FT-707Sの分解清掃、再組立てが終わり組立て時に断線した配線も復旧して受信は正常になりました。今度は送信部の修理になります。PA UNITは破裂した電解コンデンサーを含めて全電解コンデンサーを新品に交換しましたが動作しません。 FINAL UNITとの格闘?が始まります。

 

まずPA UNITの基板をヒートシンクとなる背面金属パネルから取り外します。するとFINAL Trの2SC2509に絶縁マイカ板が付いていません。ネットで調べた2SC2509規格の放熱フィンはコレクターです。これではGNDとショートです。この後いくつかの修理ブログや投稿コメントをネットで調べて判ったのですが、中国製?の改版されたTOSHIBAの2SC2509の規格表は、TOSHIBAオリジナルのTrのPIN接続と異なりエミッターとコレクターのピン接続がひっくり返っているとのこと。つまりTOSHIBA製の2SC2509の放熱フィンはエミッターであり、直接GNDに落とせます。しかし中国製?の2SC2509の放熱フィンはコレクターとのこと。無茶苦茶です。

これはかなり有名な話のようで、ネットオークションでは本物のTOSHIBA製2SC2509などと明記して掲載しているようです。ネット上にこの誤ったTOSHIBA 2SC2509の規格表が掲載されていることは困ったものです。この誤った規格表しか検索で出てきません。

PA UNITから取り外した2本の2SC2509とドライバー段の2SC2166は共にテスターで確認しNGでした。TOSHIBAオリジナルと明記の2SC2509は驚くほど高価です。また中国製?の模造品との区別も付けられないので、使用をやめます。すると代替品はPIN接続は異なりますが2SC1969あたりです。今でもネットなどで旧在庫品を入手できます。ドライバー段の2SC2166は全く入手できません。代替品も妥当なものがありません。

 

ネットで2SC1969を入手する前に、他にFINAL代替品が無いか考えます。秋月電子に2SC3422というTrがありました。fT 100MHz Pc10Wです。ドライバーは2SC3423がある様です。

PA UNITのドライバーとFINALをこれらのTrに換えて見ます。まずFINAL Trに電源をつながずドライバー段だけで動作を確認します。なぜだかわかりませんが、シンクロで調べる限りではドライバー段でほとんど増幅がありません。原因不明です。しょうがなくFINAL Trの電源を接続すると、バイアス電圧を下げることを忘れており、いきなり煙が出てきました。FINAL Trを飛ばしました。

うまくドライバー段で増幅されなかった理由は不明ですが、ドライバー段の更に前段のRF UNITのQ03 2SC2407の劣化が見つかりました。fT 600MHzのTrですが増幅はしているものの劣化で十分なドライブができていなかったようです。

結果の結論として2SC3422, 2SC3423は高電圧で使用するTrのようで、12V電源での使用には向きません。Pc値だけでの判断は間違いでした。

 

他の代替えTrを探します。若松通商に2SC4935 (Ft 80MHz Pc10W) というTrがありました。これをドライバー段に使い、Final Trをオークションで入手した2SC1969 PPに交換しました。

 

交換後に電源を入れると熱暴走と思われFINALの出力電流が見る見るうちに上昇します。FT-707Sの10W PA UNITのバイアス回路には熱暴走対策としてサーミスターが入れられています。これでは熱暴走対策は不十分なようです。バイアス電流を低めに設定しているんでしょうか。バイアスを抑え気味にしますが、それでも熱暴走は止まりません。あまりバイアスを下げ過ぎると増幅が怪しいです。何度か調整するうちバイアスを上げすぎて2SC1916を飛ばしてしまいました。熱暴走の経験は初めてで厄介ですね。

 

大事な2SC1969を飛ばしてしまいました。追加で安い?2SC1969 1本を購入しましたが届いたTrのhFEはなんと17。先に取り付けていた2SC1969のhFE 79でした。これではペアは組めません。安いとはいえそれなりの値段でしたのでがっかり。

 

また、別のFINALの候補を探します。若松通商に2SC2336というFt 95MHz Pc20WのTrがありました。

FINALを2SC2336に交換すると同時に、FINALのバイアス回路も変更して100W機と同様に78L05でバイアス制御Trのコレクター電圧を落とし、ベースに10DDS10を2本逆電圧に入れてそれぞれFINAL Trに熱結合させました。このFINALバイアスの熱暴走対策は効果抜群でほぼ熱暴走は無くなりました。やっと出力が出ました。3.5M, 7Mで0.6W, 14Mでは0.4W程度です。シンクロをダミーロードの先に付け波形を観測すると正弦波とは程遠いめちゃくちゃな波形です。これでは電波とは言えず不要輻射装置です。

FINAL周りの抵抗やコンデンサーの値を変えてテストしますが、大きな変化はありません。やはり2SC2336はHFには使えないようです。

 

どうもFINAL PPの回路は調整も含め難しいようです。自分の技量の不足も認め、まずはシンプルなシングルFINALでのRF PAを勉強し直します。元の基板を使ってシングルFINALとして回路を構成しました。FINAL Trは生き残った1本の2SC1969が使えます。すると見事に5W程度の出力が出ました。更に調整で追い込むと3.5M 10w, 7M 9W, 14M 8W, 21M 3.8W, 28M 2Wの出力です。波形は余りきれいではないですがまあ正弦波に近い波形です。まあ、これでしばらくはテストしてみようと考えます。

 

HFといえども、RF FINALの設計、調整は難しいことをよく理解しました。回路は簡単ですが奥が深いですね。もっと勉強が必要です。

 

続く