夏の暑い日の出来事

ママさんがぽつりと 「なんか、水っぽいのが出るんだよね」 と言った。

 

え、水っぽい? なんだろう。 まさか破水じゃないよな……と思いつつ、 「何回出た?」と聞くと「3回くらい」と。

「どうする?今日、金曜日だよ」

 

時計を見ると午後4時30分。 念のため病院に電話してみることにした。

何度か呼び出し音が鳴ったが、出ない。

 

「週末だしな……」と自分に言い聞かせながらも、 なんとなく胸騒ぎがした。 (あとで思えば、この“気になった”が命を救った)

次に保健所へ電話した。 電話越しの保健師さんは話を聞くなり、少し慌てた声で言った。

「今すぐ病院に行ってください。必ずつながる番号があるはずです」

 

もう一度病院に電話すると、今度は救急外来につながった。

「この時期に水が出るのは不自然です。すぐに来てください」

 

その言葉に背中を押され、急いで病院へ向かった。

 

 

長い待ち時間、説明のないままの不安。

診察は長引き、何の説明もないまま2時間ほど待った。 救急外来は患者であふれ、ただただ不安だけが積み重なっていく。

待ち疲れて受付に向かおうとしたとき、看護師に呼ばれた。

 

「奥様は緊急入院になりました」

え……なんで? 理由を聞こうとすると、

「詳しくは先生から説明があります。こちらへ」

 

 

 

医師の言葉は、想像を超えていた。

医師が静かに言った。

「すでに赤ちゃんの片足が出てきています」

頭が真っ白になった。

「え?だって安定期のはずで……」

医師は続けた。

「今日、陣痛が来て生まれるかもしれません。 22週は“出産”ではなく“流産”になります」

つまり、生まれても助からないということだった。

言葉が出なかった。

医師はさらに言った。

「少しでも出産を遅らせて、一日でも長くお腹で成長させましょう」

 

 

 

“病室”ではなく、半分“分娩室”のような場所へ

 

案内されたのは、病室というより半分分娩室のような部屋。 分娩台の横にベッドが置かれ、妻は点滴につながれ、絶対安静。

 

 モニターがいくつも並び、緊迫した空気が漂っていた。