ガール・コップス

 

こういう娯楽映画が、実は物凄く社会風刺してたりする。

そこを感じ取ってしまったが最後、これをどう文面に表すか自分との闘いだった・・・。

ただ、言えることは、ラ・ミランとイ・ソンギョンがこの映画の目的を理解し、全力で臨んだ。

そして、この映画の意義をわかってくれた俳優が、カメオ出演してくれた。

私はそう理解した。

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https://mottokorea.com/mottoKoreaW/mFunJoy_list.do?bbsBasketType=R&seq=82342

 

 

〈あらすじ〉

警察の女性刑事機動隊で活躍してミヨン(ラ・ミラン)は、結婚出産後は市民の苦情を取り扱う課に異動させられる。

息子と無職の夫を抱えながらも平穏な日々を過ごすミヨンだったが、義妹で熱血刑事のジヘ(イ・ソンギョン)が、トラブルを起こした末に同じ課に配属され状況が一変する。

性格の異なる二人は家でも職場でも常に衝突。

そんなある日、一人の女性が署に駆け込んでくる。

彼女はアダルト動画サイトに3日以内に自分の動画を拡散されると脅されていた。

ミヨンとジヘは事件を解決すべく手を組む。(RAKUTEN TV「ガール・コップス」より)

 

 

この映画は、2019年5月に公開された。

その時、ラ・ミランは44歳。

まるで、イ・ジョンジェの「ビッグマッチ」を見た時と同じくらい感激した。

痛々しいほどのアクションシーン。

設定としては、カリスマ的女性機動隊。

だから、並みの男よりは全然強い。

でも、やっぱり強い男にはコテンパンにされる。

大袈裟かもしれないけど、ミランさんは主演作であるこの映画に、女優生命を賭けて全身全霊で挑んだのだろうと思う。

 

 

さて、ガール・コップス関連の記事を漁っているうちに、こんな記事にたどり着いた。

https://news.livedoor.com/article/detail/16489369/

 

「魂を送る運動」

これは、映画作品に対する支持を表明するために、最前列や隅のほうなど人気のない座席を購入する運動らしい。

上記記事によると、この運動は韓国映画「ガール・コップス」の公開がきっかけだったという。

ガール・コップスは文字通り女性警察官のお話で、コメディ要素も強い娯楽映画だ。

だけど、ただの娯楽映画じゃないからこそ、前述の「魂を送る運動」のような現象が起きてしまったのだ。

 

 

自虐的なネタが多い韓国映画やドラマだが、そういう類の作品は、概して事実に基づくフィクションが多い。

そして、そういう類の作品からは、強い制作意図が窺える。

日本統治時代、南北朝鮮問題・・・。

私がメッセージ性が強いものを好んで見るのは、制作意図やそこに参加した出演者たちの意気込みに感動するからだ。

さて本作だけど。

ラ・ミランら女性警察官が挑むのは、自殺しなければならないほど悲惨な女性に対する性犯罪行為。

 

韓国の時代劇を見ていると、王室を除き、両班を頂点とする身分制度がある。

そして、どの身分の中にあっても、女たちへの差別的な扱いがある。

これは、特に朝鮮だけが特別なわけじゃないし、日本でも大して変わらないかもしれないけど、韓国映画やドラマでは実際そのように描かれているのだ。

いつの時代にも女は男の慰みものとして扱われてきた。

それが、高度経済社会になった今日でさえ、女をむさぼる男の姿が描かれる。

しかも、

デジタル社会になってさらに厄介になった。

仮想であるゲームの世界に慣れ親しんだ若者たちは、仮想と現実の区別がマヒしているのか、インターネットを介して、女をおもちゃにしている。

自分たちの顔にはモザイクをかけて。

韓国芸能界でもいろいろあった。

この映画が公開される前後には、ある有名なK-POPグループのメンバーも摘発された。

https://www.kk-bestsellers.com/articles/-/10881

 

さらに、今年に入り、陰湿な「N番ルーム事件」なるものが浮上した。

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/03/snsn.php

 

こうした社会現象を嫌悪する人々が、この「ガール・コップス」をきっかけに「魂を送る運動」を始めたのだろう。

あまりにも同じ韓国人として恥ずべき行為。

だけど、出口の見えないサイバー犯罪に、どう抵抗していいかわからない。

「魂を送る運動」のきっかけとなった「ガール・コップス」とは、韓国社会に一石を投じた映画と理解した。

 

 

劇中、ミヨンの家のテレビが報道しているのは、女性の投身自殺のニュース。

 

なにげなく、問題提起をしている。

ミヨンは、過去、表彰歴もある女性刑事機動隊の刑事だった。

韓国社会にはびこる女性への犯罪が社会問題となり、こうした女性刑事が育成され、男顔負けの風俗店取り締まりなども行っていた。

 

 

結婚して、女性刑事機動隊を辞め、今は警察署の相談窓口にいるミヨンのもとに、一人の若い女性が現われた。

通報を・・・と言いながら、スマートフォンを差し出すが、署に連行された若い男たちの姿を見るなり、怯えて外に駆け出す。

様子がおかしいと追いかけたミヨンの目の前で、車道にふらりと飛び出し、トラックにグシャンとはねられた。

 

 

この女性は、女友達に誘われてクラブに行き、そこで知り合った男性4人から個室に誘われる。

男たちは言葉巧みに高級酒を飲ませ、香水に混ぜた新種の薬を嗅がせる。

そして、女が意識朦朧となると別室でレイプ。

男たちは会員制サイトを運営する組織の幹部で、「"いいね"3万で動画公開」と会員に煽る。

レイプされてしまった女性は、動画公開が怖くて警察署に通報に来たものの、周りの目が気になり、ついには心が折れてしまう。

 

サイバー犯罪に詳しい相談窓口事務官のヤン・ジャンミ(スヨン)はこう言う。

 

ネット社会により、復讐のために性的な写真や動画を公開したり、盗撮動画を公開したりするタチの悪いデジタル性犯罪が横行している。

男の顔はモザイクで隠し、誰がしているかわからない。

いいね3万で公開するのは、サイトの会員を増やすためだ。

会員制のような閉鎖的なサイトは動画の拡散を阻止しやすいが、これが他のサイトに転載されたら捜査がむつかしくなる。

 

これがつまりは、韓国社会の現状なのだろう。

 

サイバー犯罪捜査隊、強力班の刑事、そして、女性青少年課の職員にもお払い箱された3人の女性警察官が、非公式で犯罪組織に挑む。

 

 

テーマは深刻だが、物凄くコメディだ。

ジャンミは、まるで協奏曲を弾くようにキーボードを操り、防犯映像をハッカーする。

鬼室長から職務怠慢により減点3点を言い渡され、気分を害すジャンミ。

すかさずジヘは、「強力班の新人を紹介する!」

ジャンミの目が光る。

 

 

ジヘはまずは盗撮魔から情報を仕入れようと、とあるホテルに出向く。

そこのカウンターにいたのが、ハ・ジョンウ。

うそっ!

「ここに変な客はいないか」と尋ねるジヘ。

「ここは変な客だらけだ」とジョンウ。

 

ハ・ジョンウ、イ・ソンギョン、そして、盗撮魔の3人の絶妙なコント。

 

 

この盗撮魔、ミヨンが昔捕まえたことのある、ビビるとおしっこを漏らす男だった。

本作は、やたら小便とか、大便とか、下痢とか、ラ・ミランやイ・ソンギョンにセリフとして言わせる。

それだけ、男勝り=口の悪い女 って構図を見せたいのだろうか。

このびびり男によると、被害女性が嗅がされた麻薬は、ブタの発情誘起剤に麻酔薬を混ぜた新種で、名前は"マジック・パフューム"だと。

ブタの発情誘起剤って・・・

こういうとこ、韓国だなあと思ってしまう。

 

 

ミヨンとジヘは敵地に乗り込み、組織に加担する外国人たちをボコボコにしたものの、主犯の男らには歯が立たず、倉庫の柱に括られ、あわや焼死させられるところだった。

傷心して署に戻ったジヘがついにキレる。

 

 

そこに眠狂四郎と化していた強力班班長がついに目覚める。

それがこの人。

予期していなかった、ソン・ドンイル演じるチーム長の登場だった。

ハ・ジョンウにしろ、ソン・ドンイルにしろ、なんてニクイ演出。

 

 

さらに、どんでん返し。

そのチーム長に"チャノク先輩"から電話が入る。

その"チャノク先輩"こそが、3女史を目の敵にしていた総合相談窓口室長だった。

彼女もまた、ミヨンと同様、元女性刑事機動隊の一員だった。

チャノク室長は、ジャンミから事情をすべて聞き、事件の捜査に協力する。

こうして、強力班、交通課も捜査に加わり、一気に加速。

チャノク室長の陣頭指揮が頼もしい。

 

 

あとは、ミラン、ジヘがどう主犯の男をやっつけていくか。

それは見てのお楽しみってことで。

主犯の男チョン・ダウォンを演じたのは、ドラマ「いつも奢ってくれる綺麗なお姉さん」でソン・イェジンの弟役だったウィ・ハジュン。

「コインロッカーの女」や「金子文子と朴烈」にも出てた。

 

 

いろいろ粋な演出がしてある。

ジヘはカリスマ刑事だったミヨンに憧れて刑事になった。

映画の冒頭、ミヨンが小便を漏らさせるほどビビらせた一連のセリフがあるが、終盤、ジヘがそっくりそのまま再現する。

イ・ソンギョン最高の見せ場。

 

 

今回、ラ・ミランの冴えない夫で、しかもイ・ソンギョンの実兄という設定で登場したユン・サンヒョンだが、ここまで徹底してコメディにしなくてもよかったのになあ。

 

 

最後は、ジヘとミヨンの技で爽快に終わり~。

 

 

●hito基準による評価(10点満点)

泣き基準1(3点満点)

没頭度2(2点満点)

爽快感1

脱力感1

ストーリー1

胸きゅん度0

メッセージ性1

 

7点

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