鮨屋やてんぷら屋に行った時の振る舞いやそば、すきやき、うなぎの食べ方から旅行、クセ、理想、心遣い、死などの生き方に関わることまで、池波氏が人生を通じて体験してきたことを書きおろした「男の常識」です。
1981年に刊行された本ですが、内容は今にも通じるもので、もっと若いとき、できれば社会人になる前に読んでおきたかったと思いました。
「人間や人生の味わいは、理屈では決められない、白と黒のとりなす中間色にある」「夢やロマンは誰かが与えてくれるものではなく自分で求め続けるものである」「手紙は相手に対面しているつもりで気持ちを率直に出す」「余裕を持って生きることは時間の余裕を絶えずつくっておくことに他ならない」「全てが五分五分である」「大勢の人間で世の中は成り立っていて、自分も世の中から恩恵を享けている」「同じ時間に二つのことをやる」「つまらないところに毎日行くよりも、お金を貯めておいて、いい店を一つずつ、たとえ半年毎でもいいから覚えて行くことが自分の身になる」「隅から隅までよく回る細かい神経と同時に、それをすぐに転換できて忘れる太い神経も併せ持っていないと人間は駄目である」「自分が死ぬということを若いうちから考えれば、どのように生きればよいかを当然、考えることになる」「下の仕事、人の嫌がる仕事をもっと進んでやることが大事」「仕事に身銭を切るべき」といったことは、特に心に響きました。
また、13歳のときに無銭乗車をして東京に出ようとして米原駅でつかまった少年が、両親が死んだので東京に出て働きたいと事情を話したところ、米原駅の駅員たちがお金を出し合って少年を東京に行かせ、50年後にそのときの恩を忘れられないその方が何万円か持って米原駅を訪ね、助役に「これを、何か駅のために使って下さい」と差し出したという話からは、日本にも、金銭的には決して豊かでもなくても、心の豊かな人がいたのだと感じました。
何でもルールで白黒をつけるのではない、他人に思いやりの心を持つ、時間を大切に使う、人生に目標を持つ、というようなことが、生きるうえで欠かせません。
「下の仕事、人の嫌がる仕事をもっと進んでやる」「仕事に身銭を切る」といったことを実践しながら、死に向かって自分がどのように生きればよいかを考えながら生きていこうと思います。