今日のテーマは、「シャープは何故危機に陥ったのか?」 中田先生の特別講義
中田先生のプロフィール
- 立命館アジア太平洋大学 名誉教授、客員教授 工学博士&博士(技術経営)
- シャープ入社
- 太陽電池開発=>液晶ディスプレイ研究開発
- シリコンバレーで新しい技術の種を見つけてくる仕事も
- 2004年4月から立命館アジア太平洋大学で教授
- 「シャープの敗戦。。。」 本は興味を持つように書く
- 産業革新機構とフォンファイと争ってなで、フォンファイが買ったか?
- これが読者の一番の関心
立命館アジア太平洋大学
- 国際学生が49%
- ほぼ全部がアジア、アフリカからきている留学生
- 授業はすべて英語
- スーパーグローバル大学に選出
- オンキャンパスリクリティング
- 中国 502人、ベトナム 498人 アジアへの架け橋
シャープの今
3兆2500億円の利益の上積み(向こう五年間)
AIOTで再躍進!
シャープの歴史
- 早川徳次
- エバーレディーシャープペンシルの発明者
- シャープの社名に!
- 「他社がまねしてくれる商品を作れ!」
- 真似が競争を生み技術の底上げをし、会社の発展につながる
- 世界初の液晶電卓の開発
- 4代目 町田社長のビジョン = 「2005年までにテレビを液晶に置き換える」
コアコンピタンス
コアテクノロジー
コアテクノロジーを決定することが大切
↓
液晶をコアテクノロジーに!
↓
液晶技術をコアにした、デバイスとのセットのスパイラル戦略
*ここに問題がありそう。
大型液晶パネルの生産枚数
- ★S字カーブ
- 液晶はs字の立ち上がり時点にある。=> サポートして投資することが大切
- 日本はS字になっていなかった。=> 投資戦略に誤りがあった。
- 生産能力が落ちたわけでなく、韓国、中国にシェアを奪われた。
- ここで投資をしないと取り残されてします。
韓国の投資のタイミング = ビジョンにもとづき投資
- 日本は利益がでると、翌年投資をする。
- これに対して韓国は、利益でなく、ビジョンに基づき積極投資した
- 台湾も利益に対して、10倍の投資をしている。(リスクをとって、外部から資金を借りて投資している)
液晶の装置に標準の装置はない!
- 液晶第5世代のとき、韓国、台湾が大量投資した
- 日本はまだ、第四世代を製造していた。
- この場合は、先に設備投資しても失敗したパターン
- あとから行った、韓国、台湾は新しい装置に投資した。
- (液晶特有の話)
完全に投資戦略の失敗
- 韓国はビジョンにもとづく、外部資金での投資戦略
- よって、重要なポイントの木に投資できなかった。
設問1.日本の液晶産業はなぜ韓国、台湾に追いつかれたか?
- 研究投資戦略の長期的ビジョンの欠落
- 意図せざる技術流出が後発者利益を許す
- グローバル化に通用しない自前主義
=> 韓国のように大量生産できタイミングを狙ってタイミング良く、一気に投資する。早い時期の投資が良いとは限らない。
亀山工場生産モデル
- パネル生産〜組み立てまで一貫生産
- ブラックボックス戦略
- 第6世代は、8枚、6枚を組み合わせる
- 良品率が高まる
32インチが一番やすい
- 第6世代が世界でももっとも作りやすい
- 償却が終わっている
2006年 世界のシェア、ガラパゴス化
シャープは12%
日本では48%
ガラパゴス化 (垂直統合型はガラパゴス化しやすい)
すり合わせ型とモジュール型 (Ulrich)
- モジュール化とは内部では結びつきが強いが、他のユニットとの結びつきが弱い。
- 例:USBをつくるにはパソコンの知識はいらない。 これがモジュール
デザインルールでくっつく。
一定のルールでつながり、離れる
モジュール型は早く簡単にできる。
一方、日本はモージュール型ではなかった???
モジュール化
- 独立に設計可能で、かつ、全体として統一的に機能するより小さなサブシステムによって複雑な製品や業務プロセスを構築すること。
- 複雑性が可能
- 併設作業が可能
すり合わせ化 => クローズドモジュール型、
モジュラー型 => クローズドインテグラル型
オープンモジュラー型
滑らかに繋がらなければいけない。 レゴは標準パーツ以外のものを売って、つなげている。
液晶におけるすり合わせの事例
成膜装置:
- 装置メーカーと一緒にやる。
- 工場をつくる前から、相互依存関係が出来上がってしまっている。
- それを、いかに解消するかが大切!!
- これがすり合わせ
亀山モデルのすごさ
- 液晶はガラスを供給してくれないと作れない!
- 標準装置は無い!!
- シャープといえども勝手に作れない。
- 亀山工場の強さはすり合わせモデルにあった!!!
設問2.亀山モデルが成功した理由
- 技術だけでなく、ビジョン、胆力、すり合わせ力
- 自社ブランド アクオス
=> 私も亀山モデルを買いました! ブランド力がすごかった!
設問3.シャープ以外は韓国、台湾に抜かれた。経営者の戦略は?
- グローバル戦略
- 投資のタイミングを間違えない
- 即時撤退
- 衰退期の戦略
*スマホだと、小さいので良品率は高い => ここに集中する。=> セグメントの特定
堺工場
- 世界最大の第10世代のマザーガラスを世界で始めて採用
- 薄膜太陽電子を採用
- 57インチ、65インチ
この時の問題となった思想は。。。
- 亀山工場はまわりに、沢山関連装置の工場があった
- 堺工場は、工場内にすべてまとめた。 => 究極の垂直統合型モデル
- 統合管理システムですべてを管理 これも究極
- 他で使えないものが出来てしまった。
堺工場は間違いではなかった。
- この時に堺工場を作らなければ、日本の液晶が遅れを取ってしまった。
- ただ、投資額は削減すべきだった。
- 装置拡大のみで新しいプロセス、装置を導入しなかった。
- 損益分岐点があがり、止められない工場となった
- 投資額を削減できなかった。
設問4.シャープは危機の原因は? (経営戦略、外部要因)
一番大きいのは投資額が大きすぎたこと。
産業構造、アーキテクチャーの変化
- パソコンは台湾が強かった
- テレビはすり合わせ型が適していて、日本が強かったがモジュール型になった。
- 産業構造の変化で、すり合わせ型からモジュール型に変わってしまった。
モジュール型と国際水平分業
- 32インチが5万円
- ソニー => ネジ少ない、配線簡単
- ダイナコネクティブ => ネジ多い、配線複雑、標準の基盤を2枚あわせるだけ。=> モジュール型の活用 => 低価格
- 解像度はソニーは上だが、一般の消費者は気にならないレベル。=> イノベーションのジレンマ!!!
1000円スマホ
- 中国 シャオミ 世界3位になった。
- シャープとシャオミのすり合わせによりスマホ開発
- ところが、大きな変化があった。
- メディアテック 中国のスマホ用プロフェッサメーカー
- => 設計図をオープンにした。(半導体をうるため)
- => 経験がないメーカーでも簡単にスマホが作れる。
- 「推奨モジュール型」スマホ => 新興国向けのスマホはこれ!
- スマホメーカが沢山できた
- シャープは対応できず。
=> これが、イノベーションのジレンマ
「偉大な企業はすべてを正しく行うが故に失敗する」
持続的技術による進歩 => お客様の要求以上のものをつくってしまう! (シャープは察知できなかった)
設問5.シャープの第2の失敗
・変化に対応できなかった
・変化を察知できなかった。
・黒字が続くと誤解した。
*シャープはすり合わせ型からモジュール型への変化、つまりオープン推奨モジュラー型アーキテクチャへの変化に対応できなかった。
フォンファイ VS 産業革新機構の工房
- 産業革新機構が勝つとみられていた。
- 1月にシャープにファオンファイの社長がきて、形勢が逆転した。
- 産業革新機構は、2000億円優先株 実質放棄へ。
- 1500億円のDES追加
- 一方、2000億円優先株簿価買取、債権放棄等を求めず => 株主訴訟がおくりにくい。
産業革新機構は「規模の経済」をすすめたがダメ
- オープン・イノベーションによる産業創出
- ジャパンディスプレイへ出資 => スマホ専用だったが、見通しがわるく、株価がさがった。
- 日の丸連合をつくった。
- ファンドをつくったら、10年以内、5年以内に利益を挙げなければいけない。
フォンファイは、堺工場に先行出資した。
- 37.61%
- 生産した半分はフォンファイが引き取る => 安定的な売り手になった。
- 堺ディスプレイプロダクトには信頼できる人材がいっている。
- 視点: ガラパゴス化の回避、アジア力の世紀
★「国際水平分業によりグローバル競争に展望が持てる」
★日の丸連動だけでは勝てない。
設問6.なぜフォンファイは官民ファンドの産業革命新機構に勝てたか?
- 社員は実力主義に変わった。
- 一番大きいのは、条件がよかった。
- グローバル市場にでていけたこと。
- 今後の戦い方に展望がもてるかどうか。
フォンファイの条件
- 堺工場のジョイント・ベンチャー => 50%で合意
- シャープへの9%投資 => ポシャった。
- 中国人は必ず値切る。 関西のおばちゃんと一緒
- 結果、四年越しの恋が実った。
シャープとフォンファイの関係
投資: あくまでに相手に投資し、種々の権利を獲得する。
60%の株式はフォンファイ
シャープの名前は残した。
3年で黒字で => フォンファイから見ると、投資効果があったといえる。
=> 吸収合併では文化の変化が必要となる。
日本企業にたりないもの
読売テレビ「そこまで言って委員会NP」
日本企業にたりないものは何か?
長期的なビジョンが足りない。
変化への察知、対応力
グローバル化への対応
サムソンは、炊飯器に花柄を採用して海外で売れた。
インドでは、鍵付き冷蔵庫が売れた。
産業構造の変化とモジュール化との国際水平分業
EMS(組み立て式)は利益率が悪い => そこで川上のシャープが必要だった。
すり合わせ国際経営2.0
基礎技術、顧客ニーズ、知識収束 => すり合わせによる、「あたらしい知識創造」を行う => 知識発散(製造はどこでつくっても良い)
すり合わせは、近接しかできない。
クラウドファンディングがあれば、世界を相手に自分のアイディアを売り込める。 => お金を集められる。
シャープの動向
- 経営判断のスピードあがった
- 取引の場に同席に、一緒に値切る
- コストカットを徹底する。
- ★一年以内で黒字達成!
- 8Kをやる
- サムソン電子への液晶パネル出荷停止
- 無水鍋 (ヘルシオホットクック) 発売
- 掃除機 ラクティブ エア 発売
- 社員の企業支援ファンド
- ディスプレイ部門は、テレビ、大型、中型液晶とも黒字に
- 米中で液晶パネル工場構想 => 広州市がほとんどお金を出す。
- 米国で世界最大級の液晶パネル工場を新設を検討していると発表