天命の城

 

丙子の役そのものを知らずに、トップクラスの俳優陣が名を連ねた本作はどんな面白いお話なんだろうと大きな期待を寄せていた。

結果・・・

 

 

〈あらすじ〉

1636年、清が朝鮮に侵入し「丙子の役」が勃発。敵軍に完全包囲され、冬の厳しい寒さと飢えが押し寄せる絶体絶命の状況の中、朝鮮の未来を見据えた大臣たちの意見は激しく対立する。

平和を重んじ清と和睦交渉を図るべきだと考える吏曹大臣チェ・ミョンギル(イ・ビョンホン)と、大義を守るべく清と真っ向から戦うことを主張する礼曹大臣のキム・サンソン(キム・サンソク)。

対立する二人の大臣の意見に王・仁祖(パク・ヘイル)の葛藤が深まる。

抗戦か、降伏か。朝鮮王朝の運命は――!? (「天命の城」公式サイトより)

 

 

正直、驚いた。

朝鮮の王仁祖が、清の王の前で額をこすりつける降伏の儀式。

そう、知らなかった丙子の役の結末がこうなのだ。

ファン・ドンヒョク監督がインタビューで話していたけど、この出来事に関して学校では教えてもらうことは、

「侵略されて、降伏したこと。サンジョンドという場所で屈辱的な儀式をさせられたこと」だったそうだ。

でも、原作「南漢山城」を読んで、「屈辱的な歴史であることは確かだけど、それだけではない。なぜそれが起きたのか、どんな過程があったのか、隠したり闇に葬ったりすることなく、多くの人と共有したかった」と語っている。

https://swamppost.com/enta/eiga/1976/

 

歴史背景・心理描写が大好きなhitoとしては、大好物の部類ではあるものの、そうはいってもドキュメンタリー映画ではなく、娯楽映画なんだから、やりきれなさだけが残るエンディングは好きじゃない。

テンションが上がらないまま、どうやって感想を書けばいいのか、いつも以上に悶々としている私。

監督が描きたかったのは、前述したとおり、どんな過程があったのか、ということ。

つまりは、最後の砦・南漢山城の47日間に何があったのか。

敵兵に囲まれ、孤立した南漢山城の中で、国の存亡をかけた決死のディベートが繰り広げられる。

 


清と和睦交渉を図るべきと唱える主和派 吏曹大臣のチェ・ミョンギル(イ・ビョンホン)

 

清と真っ向から戦い、大義を守るべきと唱える主戦派 礼曹大臣のキム・サンホン(キム・ユンソク)

 

そもそも仁祖は、卓越した戦略性と優れた統率力によって、光海君を廃位させた人物。

なのに、本作を見る限り、そんな卓越した戦略や統率力は見られない。

おまけに、他のおバカな大臣が、「馬のエサがないから、兵士に与えたむしろを回収して、それをエサにしよう」なんていう懇願も認めちゃうし、こんどは兵士に食糧がなくなると、馬を殺してその肉を食べるなんてことも認めちゃうし。

チェ・ミョンギルとキム・サンホンを除き、ほんとダメダメな大臣。

そう、ミョンギルとサンホン両大臣の決死のディベートは凄かった。

そりゃ、イ・ビョンホンとキム・ユンソクだもん。って違うか。

 

ミョンギルが清との和睦を図ったのは、もっぱら、民のことを考えてのこと。

しかし、キム・サンホン以下、多くの大臣は、民が死のうが、兵士が死のうが、犠牲は仕方ないという。

もう、こうなったら、王様はどうしたいのと問い詰められ、「私は生きたい」って・・・

それじゃ、和睦を図りましょうってことで。

「王様、彼らの言う大義と名分は、いったい何のためですか?まず生きてこそ、大義と名分があるのでは」
と言ったミョンギルがついにディベートの勝者となる。

朝鮮王朝は大義に弱い・・・

しかし、王が生き延びるために、莫大な賠償金を課せられ、数十万人の民衆が捕虜となり、仁祖の息子3人も人質として清に連れていかれてしまう。

もし、あのまま抗戦を続けていたらどうなってたか。

もちろん、南漢山城は全滅。

 

でも、民目線から見ると、王様が誰であろうと関係ない。

それは、冒頭、キム・サンホンに氷の道を案内した船頭の老人の言葉からも見て取れる。

「昨日は御駕の行列を案内し、明日は清の兵士を案内する。

朝鮮の民なのにどうしてそういうことをするのか」と尋ねられた老人は、

「王を案内しても粟ももらえない。だから、清の兵士から穀物でももらう」と言ってのけた。

まあ、これが現実だろうなと。

リーダーが変わったところで、民はその変わったリーダーの民に変わるだけ。

このあたりの描写は、現代にも通じるブラックユーモアだろう。

 

本作でコ・スがえらいかっこいい鍛冶屋を演じていたけど、

私的には

“私はただ、迫りくる敵を  倒す武官に過ぎません”と、

国のため、ただ目の前の敵と戦う守御使 イ・シベクを演じたパク・ヒスンにめっちゃ萌えた~。

 

 

画像は、映画.comさんからお借りしました。

 

 

●hito基準による評価(10点満点)

泣き基準1(3点満点)

没頭度1(2点満点)

爽快感0

脱力感0

ストーリー1

胸きゅん度0

メッセージ性1

4点  低っ!