がん患者を助けたら逮捕されることがあると言う話を前にしましたが、今日は実際に逮捕された話です。その人の名前は加藤清さんです。

 加藤さんの話をする前に、マックス・ゲルソンの話を簡単にします。ゲルソンはがんの食事療法では世界的に有名ですが、彼も米国の医師会からいろいろと嫌がらせを受けました。結局は米国で仕事ができなくなりメキシコに移り住んで医療の仕事をすることになりました。

 がんが治ると言うと、医者の世界からは妨害を受けるのです。がんが治ったという症例を発表しようとすると、それを止められるのです。

 医者であればがんが治ったら、それをみんなに知らせたいと思うのでしょう。しかしがんが治ると言う話をすると、それは医学の常識を覆すことになるのです。医者はがんは治らないものであるという常識のもとで治療しています。がんが治るという話は受け入れらないのです。そんなでたらめな話はするなという事になります。

 ゲルソンは医者ですから、ちゃんとした根拠に基づいて話をしているのです。米国の医師会はゲルソンにがんが治ったという話をさせないようにし、そういう治療もさせないようにしてきたのです。

 話を加藤さんに戻します。加藤さんは断食の指導をしながら、いろんな病気を治す治療師になりました。加藤さんは若い頃、結核性の痔瘻になり、手術をしたら、もっと酷くなり、困っていました。

 病院で同室の人に断食をすれば良くなると教えられました。どうしてよいか分からなくなっていたので、断食をやってみることにしました。そうしたら不思議なことに、痔瘻の表面が段々と良くなってきました。

 この経験が彼を病気治しの道に進めました。初めに東京の下町に住むおじさんが按摩やハリ治療をしていたので、そこで修業をしました。

 加藤さんは25歳の時、勤めていた宝酒造が八戸に進出ので、八戸に引越しました。30歳の時は戦争でジャワ島に3年間行ってます。

 八戸で断食道場を開き、又その他にもいろんな仕事をして、仕事はうまく行っていました。しかし、断食道場の経営に問題があり、無一文になってしまいました。

 八戸に住むことができなくなり、加藤さんは単身で大阪にやってきました。それは昭和44年、55歳の時です。大阪にやって来ても無一文ですから、野宿のような生活をしていました。

 加藤さんは指圧とかマッサージとかの治療師ですから、段々と稼げるようになっていきました。 それで1年後に大阪の鶴橋に加藤指圧治療所を開きました。

 そして10年後の昭和54年に大阪の玉造にマンションの2階を2戸分借りて「健康再生会館 玉造研修センター」を開設しました。

 加藤さんの治療は粉ミルク断食と整体指圧です。健康再生会館には20人前後の患者とその家族が宿泊して治療を受けました。期間は20日が基本です。費用は1日が2万円ですから、20日で40万円で、その外の諸費用が10万位掛か借りますから、合計で50万円位になります。この20日間でがんを治す方法を学ぶわけです。この期間で足りなければ、延ばすことになります。

 加藤さんは7年間で7000人位のがん患者を治療したようです。45年も前のことですから、この話を聞いていても、殆どの人は忘れているでしょう。

 私が日野先生のがんに直面し、がんと向き合うようになってからいろんな治療について経験してきました。そしてがんの治療を止めて、時がたつのですが、がんの事を考えている時、加藤さんの出来事をふと思い出したのです。

 あの時は、すごい人がいるものだなあと思っていました。私は日野先生の元で断食を指導していましたので、断食には興味がありましたが、粉ミルク断食と言うので、粉ミルクを使うこと違和感がありました。

 私はその頃、がんと言う病気には拘わらないようにしていたので、がんの治療に興味が無かったのです。それでもニュースを見て、多くの患者が詰めかけているのだから、効果があるのだろうと考えていました。

 日野先生ががんになり、それで亡くなってしまったので、それが一つの原因となり、私の医療の目標ががんの克服と言う方向へ向かったのです。

 日野先生ががんになって治療中の頃、今村光一さんが松井病院でゲルソン療法をやってほしいと頼みに来られたのです。私はゲルソン療法をまねて、その外の代替医療を取り入れて、出来る範囲で治療してみました。

 ゲルソン療法プラス代替医療は限界を感じ、私には無理なことだと思い、1年半くらいで止めました。その後、がんは治療しないことに決めていました。ところが、名古屋でがんの患者の会を指導していた中山武さんが、会員を松井病院食養内科の食事を学ばせてほしいと言って、がん患者を紹介してきたのです。その為、又がんの患者と付き合うことになったのです。

 私はがんの治療を止めていましたから、がん患者を治療することはなく、食事の勉強のために、2週間ぐらいの予定でがん患者が入院することになったのです。それが長く続いたので、がんについては考えることがいっぱいありました。

 話を加藤さんの治療に戻します。加藤式療法と言うのはミルク断食と按腹を特徴とした整体指圧です。

 断食と言うのは、食べ物は摂らずに水だけ飲んで過ごすことを言うのですが、加藤式では粉ミルクも飲ませるのが特徴です。粉ミルクを飲ませると言う発想は、治療に困り果てた時、加藤さんが思いついたのです。

 衰弱したがんの患者が来た時、水断食では命が危ない状態だと判断しました。どうしたものがと考えた時、粉ミルクが出てきたのです。粉ミルクなら赤ちゃんが飲むものだから大丈夫だろうと思ったのです。この粉ミルク断食がうまくいったので、これを積極的に使うようになりました。後にポカリスエットのような飲み物も使っています。

 次に按腹を特徴とした整体指圧ですが、この療法はがん治療において、的を得ていると思います。発がんの原因として、大きなものに血流障害があります。血流障害によって酸素が乏しくなると、細胞はミトコンドリアが働かなくなり、ミトコンドリアを使わないガン細胞へと変化します。

 血が滞った状態を漢方では瘀血と言いますが、がんも瘀血のような所があるのです。瘀血を無くすのに、腹の血流を改善する按腹や全身の血流を良くする整体指圧はがんの進行を弱める治療として効果があると思います。

 次に断食について話をしようと思うのですが、文章が長くなったので、今回はここまでとし、続きは次回にさせていただきます。