あらかじめ想定される問題 小さな町での医師不足 

 昨夜遅めに帰宅してニュースを見ようとテレビをつけました。途中からでしたが、新型コロナワクチンの接種の小さな町での問題のレポート。人口5千人前後の町で医師が数人、町によっては1人というところも。そこでのワクチン接種見通しが立たないことに担当者や医師が悩んでいるという内容。

 報道は北海道東部の町のことでしたが、全国をみればこの地域に限った問題ではないと思います。報告のまとめとして、複数の町が連携してやるなどの対応が必要などといった専門家のコメントがありました。しかし、それぞれの町で住民すべてにできるだけ早く接種するという今回のような場合には連携は機能しません。また放送のなかでも町の面積が広いため、共同接種を検討しているところはないとのこと。これらの問題は当然あらかじめ想定されるものです。

「医療計画」の策定の権限と責任を負っている国と都道府県の役割は?

 これを見て「医療計画」の策定と実施の権限と責任を負っている国と都道府県の役割はどうなっているのだろうと思いました。この計画は医療圏、病床数、病院、診療所、薬局等の機能、医療従事者の確保などを定めるもの。

 もちろん国際競争のなかでのワクチン確保も大仕事。またその配送や財源確保も重要な仕事です。そして、令和3年1月25日の「新型コロナウイルスワクチンの接種体制確保について」厚生労働省の自治体説明会資料には「新型コロナワクチンの予防接種の実施計画を各市町村において検討し、策定する。」と明記されている。そうは言われても、人と施設両面で医療体制が整っている前提での話。体制整備は上記のとおり国と都道府県の医療計画に基づく役割のはず。

医療計画の見直し着手は必要だがワクチン接種に間に合わない

 これまでの医療計画では今回の新型コロナウイルスのような健康、医療はもとより社会経済にまで多大な悪影響を及ぼす感染症の発生と蔓延は想定外であった。

 厚生労働省「医療計画の見直し等に関する検討会」の『新型コロナウイルス感染症対応を踏まえた今後の医療提供体制の構築に向けた考え方』(令和2年 12 月)には、次のとおり記されています。長くなりますが、医療計画の説明も兼ねて引用します。

 

「はじめに

 地域の実情に応じた医療提供体制の確保に関しては、各都道府県において、

「医療計画」を策定し、5疾病・5事業及び在宅医療ごとに、必要となる医療機能や各医療機能を担う医療機関等を定めるなどして、医療連携体制の構築に向けた取組を進めるとともに、

「地域医療構想」を策定し、病床機能(高度急性期・急性期・回復期・慢性期)ごとに、2025 年の医療需要と病床の必要量を推計した上で、地域医療構想調整会議において協議を進めるなどして、将来の医療需要を見据えた病床機能の分化・連携に向けた取組を進めているところである。

○ こうした中、今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、我が国の医療提供体制に多大な影響を及ぼし、局所的な病床・人材不足の発生、感染症対応も含めた医療機関間の役割分担・連携体制の構築、マスク等の感染防護具や人工呼吸器等の医療用物資の確保・備蓄など、地域医療の様々な課題が浮き彫りとなっている。」

小さな町の担当者が悩んだり苦労しないで済む支援が当然必要

 想定外であったことはやむを得ない面もあると思います。しかし、過去の見直しが根底では以前書いた公立病院再編と軌を一にしている点は報道された小規模自治体の困惑に通じていると思います。

 必要な量のワクチンが確保されたとしても、最先端の自治体で希望する人たちすべてに約束どおり接種ができなければ事業は完結したことにならない。そこまでの目届きも国と都道府県の役割だと思います。

 3年前の国民健康保険の運営を市町村単位から都道府県単位になった制度改正も医療と保険の権限と責任を一体化する趣旨が含まれていました。

 小さな町の担当者がこのようなことで悩んだり苦労しないで済むようになることを期待します。高齢者や障がい者などの接種会場への移動問題も含めて。