電力供給問題は寒波に加え、火力発電の施設と燃料の問題 太陽光発電の発電量も低下

 先週末から電力の需給が大変厳しい状況であることが報道されていま。その後も寒波はおさまらず、北部では降雪が増え、それに伴って週明けも需要は増えています。

 そのため、管内電力使用率が一時、99%に達した電力会社もあります。それぞれ社のホームページには「昨年 12 月下旬以降、全国的に厳しい寒さが続いており、例年に比べ、電力需要が大幅に増加しております。1月8日には、西日本を中心に全国 7 エリアで最大需要が 10 年に1 度程度と想定される規模を上回りました。一方、供給面では、悪天候により太陽光発電等の発電量が低下する日も少なくありません。」という共通の書き出しで可能な範囲での節電協力を呼びかけています。

 経済産業大臣、記者会見で、電力需給がひっ迫している暖房の利用などふだんどおりの生活を続けつつ、電気を効率的に使ってほしいと呼びかけたと報道されています。ただし、国として節電を要請するという質問に対しては、現時点と断りつつ、効率的な電気の利用対応できる状況あり、節電要請までには至っていない」と、国民の不安を煽らないよう配慮しつつ、今後のことに触れない微妙な答えをしています。

 今回の電力供給の問題は異常な寒波による急激な需要の増加に供給が追いつかないことですが、供給面でも天候不順で太陽光発電による電力供給の低下していること。さらには、火力発電の施設と燃料、特に燃料のLNG(液化天然ガス)など燃料供給が国際的な複合状況のなかで困難さが高まっていることにもあります。このことについても「海外からの追加調達(輸送)には時間がかかることや、全国の需給状況も厳しく、今後も厳しい寒さが続くようであれば、電力需給のさらなる悪化も想定されます。」とさらりとではありますがきちっと今回の節電協力のお知らせのなかで触れている電力会社(関西電力)もあります。

カーボンニュートラル2030年ガソリン車廃止ビジョンを掲げるには現状との整合性ある工程表を

 前置きが長くなりました。電力需給のひっ迫は心配ですが、もうひとつ気になったことがあります。温暖化対策との関係です。

 昨年末「2050 年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を公表しました。令和2年 12 月 25 日付けの資料には「自動車は、電動化を推進する。欧州の一部の国やカリフォルニア州ではガソリン車の販売の禁止が相次いで打ち出されるなど、自動車の電動化は、想像以上のペースで進んでいる。日本は、この分野でのリーダーを目指さなければならない。遅くとも 2030 年代半ばまでに、乗用車新車販売で電動車100%を実現できるよう、包括的な措置を講じる。商用車についても、乗用車に準じて 2021 年夏までに検討を進める。・・・」と書かれています。これは菅首相の昨年10月26日開会の臨時国会の所信表明演説における、国内の温暖化ガスの排出を2050年までに「実質ゼロ」とする方針表明を受け、取組みが加速されたものです。

 これら一連の動きが、昨年12月初めの2030年ガソリン車禁止もが大きな報道になりました。これと前後して、東京都の小池知事も都議会での代表質問において、2030年にガソリン車を100%禁止する意向を示しています。こうなると私たち市民・国民は既定路線のように思ってしまいます。私もそうですが、車の買い替えサイクルが長くなっていますから、乗り換え時期のことにまで心配が及ぶ人も出てきます。

 しかし、今回の電力需給のひっ迫と今後の見通し、その一因でもある天候不順による太陽光発電による電力供給の低下、また年末年始に起こった大雪での自動車の大渋滞といったことを見ると、10年か15年先のビジョンの実現可能性のイメージになかなかつながりません。太陽光発電など再生可能エネルギーの拡大は重要です。しかし、日本の近世で最大の飢饉とされる「天明の大飢饉(1782年~1788年)」は、引き続いた天候不順に1783年4月の岩木山火山噴火の7月の浅間山の噴火による日射量の低下による冷害が原因のひとつでした。太陽光発電の場合こういったリスクも見ておかなければいけません。

 先にも書いたように感染症対策、温暖化対策、そして厳しい状況にある人たちの暮らし対策いずれも待ったなしです。2030年半ばガソリン車廃止という個別課題をとってみても、ビジョンを掲げるには誠実で精緻な工程表が必要です。