完璧な他人

 

月食の始まりと共に、隠れていた秘密があばかれる。

ブラックユーモアの傑作。

 

 

〈あらすじ〉

豊胸整形医のソクホ(チョ・ジヌン)と精神科医の妻・イェジン(キム・ジス)の新居である高級マンションに集まったかつての仲間たち。

メンバーは亭主関白の弁護士カン・テス(ユ・ヘジン)と貞淑な専業主婦スヒョン(ヨム・ジョンア)の夫婦、新婚のイケメン社長コ・チュンモ(イ・ソジン)とその妻セギョン(ソン・ハユン)夫妻、新しい恋人を連れてくるはずが1人での参加となった教師ヨンベ(ユン・ギョンホ)。

久しぶりの再会を喜ぶ彼らは、あるゲームを始める。

それは携帯電話に来る電話、メール、カカオトークをすべて強制的に公開するというものだった。

次々とスマホに届く着信やメールにより、和やかだった夜は一転して修羅場へと化していく。(参考:ウィキペディア「完璧な他人」)

 
よくできたお話だなあと思っていろいろ調べてみると、なるほど。
これは、イタリアのアカデミー賞にあたるダビッド・ディ・ドナテッロ賞で作品賞・脚本賞を受賞した「おとなの事情」が原作。
驚くことに世界18か国でリメイクされたという。
こうなると原作のあらすじと比較してみたくなって、ネットをあさった。
なんと。
イタリア人から韓国人に変わっただけで、大筋はほとんど同じ。
でも、そこは韓国だから。
 
 
★ネタバレしてますので、未視聴の方はご注意ください。
 
 
○見どころ
・月食がもたらした謎の時間
映画の冒頭、34年前に遡る。
5人の男の子は湖で月食を見る。
そのとき、「月が赤くなると呪いにかかるって」と誰かが言っていた。
この5人とは、ソクホ、テス、チュンモ、ヨンベ、そしてスンデ。
34年後、スンデを除く4人、そしてヨンベ以外の3人の妻たちとともに、月食の日に合わせた食事会。
 
イェジンが"ゲームをしない?"とみんなに持ちかけた。
スマホにかかってくる電話、メール、カカオトーク一切を公開しようというもの。
いくらやましいことがあっても、やらないなんて言うと墓穴を掘ることになるから、みんな、嫌々ながらに参加する。
タイミングよく、メールや電話が次々に入る。
感動の一場面あり、いたずらでヒヤヒヤする場面あり。
しかし、ほんとに、とんでもない事態が起こってしまった。
そして、月食天体ショーのフィナーレは、もう収拾がつかないほど荒れまくったテス夫婦、チュンモ夫婦の修羅場。
が、どうだ。
月食が終わるとなぜかいつもの夫婦に戻っていた。
というか、捨てセリフを残してみんなの前から消えたはずのスヒョンとセギョンが、何事もなかったかのように、それぞれの夫を車に乗せて帰路につく。
テスは、浮気相手のパジャマ姿を見ているし、チュンモは、不倫相手からの「会いたいわ」メールに、「俺もだよ」と答え、証拠隠滅をしている。
まるで、ゲームなんてやってなかったかのように。
そう、ゲームははじめから実行されていなかった。
 
・ユ・ヘジンの立ち位置
ユ・ヘジンはボケキャラだったのね。
見ているときは何の面白みも感じなかったけど、キャプチャーした画像を見返してみると、あの真顔でボケを連発していたことがわかる。
劇場ではユ・ヘジンのセリフが大爆笑だったとか。
思うに、ユ・ヘジンとコントを交わしたユン・ギョンホの突っ込みが単調だったからか。
 
 
・食事会に集まったそれぞれの秘密
まあ、揃いも揃っていろんな悩みを抱えていたこと。
30年来の友人でも、なかなか言えないんだろうな。
 
独身の体育教師ヨンベは、ゲイ。
恋人が男だから、みんなの前に連れてこれなかった。
 
豊胸整形医ソクホは、不動産投資詐欺にあってた。
ソクホが投資までしてお金が欲しかったのは、病院を拡張したかったから。
それというのも、妻の実家にいつまでも認めてもらえない悔しさがあったのだろう。
 
事業家チュンモは、別の女を妊娠させたことが発覚。
 
妻セギョンに送られてきたメールもなかなか際どかった。
勃起しないのは、愛犬だったけど・・・。
 
弁護士テスは、熟女から毎日のようにパジャマ姿の画像メールがくる。
妻スヒョンは、テスの行動に違和感を抱いていた。
それで、自身も派手な下着をつけることで憂さ晴らしをしていた。
 
・イェジンの視線の先に注目
やたらイェジンを捉えるカメラワークが気になっていたが、最後まで見て理解できた。
なるほどねえ。
イェジンとチュンモは不倫関係にあった。
だから、チュンモの言動に反応するイェジンをカメラが追っていたのだ。
イェジンはチュンモに家に来てほしかったんだろうな。
だから、食事会という名目で堂々と招待した。
チュンモからもらったピアスをつけ、手料理を食べさせる。
二人にしかわからないような秘密の"間"を楽しむ。
しかし、チュンモは遊び慣れている男だ。
決して危ない橋は渡らない。
イェジンの熱い視線を適当に受け流し、若い美人妻といちゃつく。
まあ、それは、不倫がバレないための防備策ともとれるかな。
 
しかし、イェジンの誤算は、チュンモに別に女がいて、彼女から妊娠したという電話が入ったこと。
イェジンがピアスを外し、チュンモをひっぱたいた時点で、えっ、まさかと思ったけど。
でも、イェジンは大した女だ。
よくよく見ると、一人だけカミングアウトしていない。
 
 
○考察
このレビューを書くに当たり、エンディングの謎解きに必死になった。
こんなに考えたのは、最近でいえば「ミスティ~愛の真実~」以来かなあ。
イタリア原作のあらすじによると、「月食が見せた幻」とまとめている。
だけど韓国リメイクが違うのは、34年前の子ども時分に「月食の呪い」と伏線を張っているところ。
こういうとこ、うまいよね。
そして、おそらく、韓国リメイクの特長は、ゲームをしなかった理由をはっきりと示し、そこから「完璧な他人」というタイトルを引き出したことかな。
 
ゲームをしようとイェジンが言った時、すぐにソクホが怪訝な顔をした。
「君が秘密をもっていないか心配なんだ」
ソクホはカウンセリングも受けていた。
イェジンは最近綺麗になったし、近々、豊胸整形もする予定だ。
女が変わる時は何かある?!
「ピアス買ったの?」ってソクホが尋ねた時、ああ、知ってたんだろうな、っ思った。
 
携帯電話は情報のブラックボックス。
そこには、公的な情報、プライベートな情報、そして、秘密の情報がある。
秘密の部分に立ち入って、知らなくてもいい部分を知ってしまうと、自分も傷つく。
だったら、お互いのことをそんなに知らなくてもいい。
「完璧な他人」って、そんな意味なのかな。
そうよね。
昔はこんな簡単に情報が手に入らなかったから、何かと秘密も持ちやすかった。
時には知ってしまった秘密でも、知らないふり、他人のふりが必要なときもある。
いや、それも我慢できればの話だが。
 
ここで終わってもよかったのに、最後の最後はテス夫婦。
スヒョンがロングシャツの寝間着姿でテスの寝室に来る。
テス夫婦は、1年前の妻のひき逃げ事故をテスが身代わりで罪を被ったことを引きずっていた。
テスはそのことで、免許取り消しとなった上に、弁護士が加害者側に立つことになった。
その屈辱は相当なものだったろう。
スヒョンは罪悪感で辛い日々を送ってきた。
テスはスヒョンから逃げ、別の女に走り、スヒョンはブログの世界に浸った。
 
だけど、やっぱりテスも男なんだね。
57才が着るキティのパジャマ姿よりは、ロングシャツのほうが男は好きよね。
完全に目が蕩けているし。はは。
ユ・ヘジン、最後の爆笑シーン。
 
 

画像はNetflixさんから引用しました。画像が全体的に暗いです。

 

 

●hito基準による評価(10点満点)

泣き又は感動1(3点満点)

没頭度2(2点満点)

爽快感1

脱力感1

ストーリー1

胸きゅん度又は嵌り度0

メッセージ性1

7点

 

 

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