発展と保全の対立項を共存させるために工夫された便利な考え方 

今日の野洲市議会定例会最終日本会議のネット中継を傍聴してこんなことを考えました。

現在、環境はもとより企業活動や福祉など様々な分野で取組みが進められているSDGs(続可能な開発目標)の続可能な開発(発展)という考え方は、1950年から60年代に急激に進んだ自然・環境破壊とそれによる人の健康と命への影響を食い止めるための世界的な動きから生まれたものです。1972年に「かけがえのない地球 」をキャッチフレーズにしてスウェーデンのストックホルムで開催された国連人間環境会議がひとつのきっかけになっています。

農薬など化学物質の危険性を訴えたレイチェル・カーソンの『沈黙の春』が出版されたのはこの10年前の1962年。1950年代から発生した水俣病の第一次訴訟で原告勝訴の判決が下されたのは翌年の1973年でした。公害問題のただなかでした。このような状況のなかで編み出された考え方です。そして、国連の「環境と開発に関する世界委員会」が1987年に発行した『地球の未来を守るために』と題された報告書では中心的な理念とされて、便利な考え方として世界的に広まりました。具体的には、「将来の世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、今日の世代のニーズを満たすような開発」とされています。そして今後の技術と社会組織の発展と改善が経済発展と貧困の解消、よりよい生活をもたらすとしています。

 

手段に使われたのは時間と技術開発 最終的な効果は未検証 気候変動として表れ

この考えかたは経済発展で生じた自然・環境破壊や公害を発展と保全という対立項としないで折り合わせる、ことばをかえれば共存させるために工夫されたものです。

言いかえれば経済・社会・環境を調和を図るための概念です。その手段として使われたのが時間と技術開発です。先進国では公害問題は過去ことのように見えていますが、続可能な開発が本当に有効性は検証されていません。当時、時間と技術開発に委ねたものが、いま気候変動として表れてきているともいえます。

経済発展と気候変動 新型コロナウイルス感染防止と経済再生 共存のための手段は?

経済発展と気候変動をどう折り合いをつけるかは2015年の「パリ協定」に委ねれていて私たちの取組みにかかっていますが道のりは険しいものです。そして、いまもうひとつの世界的な課題である、新型コロナウイルスの感染拡大防止と経済の再生、またもっと身近なことで言えば、生活のための接触と感染防止もいずれも譲れない必要なものですが簡単に両立できない状況になっています。しかし必ずや両立の道を早く見つけなければなりません。ただし、時間という手段は使えず、距離と技術開発という組み合わせになるのでしょうか。

野洲市病院問題 折り合いつける手段の見通しは? 時間はかなり厳しい

そして、最後に今日市議会で議論された市の病院の現敷地案と駅前案です。一見、同じような対立項に見えます。しかし、駅前病院の設計業務を当面継続するとしても、こちらには両立はありえません。2つも病院は要りません。こちらの課題の折り合いには、時間、距離、技術開発、あるいはそれ以外のどのような手段の組み合わせによる解決が期待されているのでしょうか。現状からみると時間はかなり厳しいと思われます。