「北風と太陽」という話を知っていると思いますが、この話を使ってがんを治す方法を話したいと思います。

 「北風と太陽」という話はイソップ童話のようです。有名な話なので誰でも知っているでしょう。北風と太陽がどちらが強いか競争をする話です。北風と太陽はどちらも体力に自信を持っていましたので、どちらも自分のほうが強いんだと威張っていました。

 北風と太陽は対立していましたので、どちらが強いか勝負をしようという事になりました。そこにひとりの旅人がやって来ました。それを見て北風と太陽は、あの旅人の外套をどちらが先に脱がせるか勝負をしよう事になりました。

 はじめに北風が強い風を吹かせて、外套をはぎ取ろうとしました。しかし旅人は寒いので外套を押さえて脱げないように頑張ります。それで北風はもっと強い風を吹いて外套を剝がそうとしますが、旅人は外套を離しません。

 北風は体力の限界を感じ諦めました。今度は太陽の出番です。太陽は光をどんどん出していきました。気温が上がり、光で照らされるので暑くなってきました。旅人は外套が邪魔になり、脱いでしまいました。

 結果として、この勝負は太陽が勝ってしまいました。

 

 この話から何を言おうとしているかですが、現在行われているがん治療は北風の努力に似ている気がするのです。現在行われている治療は手術、放射線治療、抗がん剤治療です。どの治療を見ても、北風を思わせるような厳しいものです。特に抗がん剤という薬は毒のような危険な物です。放射線治療にしても危険な物になります。こういう方法でがんが治るのでしょうか。

 これらの治療でがんが治ることがあるかもしれないと言う希望的な予測のもとで治療しています。がんという病気は治らないことになっていますから、治療としては、がんを小さくするとか、がんをなくすとかすることを目的として治療しています。この治療は寛解を目的とした治療なのです。寛解と言うのは症状を無くそうとする治療です。抗がん剤を使って、がんがきれいに無くなったら完全寛解と言いますが、がんが治ったとは言いません。がんを治すと言う方法は無いと考えていますから、寛解を目標として治療しています。

 がんが治るものであれば、寛解を目標とせず、治癒を目標とした治療をするべきでしょう。私はがんの自然退縮に興味を持って、長年にわたってがんの自然退縮について調べたり、がん患者のがん退縮を観察してきました。そしてがんには自然退縮と言う現象があることが分かりました。それで、がんが治ることもあるという事が分かったのです。

 がんは運が悪くて出来るもだと考えている人もいるようですが、がんはたまたま偶然に出来るものではありません。がんになる理由があって出来ています。そこが分かってくると治療方法も変えなければなりません。

 がんが大きくなって、圧迫症状や出血などの困った状態になれば、がんを攻撃する治療もやむを得ないと思いますが、がんが小さくて何も症状がない時に、大変だ、ほっておくと死んでしまうと、攻撃的な治療をすることは、考え直して欲しいのです。

 がんが発見されたら心配でたまらないという人は、ほっておくわけにはいかないので、自分の考えで治療すればよいと思います。

 理由があってがんが出来たとしても、がんが出来たら、一方的に大きくなってしまうと思っている人も、不安でしょうから、何らかの対処をしなければいけないでしょう。

 がんは不健康な生活を改善し、無理な生活を無くし、体が楽な生活に持って行くと、成長を止めて消えていく可能性があるのです。健康的な生活と言うのは食生活について言うと、栄養的に不足と過剰がない食事が望ましいのです。そして血流は滞りが無く、順調に流れているのが望ましいのです。

 抗がん剤や放射線でがんを小さくしたり、無くしたりする治療はがんが大きくなって周りに障害を及ぼすようになれば意味がありますが、がんが小さくて周りに何の障害もなければ、意味がないことになります 。

 がんは多くの場合、理由があって発生していますから、抗がん剤のようなもので小さしても、その治療を止めると、又同じ所か別の所にがんを作ることになる恐れがあります。がんが消えて無くなるまで治療すると、がんが無くなったけれど、命もなくなったと言う結果になかねません。

 

 今度は太陽の話をしましょう。昔、太陽の光でがんの治療をしている人がいました。どうするかと言うと、屋根に穴を開けるのです。天窓と言うのがありますが、屋根に小さい天窓を作って、そこから太陽の光を取り入れるのです。床にはベッドを置いてがん患者を横にして寝かすのです。

 患者はがんがある部位を露出させます。そしてがんが出来た部位へ、天井から来た太陽光を当てるのです。太陽は動きますから、太陽光が当たる位置が動きます。そうするとベッドを光が当たる所へ移動させて、患部に太陽光が当たるようにします。結構手間のかかる作業になります。

 しかしこの治療法が困ることは、天気のいい日は出来ますが、雨の日は出来ないことです。それで雨の日でも出来るように考えたのが光線治療器です。光線治療と言っても、種類がありますが、太陽光線に近い光線を出すのがカーボンアーク灯を使った治療器です。コーケントーとかニッコーライトと言う名前がついています。

 私もがんの正体を知るまでは、こんなものでどうしてがんが治るのだろうと思っていました。太陽光に似た光線でがんが治るということが、どうしても理解できなかったのです。

 私はミトコンドリア働きを知って初めて、太陽光の病気に対する効果を知ったのです。ミトコンドリアについては殆ど知らなかったので、本を買って勉強しました。それで少しづつ理解が深まっていきました。

 太陽光はミトコンドリアを元気にします。そして太陽光は暖かいから血流を良くします。血流を良くするといろんな臓器の機能が改善します。光線治療器はがんだけでなく、いろんな難治性の病気に効果があることが分かりました。

 ミトコンドリアとはどんなものかと言うと、細胞の中にある糸くずのような小さい物で、何をしているのか、長い間分かりませんでした。研究の結果、ミトコンドリアは酸素を使ってATPという体のあらゆる臓器を動かす電機のような物を作っていました。

 血流が良くなり、酸素の供給量が増えれば、ミトコンドリアを多く持った正常細胞の働きが良くなりますから、酸素を使わないで生きているがん細胞は住みづらくなってきます。そうするとがん細胞の分裂速度も落ちてきて、がんの成長は鈍ってきます。

 このような自然の仕組みが医学、生化学の研究で分かってきたのです。始めに細胞が酸素の少ない状態におかれると、がん化することを発見したのは、ドイツ人生化学者のオットー・ワールブルクです。オットー・ワールブルクはがんが酸素を使わないで生きていることも発見しました。しかしオットー・ワールブルクは低酸素が続くとなぜがんが発生するのかと言うことまでは分からなかったのです。

 低酸素状態が続くとなぜがんが発生するのかと言う原因を突き止めたのは日本の免疫学者である安保徹先生です。安保徹先生は低酸素状態の原因がストレスにあることを突き止めたのです。安保徹先生が考えたがん発生の仕組みは次のようなものです。

 ストレスが発生すると交感神経が刺激されます。交感神経が刺激されると、アドレナリンやノルアドレナリンなどが分泌されます。そうすると血管が収縮し、血流が止まると言う仕組みです。この原理でストレスから低酸素状態になると言うわけです。

 交感神経と言うのは昼間に良く働く神経で、ヒトが行うすべての肉体的、精神的行動を支配しています。副交感神経は主に夜、ヒトが眠ってから、体のあらゆる所を点検して不具合を修復しているのです。ヒトも機械のような所がありますから、体のメンテナンスをしているのが副交感神経の役割です。

 私はがんを治すためにはストレスのない、体が楽な生活を勧めたいと思っています。楽な生活でがんが治るのかと言われるでしょうが、どちらかと言うと楽な方が、がんが治るのです。

 楽な生活と言うのは副交感神経が優位な生活です。副交感神経優位の生活と言うのは怠けたような生活になりますが、がんになる人はどちらかと言うと、外から見て立派な、素晴らしい人生を送っているように思いますが、どこかで無理をしているのでないかと思います。バリバリ仕事をして、世のため人の為に頑張っているのですが、自分の体に対しては迷惑をかけているのかもしれません。

 そういう人は交感神経優位の生活から副交感神経優位の生活にハンドルを切った方が良いと思います。それでがんの進行が停止に向かったら、ハンドルを適当に切り直せば良いのです。

 現在行われている治療は北風のような厳しいものであると言いましたが、この治療で得られる結果は寛解です。寛解は治癒ではありません。ストレスを無くし、血管が拡張し血流が改善すると酸素の供給量が増えますから、ミトコンドリアの多い正常細胞は元気になります。ミトコンドリアの多い正常細胞が元気になると、酸素を使わないで生きているがん細胞は居場所がなくなり、成長しにくくなります。

 太陽光もミトコンドリアを元気にして正常細胞を助けますから、がん細胞には困った状態になります。このように太陽の力を借りたような治療で得られる結果は寛解ではなく治癒なのです。ここが最も大きな違いで重要な点になります。

 しかしながら、太陽に似た治療は効果が出るのが、北風の治療に比べて遅いのです。がんが見つかったとしても、ゆっくりと大きくなるがんであれば太陽に似た治療をやってみる価値があるのではないでしょうか。

 では太陽光のような、体に楽な方法でがんを治す場合、がんはどのように消えていくのでしょうか。北風のような厳しい治療の場合、がんはネくローシス(壊死)で消えていきます。体に楽な方法でがんが無くなる時は、アポトーシスと言う仕組みになります。

 アポトーシスと言うのは自らが死を選ぶような感じになります。細胞はそれぞれが生きていますから、周りの環境の変化や内部環境の変化で自分が死ぬべきだと感じた時は、アポトーシスの指令を出します。そうするとアポトーシスの仕組みが動き始めます。そして細胞の解体が始まるのです。細胞は細かく分断されます。分断されたものを周りの細胞が食べてしまいます。これでアポトーシスは終わり、がん細胞が無くなってしまいます。

 アポトーシスは静かな死と言われています。ネクローシスのように炎症は起こさないし、死骸も残らないのです。オタマジャクシの尻尾が小さくなって無くなってしまうのはアポトーシスが起こっているからです。私はアポトーシスの仕組みを知った時はびっくり仰天しました。