こんにちは、人物とカルチャー、女性の生き方について書き続けているライターの芳麗です。
野球には詳しくないけれど(子供の頃は熱心に観ていました)、イチロー選手については尊敬してやまないし、そのプレイ、行動、生き方、発言も気になります。
少し前の記事ですが、こちらを読んで、色々と思うことがありました。
イチローはなぜTwitterを使わない? 自ら発信しない「伝える力」を本人に聞いてみた
野球選手としてのあり方から人間としての生き方まで、イチローの一挙手一投足には、哲学と美学はにじみ出ていますが、ここでは、「野球選手としての表現」について記者に問われて、SNSの使い方や発信することについても言及しています。
少し引用しますね。
「結果がすべて、と言われる勝負の世界では、自身のことを伝えるときに、自ら発信するとなかなか伝わらないという側面がある。もちろん現代ではデマも多く、火のないところに煙を立たすことができてしまうので、それを抑止するツールを持っておく必要はあります。理想は、客観的視点を持った第三者に伝えてもらうことです」
つまり、イチローは、自ら発信するよりも、記者やインタビュアーなどの“第三者”を通して、考えや思いを伝えてきたし、これからもそうしたいと語っているのです。
もちろん、その「第三者」が主観や思い込みで、質問を偏らせたり、勝手にストーリーを作り上げてしまうことの懸念も重々承知の上です。
(イチロー選手は、インタビューに対して極めて慎重な人だとよく聞きます)
では、なぜ自ら発信するのではなく、「第三者」を通して発信したいと思うのか?
理由は、「その方がより長く、深く伝わっていくと考えている」からだと。
「聞かれてもいないことを自分から発信すると、瞬間的には伝わるかもしれないけど、心にまで響かない。興味深い点ですが、これが第三者をはさんで伝わると、まったく違うんです」
「『イチローは今、何を思っているんだろう』と考えてもらう状態を作りたい。そのとき抱いている感情をその都度表現してしまうと、受け取る側の興味が、薄くなっていってしまう。ある程度、見る側に委ねる。そして答えは後に明かす。その距離感を保ちながら、ずっとやってきました」
これにはいち受信者、いちファンとしてはもちろん、職業・インタビュアーとしてもハッとしました。
近年は、誰もがSNSなどのツールを使って、自由に発信・表現できる時代。
タレントやアーティスト、アスリートだって同じことです。
個人の力で自由に表現できることは、発信者・受信者ともに幸福なことだと思うし、イチロー選手の言うように、「火のないところに煙が立った時の抑止ツール」にもなりえる。
だから、SNS とどう付き合うかは、表舞台で仕事する人や、人に観せる仕事(人気商売)の人たちにとっては、とりわけ大問題。
私もインタビュー時に、いろんなタレントさんや俳優さんから「SNSとどう付き合うか」を悩んだり、使い方について惑ったりしていると言う話をたくさん聞いてきました。
私もライターという発信者として、彼らの迷いに理解と共振を感じていると同時に、インタビューという「第三者」として、
「今の時代における、インタビュアーの必要性とは?」というのは、ずっと考えていました。
私は物書きとして多種多様な仕事をしていますが、インタビュアーという裏方の仕事に対しても、読者の方から熱心な感想を届けていただくことも多くて……。
大体は、インタビュイー(インタビュー相手)のファンの方からです。
その内容は、ありがたいことに好意的なものがほとんど。
(直に届くものだからでしょうが)
たいていは、第三者(インタビュアー)がなインタビュイーの魅力を、掘り出したり、解き明かしたり、感じ取り、分析したりしたことへの、喜びと感謝の念が綴られていました。
私の場合、これが嬉しくて、インタビュアーという仕事も求められる限りはやっていこうと思うようになりました。
やっぱり、誰かに喜んでもらえるって嬉しい。
(インタビュアーは裏方仕事なのに、わざわざ感想をくださるなんて素晴らしい(インタビュイーへの)愛とポジティヴな熱量だなと)
もちろん、これは理由の1つ。私がインタビュー仕事にのめり込んだ理由は他にもたくさんあるし、インタビュアーも人それぞれですけどね。
一方、SNS時代において、インタビュアーの存在価値も、ある部分では減っているというか、変わっていますよね。
やっぱり、第三者は通さずに、インタビュイー本人の言葉をできるだけ生のままで聞きたいと思うのは、当たり前のファン心理です。
私もね、ホント、思うんです。
インタビューという膨大でアナログな行為を通して、そのスターの面白みや魅力や人生を解き明かすよりも、インスタライヴに映っていてスターのちょっとした仕草を生で観た方がキュンとしたりするし、伝わることもありますよね。
それでも、インタビューは人物やカルチャーを解き明かしたり、楽しんだりするために必要なものだし、有益だと思っているから続けていこうと思っています。
イチロー選手のこのインタビューを読んで、改めて深く感じ入り、考えさせられています。
「第三者」でなければ伝えられないことは、たしかにある。
当事者(インタビュイー)の中にある、複雑で興味深いことや面白いこと、貴重なことは、「第三者」を伝って初めて、言語化されたり、深められ伝わりやすくなったりするから。
私も、この時代にインタビューすることの意味を感じながら、日々、意識とアンテナをアップデートしながら「ぜひ、読んで!」と言えるインタビューを書いていきたいと思います。
(もちろん、コラムやエッセイや取材記事などもね!)
みなさん、今日もご無事で充実した午後をお過ごしくださいね
追伸・お写真は、昨年、チームラボのボーダレスに遊びに行った時のものです。あの頃は、世の中がまだ穏やかでしたね。早く平穏な日々が訪れますように