先に、自民党の教育再生実行本部の「30人学級の推進」を求める決議などを引きながら、来年度の国の予算編成に反映され、実現の見通しが立つことへの期待を書きました。今日文部科学相と財務相が21年度予算案の折衝で公立小学校の1学級あたりの上限人数を引き下げて全学年で35人とすることで合意したとの報道がありました。来年度から2025年度までの5年間をかけて、小学校2年から毎年1学年ずつ段階的に引き下げる計画とのことです。来年の通常国会で義務教育標準法の改正を目指すことになっているようです。

30人でなく35人であることや5年間をかけてであるなど完ぺきではありませんが、教員の確保、施設整備、財源などの課題を考えると大きな進展です。また、文科省側がもっていたとされる、今後10年間の児童生徒数の減少に伴う教職員定数の減による余剰人員をあてにした少人数学級の実現という控えめな志向からも大きな展開です。

施設整備も視野にも評価 教育効果検証の必要性は否定しないが、慎重に

義務教育の現場にはこれも先に書いたように、少人数学級の早期達成以外にも課題が累積しています。今回の小学校学級の定員の一律引き下げが40年ぶりであることからも改革の緩やかさが推測されます。教員の確保とあわせてたちまち必要となる施設整備については、文科大臣が、国と自治体との協議の場を定期的に設け、少人数化による教育効果の検証や教室整備など必要な支援策を講じるとしたと報じられていますから考慮に入っていると思います。ただし、先にも触れたように現行では文科省の補助金、交付金制度が基準額等も含めて十分でなく、教室整備などで結果的に自治体に負担がかかるのではないか心配です。

それと文科大臣のコメントで気がかりなことは、少人数化による教育効果の検証です。折衝のなかで財務省が「政策効果」が明らかではないと難色を示していたことへの対応あるいは配慮だと思います。税をもとにした貴重な財源をあてるからには当然費用対効果は必要です。ただし、少人数学級は教育を本来の伸びやかで健全なものにするための必要条件のひとつであって、十分条件ではありません。他の必要条件の整備と相まって効果が出るものです。ましてや40人から35人です。教育効果の検証の必要性は否定しませんが慎重な対応が必要です。