久しぶりに大原美術館のコレクションが見たくなったので出かけてきました。あわせて、思いつくままに山陽路を楽しんできました。

大原美術館と児島虎次郎

エル・グレコの受胎告知の素晴らしさはもちろん、モネ、ルノワール、ゴーギャン、ルオーなどそれぞれ1,2点ずつですが、オリジナルが常設でゆっくり楽しめることは貴重です。それぞれの作からは、言葉を介しないでこちらにエネルギーが伝わってきます。今回訪れての気付きは、これまでうかつにも美術館の立ち上げ時に作品の収集にあたった画家だという程度の認識しか持っていなかった、児島虎次郎の偉大さに気づかされたことです。絵画作品も優れているし、キュレーターとしても高い使命感と力量を持っていたことが改めてよくわかりました。適切な言い方かどうかわかりませんが、良く創る者が良く選ぶ、といった感じです。

この美術館の素晴らしさは、いわゆる西洋美術だけではなしに、古代中国やエジプト、インドなどの美術品、また濱田庄司、富本憲吉などの陶芸作品まで、幅広く造形芸術の品々と出会えることです。

倉敷市の美観地区も相変わらず心地よく、その維持の努力に改めて心打たれました。

 

明王院の五重塔と草戸千軒町

福山市草戸町の国宝の端正な五重塔がある明王院まで足を延ばしました。高速道路を降りてから国道2号の渋滞には閉口しましたが、中心街を通り抜けて芦田川にかかる橋を越えて堤防の道路を少し南下して愛宕山の麓の寺院着きました。市街地から離れていませんが、山寺の趣です。大同2年(807)弘法大師の開基の伝がありますが、鎌倉時代末期に再建された本堂と室町時代前期の五重塔が国宝に指定されています。五重塔というと奈良、京都の寺院を思い浮かべますが、ここの塔は時代は下りますが、同様に見事な建築です。今は面影がありませんが、鎌倉時代から室町時代にかけて瀬戸内海の港町として栄えた草戸千軒町の文化の水準と経済力が偲ばれます。このことは、隣接の勇壮で特異な社殿の草戸稲荷神社にも表れています。

滋賀県の文化・美術館はどうなる?

帰ってきて、ネットでニュースを見ると、県立美術館の名称を変えるとか県立琵琶湖文化館の「後継施設」の立地を「びわ湖を望む素晴らしいロケーションで交通アクセスも良好な『大津港港湾業務用地』を軸に」と県議会で答弁したことが報じられていました。琵琶湖文化館は、言うまでもなく、琵琶湖の文化を主題にした施設ではありません。「びわ湖を望む」必要があるのかどうか、また、湖辺は、基本的に建物をなくして開放空間にする方針であったはずです。迷走かご都合主義にならないことを願っています。