今日はここ数日間と打って変わって日差しも暖かな冬日でした。昨日は湖北長浜の丹精込めた盆栽の梅花でしたが、自宅の庭先の梅の木の南向いた枝が俄かに開き始めていました。

 真冬らしくない穏やかな日差しのなかでこの標題が浮かびました。専門家ではないのでもちろん精緻な論は展開できませんが。

新型コロナウイルス対策の特別措置法や感染症法の改正が議論 ポイントは罰則設定

 新型コロナウイルス対策の特別措置法や感染症法の改正が議論されています。今国会でできるだけ早く成立の予定。ポイントは罰則を設けるかどうか、また設けるとしてもどのようなレベルにするか。報道での概要は次のとおりです。

 特別措置法の改正案では、緊急事態宣言前でも、都道府県知事が事業者に対して営業時間の変更などを要請でき、立ち入り検査や命令もできるようにする。

 この改正の上にたって、知事命令に応じない事業者に対して行政罰として過料を科す。金額は緊急事態宣言が出されている場合は50万円以下、宣言が出されていない場合は30万円以下。また、立ち入り検査を拒否した場合にも20万円以下の過料。

 一方、感染症法の改正案では、知事が感染者に宿泊療養などを要請できる規定を設ける。要請に応じない場合入院の勧告を行い、それでも応じない場合や入院先から逃げた場合、こちらは刑事罰として、1年以下の懲役または100万円以下の罰金を科す。このようなものです。

罰則設定の理由は端的に言えば宣言の実効性高めるため 理由は理解できるが

 罰則の設定に至った理由は理解できないわけではありません。端的に言えば宣言の効果が現れていないので、実効性を高めるためということだと思います。

 私なりに嚙み砕いていえばこうなります。1月7日の首都圏1都3県に続き大阪府など7府県、合わせ11都府県を対象に緊急事態が宣言されました。しかし、感染者数はじめ重傷者、死亡者数などは減らず、また病院、病床を含め事態は深刻さを増す一方。さらに宣言に基づいての要請の効果が事業者の協力や市民の行動に現れていないということがあるからだと思います。宣言の効果が感染者数の減少に現れるには約2週間かかるので、判断にはまだ早い。しかし、事業者や市民の対応に変化が現れない限りは感染者数の減少に結びつかない。その意味では、次に打つ有効な手立ては、ムチとしての勧告、命令、罰則という論理になったのだと思います。

罰則で事業者や市民の対応を促す効果が得られるか 逆に応じた本人にマイナスが生じないか 

 いうまでもなく、罰則を設ける目的は知事の要請に応じた事業者や市民の対応を促すこと。したがって、論点は罰則によって効果が得られるかどうか。それと、逆にマイナスが生じないかということです。

 これについては今後国会での深い議論が期待されますし、専門家の議論も大切です。とりあえず、私なりに整理してみます。

 まず、ほとんどの事業者や市民は罰則を待つまでもなく、要請に応じた対応をしますし、現にしています。それではなぜ一部の人が応じないのか。その理由がきちっと把握されているのかどうかが問題です。

 いわゆる確信犯としてなにがなんでもという人、また要請の科学的根拠なり合理性に疑問をもって応じないという人がごくわずかいると思います。しかし、実のところ大半は、応じたい意向はあるが、応じると生活が成り立たないなどやむを得ない理由を持っている人ではと推測されます。この応じない大半の人が罰則の効果で応じるようになるのかどうか。そして、もし無理をして応じた場合、本人の事業や生活はどうなるのか。

要請に対応できるよう支援を優先する方が生産性高い 野洲市の生活再建優先型の滞納整理を参考に

 もし、上に述べたような状況判断があたっているなら、罰則は期待された効果を生まないし、逆効果にもなる。ここで以前にも紹介した野洲市が行っている、税などの滞納整理にあたって取立てよりは生活再建優先で債権を回収し、成果を上げているしくみが参考になるのでとは思います。払える状況にない人にいくら強制力を働かしても効果はなく、かえって事態を悪くします。一見回り道に見えますが、滞納者の生活再建を支援する取組みと同様、業者や市民が要請に大きな無理をしないでも対応できるような支援を優先する方が生産性は高いと考えます。コロナウイルス感染症とその影響でみんなが不安で苦しんでいるときには、なおさら有効性が高いと思います。

ムチはあってもアメがない 厳しい制度改正は国民映り良くない 政治への信頼につながらない心配

 それともう一つ気になることが。先ほど罰則設定のことをムチと表現しました。予定されている法改正ではムチはあってもアメが用意されていません。アメは別に補正や新年度予算で用意される給付金などがあるとは思います。しかし、制度改正では厳しい一方で、国民から見た映りは良くない。また、感染症法の改正案は感染して入院を希望しても自宅待機を余儀なくされている人が多数いる現状とチグハグの感があります。これで、改正の趣旨が伝わらず、政治と政策に対する国民の信頼感が高まることにつながらないのではと心配です。

 あと実務上で心配なことは、罰則の設定はいかにも勇ましく効果がありそうに見えますが、実際の適用と執行には相当の手間暇がかかる。誰がどこでそれを担うのかということも、本論ではありませんが、見通しが必要です。

 国会での精緻で深い議論を期待して、ここではとりあえず梅を見てのスケッチとして。