セイジ | ひとりアーカイブス2012

セイジ

セイジ 会社の後輩ブンタ君が譲ってくれた本、辻内智貴著「セイジ」 を読む。「セイジ」という普通に見たら全くもって社会不適合な感のある男の姿を、彼と偶然出会った大学生「僕」の目を通して描いている。
人というのは適度に「鈍感」にできている。人の大きな悲しみや苦しみは、実はなかなか実感できるものではない。鈍感だからこそこの社会で生きていける、とも言える。セイジは人の悲しみが見えてしまい、感じ過ぎてしまい、分かってしまう。物語の中に出てきた単語を借りれば、彼は「陸の魚」であるようだ。この社会は彼の生きる場所では無いかもしれない。しかし彼は不器用ながらも日々想いを巡らせ、静かに自分の生きている意味を考え続けている。
文章は非常に淡々としていて読みやすい。短編ともいえる程度の長さなので、割とすんなりと読み切ってしまった。読み終わった後、改めて人の生きる意味について考えてみたり、でも「あれ?」という感じもあったり…。物語の後半に起きる事件でセイジは少々衝撃的な行動に出るのだが、その後セイジがどうなったのか、それらの情報が不十分なのである。しかし、「僕」が本当に語りたいのは、その事件の顛末では無いのだろう。そこにセイジという男が居たという事が非常に大きな意味を持つのだ。
もうひとつ「竜二」という物語(「セイジ」とは関連の無い別の物語)も入っているのだが、こちらもまたちょっと変わった男の話。「セイジ」も「竜二」もオイラとは全く性格の違う男性だ。オイラとは違う環境で生活し、違う方向へ歩いていく。全く違う男達なのだが、どこか考えている事はオイラと近かったりする所がある。