大昔の話。
熊本を離れる前。

4歳年下の子とお付き合いした。
父親違いの幼い弟妹が5人いる子で、離れた場所に住むその弟妹達の生活費を中卒で稼いでた。

長いこと傷心引きずってる頃にたまたま出会い、

4歳下なんて考えられなかったけど、そう長くない間お付き合いした。


明るい子だったけど、どこか影があった。
幼い弟、妹達のことを話す時の優しい笑顔が印象的だった。

1度だけ、あちらの同僚含めてカラオケに行った。
数年前に流行っていた、久宝留理子の「さよなら」という曲を歌った。
メロディーが好きだっただけで、歌詞はとくに意識してなかった。
曲は歌詞でなくメロディーで聴いていた。
歌詞を意識するようになったのはもっと歳をとってから。

「なぜサヨナラの歌を歌うの」と暗い顔で涙を溜められた。
過去の人のことを思いながら歌ったのだと思われた。
また、実父にも義父にもさよならされた経験がある彼を、さよならの曲は憂鬱にさせた。


働いてるから年齢より大人なところもあったけど、でもやはり子供で。
とくに、あちらの同い年の友人や後輩と一緒にいる時は、随分と子供に見えた。
私と2人でいる時は年上だからと合わせてくれていたのかなと。


結婚したらこんな風にしたい、こんな家庭にしたい、といろいろと夢を語ってくれた。
将来のことを話されるのがだんだんと重荷になった。
幼い弟妹達の親代わりになって稼いでがんばってるところを、応援してあげたかったけど、私は私で家の問題を抱えていて、私にその器はなかった。


過去の人が忘れられないと告げお別れした。
本当の理由は違ったかもしれない。
嘘でも何かもう少し気のきいたことは言えなかったのかなと後悔した。
あの時の顔は今も焼き付いて離れない。


その後、彼の会社の後輩(友人でもある)から、ひどい、どうしてあんな傷つけることを言ったのかと冷たく責められた。
後輩達も若くして働いてるから、何かしら抱えてた。


強いようで繊細だった人。
傷つけたくなかったけど、傷つけてしまった。
傷心を癒してくれたのに。

今思えば、中身は私のほうがずっと子供だったのかもしれない。

嫌いになって別れる訳ではない別れはとてもつらい。
男女でなければこうはならないのに。
今でも思い出すと心が痛い。


私のことはきっと綺麗さっぱり忘れ去ってる。
もしくは、そういえばなんとなく記憶があるという程度の小さな出来事の一つ。
どこかでばったり会うこともきっと一生ない。

あれからいろんな経験もして、幸せに暮らしてると思う。

心から幸せを願った人。

傷つくことも人を傷つけることにも臆病になり、その後数年は誰ともお付き合いすることはなかった。