことの学習と訓練がされてこなかったのか。

野洲市病院問題 人権・密室性・意見言えない 自治体では発言等が間違っていれば、その場で正すことを学習してきたはず

 野洲市における病院の現地半額建替え検討問題については改めて詳しくは必要ないと思います。ここでの人権問題は、主権者である市民にまったく非公開で議論が進められていること。市民の代表である市議会議員に対しても秘密のよう。極めて異常な事態です。ここでは、人権・密室性の問題が一体になっています。

 もう一つの問題である、意見が言えないことについて。このような進め方について職員、検討会の委員、さらには市議会議員の誰かからおかしいのではないかと意見が出てもよさそうなもの。しかし、そうならないのは、意見が言えないという暗黙の了解か規制が働いているからではないか。このままでは、東京五輪・パラ組織委やJOCと同様に問題をかえって深刻にするのではないかと心配です。先に書いた琵琶湖文化館問題なども同様な雰囲気で議論が進んでいるのではないかと心配です。開かれた自由な議論が確かな成果を生みます。

 少なくとも滋賀県の自治体と教育現場では、過去半世紀、同和対策や障がい者の権利擁護で、発言やことの進め方が間違っていれば、その場で意見を発して議論し、正すことを学習し、訓練してきたはずです。