去年の秋に「この世でいちばん大事な「カネ」の話」を読みました。
正直あまり内容を覚えてないのですが、なかなか面白い本ではありました。
西原理恵子のお金にまつわるエピソードに彼女自身のお金に対する哲学を交えて話が
進んでいきます。
話は幼少の頃から始まっており、彼女のちょっとした半生記ともなっています。
特に幼少から10代にかけての話は、彼女らしいコミカルな表現で綴りながらも結構壮絶
です。正しく代表作「ぼくんち」の世界です。

さてなぜ今更忘れてしまう程前に読んだ本の紹介なのかというと、昨今の原発問題から改
めてお金について考えさせられたからです。
なので本の紹介は単なる話の切欠。

よくお金は、「目的を達成するための1つの重要な手段であるものの、お金自体を目的
としてはいけない」と言われますが、原発推進派は「お金が目的かつ手段」であり、
原発反対派は「お金を手段として用いていなかった」といえるだろうと思います。

福島原発の現状は、事故後対応のまずさから手がつけられなくなったようですが、これま
でに指摘されてきた警告を聞き入れ適切な安全対策をとっていれば十分に回避できたの
でしょう。

「税金をパクる」手段として原発を利用してきたのは不本意ながら許すとしても、最低限
の安全対策もしてこなかったのは許しがたい。
安全だという自説を曲げられなかったのか、周りの空気を読んだのか、パクる税金の取り
分が減るのが嫌だったのか、コストが大きくなることにより原発予算が認められなくなる
ことを恐れたのか、理由は色々あるのでしょう。

ただ、妙に達観するつもりはないのですが、これも人間の性のなせる業だろうと思います。
「日本人は武士道、侍精神をもったモラルの高い民族である」なんて幻想ともいえる自己
満足に浸っていてはいけません。
他国よりマシな部分は多々あるのでしょうが、それでもやはり簡単にお金に魂売ってしま
うのが我々の本質だ、くらいに思っておくのが安全対策の第一歩のように思います。

原発反対派は、個々人がその危険性を啓発して回るだけでなく、有力政治家や官僚を買収
するくらいの資金力を持ち、具体的な計画の下に組織的に行動する必要があったでしょう。
お金がないなら、なんとか推進派に潜り込んで権力を得、推進派のお金を原発反対に向け
るなんてヘタな漫画のような案も、単に推進派を批判するだけよりもマシに思えます。
既存の利権屋である推進派自体を反対派に鞍替えさせるのが一番手っ取り早いでしょうから。
彼らが単に利権が欲しいだけという前提ですが。

要は原発反対派は推進派のようにお金を手段として用いることを考えなかったことが敗因
のような気がします。
平時には人々を恐怖させるよりも、欲望につけ込んだ方が有効だということが実証された
のかもしれません。
欲望につけ込みながらも自分は正しいという大義名分は不可欠でしょうが。
推進派はそのバランスが絶妙だったのでしょう。

いずれにしても、原発は未だに廃棄物処理の問題が解決していないようなのでやはり代替
エネルギーを早く実現して欲しいものです。

孫正義のように税金に頼らず自己資金でやるのには期待してしまいますね。事故前であれ
ば、推進派との真っ向勝負はかなりの犠牲を伴ったでしょうが、今は状況が原発反対に
向いているようなので。


今垂れ流されている放射性物質はどうしようもないのでしょう。
今後、比較的放射性物質に強いといわれている全国のおっさんは、

「お前、このカレー、セシウム137入っとんちゃうか!
めっちゃコクマロや~ん」

ぐらいグルメにならなければいけません。


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