「特攻の島」第1巻 | ひとりアーカイブス2012

「特攻の島」第1巻

特攻の島 「海猿」や「ブラックジャックによろしく」の作者でもある佐藤秀峰著「特攻の島」の第1巻がようやく出た。著者初めての歴史物である。本作品が週間漫画TIMESに載ったのは2004年だそうだから、単行本化まで随分と時間が掛かった事になる。
戦争末期の日本…最後の対抗手段として「特攻」を選択するまでになっていた頃の話し。海の特攻兵器「回天」に乗る事を志願した予科練出身の若き主人公。「死を恐れない」「お国のために、天皇陛下のために」などという大義名分よりも、もっと本音の心情的な部分を描いている(…のだが、各人の考え方や言い分は少々現代的であるような気もする)。幼い頃から貧困にあえぎ、周囲からは非国民と呼ばれて育った彼。特攻すれば自分をみとめてもらえるのだろうか?家族のためになるのだろうか?そして「死ぬこと」の意味を考える。回天に乗って特攻するという行為が、自分が死ぬ事に値するものなのか考える。
回天という兵器は、本当に魚雷へ人が乗り込むスペースを追加しただけのような物で、特にレーダーがあるわけでもなく正に目標物へ向かって「突進」していくだけのような物だった。本巻で描かれているのは、まだ出撃命令が出る前の訓練中の様子まで。この時点ですでに初期開発者の一人が殉職している。今から考えれば、何ともお粗末なシステムであり体制であるわけだが、当時としてはこれが精一杯、最大限の努力であり、一生懸命家族や大切な人達を守るための行為であった事を考えると、あながちバカバカしいとも言えなくなる。
現代の我々は何のために生きているのだろうか?「死」を見つめる事が「生」を光り輝かせることもあるのだと感じた一冊。