しばらく前から比叡山延暦寺を訪ねてみたい思いが募っていました。先に、山陽路のお寺、なかでも姫路の書写山圓教寺にお参りした後ではよけいに思いが強くなりました。

今日は天気が和らいで安定しているようなので出かけました。できることなら坂本から徒歩で法然堂を通って延暦寺会館の裏手に出る山道を登りたかったのですが、長い間登っていないことと、何日か前に雪が降ったこともあり、諦めました。あとは坂本ケーブルかドライブウェイになります。歩いて登る場合は東塔だけのつもりでしたが、そうでないなら横川までゆっくり回りたいと思い、車にしました。

駐車場からは先に大講堂に至ります。

根本中堂10年間かけての大改修中で、文殊楼からのお堂の雄姿も叶いませんが、内部はお参りができます。戒壇院も改修中でした。

阿弥陀堂東塔の端正なたたずまいです。

琵琶湖を挟んで東に三上山が霞んで見えました。かつて東光寺の伽藍群があったという伝えも分かるような気がします。

西塔では常行堂・法華堂(にない堂)を通って本堂である釈迦堂に下っていきます。

伝教大師最澄の御廟がある浄土院はその名のとおり清澄なたたずまいです。

横川中堂は約50年前に鉄筋コンクリート建築で復元再建されたものですが、奥山の自然と一体となって舞台づくりの素晴らしいお堂です。本尊の聖観音菩薩像は気品と怜悧さのなかに妖艶さを秘めたような奇麗なお姿の仏像です。

恵心堂は恵心僧都源信が『往生要集』や『二十五三昧式』などを著わした旧跡に建てられたお堂です。源氏物語にちなむ場所でもあります。

第十八代天台座主の慈恵大師良源(元三大師)の住まい跡に建てられたお堂、元三大師堂。奉納された大きな大津絵の額が興味を引きました。

「おみくじ」と「たくあん漬け」の元祖といわれています。

根本如法塔は時代は新しいですが美しい姿です。

澄んだ青空と澄んだ冷気のなかで心が広がり、かつエネルギーが喚起される1日でした。

根本中堂前の石碑に彫られている、最澄の「一隅を照らす」の言葉で良く知られている『山家学生式』が時代を超えて今をも照らしていることに改めて気づかされました。

『山家学生式』最澄

国宝とは何物ぞ

宝とは道心なり

道心ある人を

名づけて国宝と為す

故に古人の言わく

径寸十枚是れ国宝に非ず

一隅を照らす

此れ則ち国宝なりと

 

古哲また云わく

能く言いて行うこと能わざるは国の師なり

能く行いて言うこと能わざるは国の用なり

能く行い能く言うは国の宝なり

三品の内唯言うこと能わず

行うこと能わざるを国の賊と為す

 

乃ち道心あるの仏子

西には菩薩と称し

東には君子と号す

悪事を己に向かえ

好事を他に与え

己を忘れて他を利するは

慈悲の極みなり